第58話 水守は


  「そりゃ、水守は怖いよ」

 「端守だって、水守程ではないけど」

 「怖いさ」

 

 群衆の言葉は本物だったわ。

 いくら義徒が必死に人間に媚びを売る滑稽で醜いサルの出来損ないでも、

私と違う世界の人間達でも、誰もが、義徒への恐怖感はあるわ。

 私にも、義徒への強い恐怖感がある。

 何故だか分からないぐらいに、私は義徒を恐れている。


 「君達」


 義徒が、冷静さを取り戻そうとする。

 そして、続ける言葉は予想できる。


 「水守はこのエターナルファンタジーの世界の中で」

 「弱い人類を護ろう」

 「水守に異を唱える者は」

 「全て首の骨を折ってやる」


 「義徒ー」

 「GITOGITOGITTO!鼻てっかてか!」

 「一人つるつるローションプレイ義徒!」


 義徒の宣言を、人類の群衆達は受け入れた。

 しかし、水守は、ですか。

 この場にいるのは端守一人なんですがね。

 端守を水守の一族とも、そりゃあ言いますよ。

 けれど、先の宣言での水守というのは、そうではなかった。

 この事を今群衆達に伝えれば、私は殺されるでしょう。

 なので、この場では何も言いません。

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