59話 皆私に怯えてるようなんですが、私、何かやっちゃいました?


  この滑稽なサルに守ってもらうのも、私の運命とは違うでしょうし。

 私の場合、殺される可能性の方が高いでしょう。

 というか、殺されます。

 義徒に殺されるのは、私の運命なような気もします。


 黄葉ちゃんを称える者達、義徒を称える者達、エタファン世界で生き残る手段を考える者達で、

誰も私を捕まえようともしないので、私はこの場を跡にする事にしました。


 群衆を抜けても、問題は、まぁあありません。

 私に視線を送る者達もいますが、この場でなら、私に興味がない群衆を人込みの盾にして逃げ切る事もできます。

 少々目立ちますが、私は走り出しました。


 とにかく、逃げて逃げて、弱いモンスターを倒してレベルアップしましょう。

 今は無一文ですが、お金を稼げば、アメリカンコーヒーを飲めば、DEXはそれだけで0.1上がるのなら。

 命中率やクリティカル率・クリティカル倍率・扱いの難しい武器も扱えるようになっていくはずです。


 しかし、群衆を離れても、私を追ってくる者達がいます。

 まったく、私が前世で何かしましたかね?

 やばいですね。とってもやばいです。

 命の危機を感じています。

 いきなり、数人を相手に勝てるとも思えません。


 「私に何かようかしら」

 「私、何かやっちゃいました?」


 立ち止まり、私に一番近づいている者に声を掛ける。


 「用か」

 「お前を殺しにきた」

 「お前は、このエターナルファンタジーの中で消滅しろ」

 「お前は、上林月恵、なんだよな」

 「お前が何をしたかって」

 「人類を殺して回った」

 「俺の愛する者も、家族も、友も」

 「何もかも殺したんだ」


 やれやれ。 

 またですか。

 いったい、私が誰を殺したっていうんでしょう。

 貴方の事なんて、覚えていやしませんよ。


 しかし、後続がまだ追いついてきませんね。


 スタミナや移動速度からいって、私と私を追ってくる者達とはそう変わりがない事は、

追いかっけこをしているうちに分かっています。


 私を知っている者は、私を警戒している。

 私に怯えている。


 なら、いっそここは上林月恵という彼らが言う名前を名乗り、悪党の親玉だか悪の月恵とやらになりきってみましょうか。

 はったりかまして、なんとかする以外の選択しは、永遠に拷問されるか、拷問の末に死ぬか、この場で殺されるかです。


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