55話 憎しみはフルダイブ型VRゲームを発展させる貴重なスパイス


  『もちろん、このゲームもね』

 『300万本作って在庫はまだ298万本ありますから』

 『残り298万本もすべて差し押さえていって下さい』

 『差し押さえといわず、差し上げますよ』』

 『貴方は、随分妻を殺した私達が憎いようですね』

 『それは随分と独りよがりなのではないでしょうか』

 『貴方の妻閑音は自ら望んで、この危険なゲームを遊んだのですよ』

 『事前説明とは違って痛覚があった、ですか』

 『けれど、閑音は死っていた』

 『それって、自己責任ってやつですよね』

 『ざまぁ(笑)』

 『人のせいにするのは辞めてもらえますかね』

 『こんな結末になったのも、貴方が悪いとも言えるんですよ』

 『憎むなら、呪うなら、せめて御自分を呪ってはどうでしょうかね』

 『自分を呪うのはいいですよ』

 『人を呪わば穴二つ』

 『自分を呪えば、その報いでさらに自分に呪いがかえってくる』

 『自分を呪えば、効果2倍』

 『よかったですね、悪いのが貴方自身で』

 『自分に何をしても、なんの罪にも問われませんから』

 『貴方は精々、悲劇のヒロインを気取ったまま生涯を終えられます』

 

 とまぁ、そんな事もあったのよ。

 その後、妻をサークル活動で制作されたフルダイブ型VRゲームで失った男性は、そのゲームを作った機材で、

フルダイブ型VRゲームの制作にのめりこんでいったり。

 まぁ、そんな事もあったらしいわ。

 そのような憎しみも、フルダイブ型VRゲームの発展に、普及に、つながっているのでしょう。

 人類は、危険なフルダイブ型VRゲームに夢中になっていた。

 愛する人がフルダイブ型VRゲームで死ねば、障害をおえば。

 他の誰かも、同じ目にあわせてやろう。

 そう思うのが普通の人間です。

 死は、痛みは、恨み、憎しみも、連鎖していくもの。

 フルダイブ型VRMMOは、そのような連鎖で発展していった。

 憎しみはフルダイブ型VRMMOを発展させるのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る