第44話 「殺すつもりはなかった」と容疑者は殺意を否定しており


  群衆達全員が、そのアナウンスを聞いた。

 文章としても、ウィンドウに表示され残っている。


 「うそだろ、メスガキ」


 「死んじまったのか」


 「現実世界で死んだんだよね」


 群衆がどよめく。


 「このゲーム、痛覚があるらしいわよ」


 この場での騒ぎを聞いて後からやってきた者達が、モンスターと戦ったりPVPをしていた者達からの情報を伝える。


 「ぇぇ、じゃあ」

 「ダメージが酷い場合はショック死もありえるって事よね」


 群衆はもう何を言っても、どんな情報を聞いても、とうに理解していた。


 誰もが分かる簡単な事だもの。

 メルメちゃんは、痛みによって、現実世界でショック死した。


 「でもよ、急いでモンスターと戦いにいった奴等から聞いた話しじゃ」

 「ショック死する程の痛みじゃないって言ってたぜ」

 「本当に斬られたらもっと痛いし」

 「精々、お遊びのゲームの範疇の痛みだって」


 「いやいやいや」

 「あれじゃ、お遊びの。ゲームの範疇の痛みを超えるだろ」


 「それに、メスガキよ」

 「いくら精神力があっても」

 「肉体はメスガキよ」


 もう、この場の誰もが答えを分かり切っているのだから、これ以上言っても何も変わらなかった。


 「そんなつもりはなかった」

 「殺すつもりはなかった」


 義徒が殺意を否定する。

 その言葉は、本当にも思える。

 けれど、それは義徒を端守を。

 この世界で得ている評価。

 人類の守護者としての立場を守るための話しだ。


 義徒の活人投げ1式:首の骨を折る投げの死亡率が7割。


 この異世界で、義徒は多くの人間を殺してきたでしょうね。

 人類の守護者として。

 人類のための英雄として。


 そんな義徒が、メルメちゃんの命をどれほど重く取れるかは。

 重く見れるとは思えなかった。

 

 義徒からすれば、水守達からすれば、所詮私達人間の事など自らを称えるための。

 税を収めさせるための下等生物にしか見れていないのでしょう。

 それが、水守達よ。

 メルメちゃんは、その事が分かっていた。


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