第43話 【メスガキの現実での生命反応が途絶えました】


  「あのメスガキ動かないわよ」


 「大丈夫かメスガキぃ」


 「立ってメスガキィ」


 「立ってよぉメスガキィ」


 群衆が、メスガキを案じる。


 このゲームは、嗅覚がある。

 なら、嗅覚以外の感覚もあっても、おかしくはない。

 痛覚があるなら。

 現実世界の肉体を傷つける事はなくても、ショック死というのは、あり得る話しだ。


 群衆が知らない情報として、メルメちゃんは、きっと現実世界で食事もまともに取れておらず、衰弱状態だ。

 もし、私達が喫茶店でアイスコーヒーしてたり、初心者用の店で大車してる間。

 急ぎ早にモンスターと戦ったりPVPしてダメージを受けた者がいても、ゲーム内でHPが0になった者がいても。

 このフルダイブ型VRMMORPGには痛覚がある。

 攻撃を食らうと痛いですんだかもしれない。

 現実世界の体が健康な者ならば。


 しかし、メルメちゃんは。

 それに、サービス開始してから2時間も立っていないこの状況で、メルメちゃん程の衝撃を、オーバーキルダメージを食らったものがいるだろうか。

 いるわけがない。

 こんな事が出来るのは、水守達でなければ出来るわけがない。


 まだ、騒ぎになっていなかったんだ。


 「負けて回線切り逃げ、とか」


 「そんなわけないだろ」

 「俺達を痺れさせたメスガキが、そんな事するかよ」

 「そんな奴が、俺達を痺れさせられたか」

 「出来るわけないだろ、そんな奴には」


 回線切り逃げ等と言った者も、この場にいた群衆の誰もが、そんな事は分かり切っていた。

 メルメちゃんが、負けたから回線切り逃げなんてするわけがない。


 「それに回線切りだったら、メスガキのアバターも消えてるはずよ」

 

 回線切りにしろログアウトにしろ、どちらもプレイヤーのアバターがその場に残るわけがない。


 「メルメちゃん」

 「良い勝負だった」

 「涙を流しているとも」

 「立ち上がりたまえ」


 義徒が紳士的な振る舞いを取り戻しかけていた。


 「首を鍛えれば」

 「君はもっと強くなれる」

 「もっと首を太くしよう」


 首の太くなったメルメちゃんなんて嫌です。

 

 【メスガキの現実での生命反応が途絶えました】

 

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