42話 「これが、端守だ」


  「首の骨折れろぉぉ!」


 崖から飛び降りた義徒が、活人投げに相応しくない言葉とともに、ゆうにメルメちゃんの3倍以上あるであろう体重を乗せたまま、

メルメちゃんの頭蓋骨を崖下に叩きつける。

 不愉快な効果音が流れる。

 私も、痛みと恐怖に襲われていた。

 まるで、私が食らったように。

 これで生き残った現実世界の3割はいったい何者なのかしら。


 メルメちゃんのHPゲージは空っぽになっていた。


 【油男WIN!!】


 アナウンスが、義徒の勝利を告げる。


 「私の勝ちだぁぁ!」


 義徒が、両腕を40度に上げ、勝利を告げてくる。


 「首の骨を折ったらぁ」

 「私の勝ちなんだぁぁ!」

 「喧嘩なんてものはぁ」

 「首の骨折ればいいんだよぉ!」

 

 義徒も、興奮しているわね。

 義徒らしい紳士的な振る舞いは、興奮状態でなりをすましている。

 義徒の勝率が100パーセントの勝負ではなかったわ。

 義徒も、本気だった。

 興奮するのも至極当然でしょう。


 「これが、端守だ」

 「見たか人間共」

 「これが、正義だ」

 「これが、平和を掴んだ端守の活人投げなんだよ」

 「義徒を、端守を、水守さえも軽んじる人間共は」

 「こうして私が正義の投げで首の骨を折ってやる」

 「水守に異のある者は名乗り出ろ」

 「私が全員と相手をして」

 「全員の首の骨を折ってやる」

 「かかってこい」


 それにしても、我を失いすぎなんじゃないかしら。

 

 いえ、これが義徒の、端守の、水守の、我なんじゃないかしら。

 むしろ、我を取り戻したとも言うべきかしら。

 それ程に、メルメちゃんは強かった。


 「義徒、ファンサービスが過剰じゃないか」


 「あれがファンサービスなわけないでしょ」


 群衆達も分かっていた。恐怖していた。

 これが、義徒の、水守達の本質なのだと。


 水守達は、人類を恐怖で支配してきた。

 このMMORPGにログインしてる人達が異世界の人間であろうとも。

 この人達の世界では水守が人類を守っていても。

 その本質は変わらない。 

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