才賀三年生編4話 富造この野郎


  「うん」

 「オレェはわかったぜ」


  富造君の想いを意思を汚すような行為だ。

 もう、すまないとしか思いようがない。


 「もー存分に食べて下さいね富造君」


 桃菜ちゃんが、持ってきていた食事を広げる。


 富造君が、悩みを抑えたような振りで食べてくれる。


 その光景に、僕達は言葉を出せずにいる。


 僕らの言葉が出るより前に、桃菜ちゃんが用意してくれた食事はなくなっていた。


 「こんなもんだな」

 「オレェはこんなもんだ」


 富造君にはまだこんなもんではないだろうが、これ以上富造君の思いを汚す事は。

 僕もやめておく。


 それに、これから桃菜ちゃんにまた食事を準備してもらう時間もない。


 「ぱっちーん」


 もう一度指をぱっちーんと鳴らす。



 「才賀君も好きだねぇ」


 ぱっちーんしたんで、メイドの笠松苑香ちゃんが現れる。

 

 「富造君に例のものを」


 「やれやれ」

 「才賀君も富造君も好きだねぇ」


 苑香ちゃんが、ごそごそと探している。

 

 ん?ごそごそと探すようなもんじゃないんだけどね。


 「富造君」

 「これをあげよう」


 大きなおっぱいをさらけ出した女性が表紙の本だ。


 「オレェ嬉しい」

 「遠慮なく頂くぜオレェ」


 「あー」

 「いいなーいいなー」

 「私にも見せて見せて見せてー」


 「某は二次元派にて候」

 「それに、拙者はもっと美少女系の方が好みでござる」

 「その女性は育ち過ぎてるででござる」

 「女性になったら、もう無理でござる」

 「月恵殿にも、ずっと女性にはならないで欲しいでござるぅ」


 「そんな、私だって永遠少女じゃないし」

 「少女からいつか女性になるよ」

 「おっぱいも大きくなるよ」


 「そんな」

 「そんなぁぁぁ」

 「月恵殿のおっぱいが大きくなるのは」

 「拙者としても望む所なのである」

 「それでも」

 「月恵殿はいつまでもつるっとしてるんじゃないでござるかぁぁ!」

 「成熟期になってはだめでござる月恵殿ぉ!」

 「今月恵殿が幼年期Ⅱ段階目でござる」

 「成長期で」

 「成長期で止まるのが良いでござるぅ」

 「成熟期になってはだめなのでござるよぉ月恵殿ぉ」


 富造君は、涙を流していた。


 「富造君!」

 

 月恵ちゃんが、富造君の涙をハンカチで拭う。

 富造この野郎。

 何だよそれ。

 ロリ趣味語って泣いてれば、僕もそうしてもらえるのか。


 よし、やってみるか。

 いや、しかし時間が。

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