富造編3年生 1話  約束したんだ。「オレェはもう、むやみに人を殴らない」「殴ったでござるよ晴生殿」


  約束したんだ。

 「オレェはもう、むやみに人を殴らない」


 「殴ったでござるよ晴生殿」

 「殴ったよ晴生君」

 「殴ったわね晴生君」


 目の前で、数人が倒れている。


 「こんな事して晋次さんが黙ってるとでも思ってんのか」

  

 倒れてる奴等の軽傷そうな1人が、口を開いた。


 「思えねぇ」


 流石に、それはオレェも分かった。


 「モラルタへの宣戦布告と受け取っておいてやる」


 「宣戦布告って泰雅さん」

 「そりゃねぇよ」

 「向こうから攻撃してきたんだぜ」


 倒れていた連中の回復した奴が、口を挟む。

 

 「モラルタの非礼もあるんだ」

 「それで、非礼を許せや」 


 泰雅は、オレェ達にも、モラルタの仲間両方に向けて言っているようだった。

 不満を言っていたモラルタの1人も黙る。


 「ええ」

 「モラルタの非礼を許すわ」

 「私達はモラルタへの宣戦布告をした」

 「それで、文句なしよ」

 

 当然、月恵はそう言った。


 「拙者、喧嘩は嫌いでござるよ」

 「深夜アニメ見るのに忙しいでござる」


 富造がぼやく。

 本当に、富造は喧嘩が好きな方じゃない。

 本当の言葉だ。分かる。

 何せ、富造の本質は喧嘩じゃない。

 月恵と繋がってから封印してるとはいえ、富造の本質は殺人拳だ。


 「僕は品性方向な美少年委員長だからさ」

 「喧嘩とか好きじゃないんだよね」

 「けどまぁ」

 「モラルタへの宣戦布告は起きてしまったんだ」

 「正当防衛とか降りかかる火の粉はってやつで」

 「仕方ないな」

 「うん仕方ない。これは仕方ない事なんだ」


 才賀が心にもない事を言っている。

 才賀の言葉は嘘だ。

 分かる。

 才賀も、月恵と繋がってからも、本質は変わっていない。


 オレェも、月恵と繋がってからも本質は変わっていない。

 オレ達3人は3人とも、月恵と繋がった。

 けど、3人とも本質は変わっていないんだ。

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