第9話 私達は狩人だった。晴生君が獣なのも、また条理。
「うぜぇぇ」
晴生君が、人間の言葉を使う。
「うぜぇんだよ」
「晴生君、もうやめて」
私は、もう泣いていた。
初めに繋がった時より、体がどれだけ大きくなって。
どれだけ腕が足が太くなっても。
どれだけ、見た目が化け物じみてきても。
晴生君は、初めに関わった頃のように、なっていた。
晴生君が、富造君の足を掴み、引き倒す。
体制も、技術も無茶苦茶だ。
それでも、富造君は引き倒された。
私達が、攻撃をしても、晴生君は立ち上がり、富造君の喉を踏みつけた。
晴生君の体重で、晴生君の脚力で、富造君の喉を踏みつけるなんて事は。
それはもう、獣だった。
私達は狩人だった。
晴生君が獣なのも、また条理。
「うぜぇぇぇ」
もう一度、晴生君は富造君の喉を踏みつける。
人間の言葉を喋る獣だった。
でも、これが本来の私達の親友晴生君なのかもしれない。
富造君は、もう動けそうにない。
「晴生君」
才賀君が、動けなくなった富造君から晴生君の注意を引こうと呼びかける。
「当身技 オリジン 零」
そして、晴生君の股間に、足を蹴り上げる。
「金的」
当身技オリジン零:金的。
親友に向ける技ではない。
けれど、もう決まっていたんだ。
私達が繋がった時から。
「なんだよそれ」
!。当身技オリジン零:金的を直撃され、言葉を発するなんて。
このオリジン零金的をまともに食らえば、声も出せないはずよ。
「うぜぇよ」
晴生君が、才賀君に掴みにかかる。
常識で考えれば、才賀君に掴みにかかるなんてのはおかしい。
組んで、掴んで、才賀君の技術に勝てるわけがない。
が、晴生君は、才賀君の左腕を、関節技の技術も何もなしに、折った。
もう、獣でもなかった。
もう、怪物だった。
「づぁぁぁ」
才賀君が、痛みから声をうなる。
いくら、技術があろうと。
腕を折られれば、痛みで声をうなるのが人間だ。
技術では、痛みを抑える事はできない。
技術では、痛みには勝てない。
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