第7話 「私は月恵ちゃんの恋人よ」


  「私は月恵ちゃんの恋人よ」


 え。私、理々花ちゃんの恋人だったんですか。


 全然、良い事ですね。

 なんの不満もありません。


 「そして、あんたにお説教をする存在よ晴生」


 「がぁぁぁ!」


 晴生君が、理々花ちゃんに殴りかかる。


 「晴生」

 「あんたの行動なんて読んでるのよ」


 理々花ちゃんは、晴生君の大振りパンチを避ける。

 理々花ちゃんは、私達より前から、晴生君と付き合いがある。

 晴生君の大振りパンチをとりあえず避ける事はできるでしょう。

 でも、その次は。

 その後は。


 「月恵ちゃん」

 「遅れたが、僕も富造君に習うよ」

 「君が決めてくれ」


 決定権は私にゆだねられた。

 ええ、分かるわ。

 私が決定しなければいけないのよ。

 

 机と椅子が並ぶ教室では、逃げに回っている理々花ちゃんが余計に不利だ。

 晴生君が、暴れて、理々花ちゃんが逃げ回っていれば、椅子と机は倒れ、散らかり、どんどん足場が悪くなっていく。

 ともすれば、逃げる側の理々花ちゃんは、益々不利になっていき、The end。


 足場が悪くなっていく教室。スタミナが下がっていく理々花ちゃん。

 たどり着く結末のように、晴生君の大振りパンチが、理々花ちゃんの顎をかすめる。


 技術なんてものではなかった。

 ただの、力が、理々花ちゃんをかすめただけで、ダウンさせる。


 「グォォォ」


 理々花ちゃんがダウンしても、まだ晴生君の怒りは、理々花ちゃんに向かっている。


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