第6話 我らが主人公月恵、まだ覚悟決らず


  「才賀君」

 「晴生君を止めてちょうだい」


 でも、結局私は男の子の親友才賀君を頼った。

 理々花ちゃんを危ない目にあわせたくない。


 しかして、先程から、才賀君は何か悩んでいるようだ。


 「あ、ああ」


 僅かに返事はあるが、才賀君の歯切れが悪い。


 「なぁ、月恵ちゃん」

 「前前から思ってはいたんだ」

 「もう、限界なのかもしれない」


 才賀君は、悩んで、決めかねている。

 迷いが見られる。

 すぐには、助けてくれそうにない。


 「うるせぇ」

 「うるせぇ」

 「オレを縛るんじゃねぇ」

 「うるせぇんだよお前らぁ!」

 「口を開けば説教・授業」

 「オレを縛りやがる」

 「オレを教育しやがる」

 「オマエは何様だ理々花ァ」


 まずいわね。

 晴生君の怒りが、理々花ちゃんに向いている。


 あてにするしかないわ。

 富造君のヘッドギアを外し、フルダイブのバーチャル世界から、現実に引き戻す。


 「相棒」

 「理々花ちゃんが危ないの」

 

 相棒の返事がすぐには来ない。


 「月恵殿が望むなら」

 「某、やるでござる」


 返事をすぐに出せないのは、私だった。


 富造君と才賀君の方が、もっともっと考えてて。

 覚悟もしていたのかもしれない。

 私には、覚悟がなかった。

 覚悟どころか、まだ何も決まっていなかった。

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