第59話 第二のプルダバ攻城戦
「さて、総勢240ほどの大部隊か」
日本軍だと二個中隊くらいか?
それくらいの数だと思う。
突如として平原に現れ、城塞を半包囲。
鶴が翼を広げたような陣形で、相変わらず散兵包囲だ。
トレーヴィ市への逃げ道は敢えて残してある。
地下を自在に行き来する彼らはある意味空軍の要素も併せ持っているかもしれない。
落とせるか? と思うがこいつらはただの歩兵じゃない。
みんな槍魔法をぶっ放す危険なやつらだ。
大砲240門とか戦車240台といった方がいいかもしれない。
戦力としては十分以上だ。
今回は夜襲ではなく真昼間。それも正面から仕掛ける。
およそ攻城戦のセオリーから反していそうな力攻めなのだが、どう立ち向かうというのか。
「撃てええええ!」
第一射めの掛け声だけは
眷属将も直ちに伝達。
【土石槍】と【火炎槍】が乱れ飛ぶ、かに見えたがそこはやはり統制が取れている。
誰がどの建物を狙うのか、予め共有されていたようだ。
【火炎槍】は炸裂し、【土石槍】も衝撃を加える。
「効果なし……か。これはやり手がおるな」
石造りの建物ならまだ可能性としてもあるが、【火炎槍】が木造建築炸裂してなお、全く炎上しないのは不自然だ。
素人の俺でも遠目で何かあると感じる。
「眷属将殿、指揮権お返しする。他の有象無象はお任せしたい」
無言で首肯する眷属将。
「久々に暴れられるのう」
そういうと甲冑武者は『
「おい
「さて、先ほどの魔法防御の中心は分かった。そこに術者がいるはずじゃ」
「やはり魔法使いがいるということか?」
「ああ。少しは骨がありそうじゃな」
魔法防御の仕組みが良く分からないけど、
そこにクィマームも話しかけてくる。
今は近くに居ないので、これもテレパシーだ。
「あの魔法防御は厄介ですね。魔法の実質的効果だけを打ち消し、外見だけは残るんですよ。光属性も使われているはずです」
「え? それってレア属性じゃ……」
「ええ。そんな人材がこんな外れに来るなんて、人類陣営の情報網が侮れないのか、それとも村に縁故でもあったか? どちらが答えなのかはこれから分かることになるでしょう」
魔法攻撃によって、街のニンゲンの多くが戦闘態勢に入ったことを知ったようだ。
街の中が騒然となる。
警鐘が鳴り響き、避難指示やら陣形配置に関しての号令が飛び交っている。
突如として現れ、準備ができる前に包囲して火力を浴びせるという奇襲効果は完全に失われてしまった。
「しかし、あの魔法実に高度でしたね。あれほどの魔法防御が事前にあることが分かっていれば、もっと別の手段を講じたのですが、奇襲が裏目に出ましたか」
「どういう意味だ?」
クィマームの分析の意味がよく分からなかった。
「いえ、防御魔法がかけられていることなんて普通は見れば分かるんですよ。しかし、あれは槍魔法に反応して即時に展開され、今は消失しています。つまり不意打ちで防御してきたんです」
防御で不意打ちってなかなか聞かない取り合わせだが、結構高度な技術らしい。
「妾も一度開発したのですが、発動条件に苦労しましてね。頓挫しました。是非、綺麗な死体が欲しいですね」
「後方は好き勝手言いよるわ」
「おっと
「当たり前じゃ。ただ、便利な防御魔法じゃから、某の方でも留意するわい」
そうか、冷静に考えると俺の頭の中は
このコミュニケーション方式は、クィマームの方が一日の長があるみたいだが、
その
城壁からは投石、弓矢、一部魔法による射撃が盛んにおこなわれ、
これは
俺が城壁の上の兵士でも一番前の奴に矢を射かけたくなる。
恐怖に駆られればなおさらか。
射かければ射かけるほどにその恐怖が増していくのは、皮肉なものだ。
これだけ射かけているのになんで効かないんだろう? と思えば思うほどにいっそう射かけてしまうのが恐慌状態というものだ。
押して駄目なら引いてみろ状態なのに押してしまうものだ。
ともあれ、
「【戦技:渦撒き】」
城門前に辿り着いてしまうと角度が付いて射線が通らなくなる。
つまり、戦技を使うだけの余裕ができてしまうということだ。
城門どころか、城壁を巻き上げながら扇状に広がっていく。
「どっちかというと津波なんじゃないか?」
「まあ、威力は高いぞ。それに、ここまで近づけばあの魔法防御も作動しないらしいと見える」
さて、第一の障害は取り除かれたな。
だが、まだ次がある。
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