対スルマーレ王国戦争 前半
第58話 トレーヴィ市攻略前哨戦
結局、
眷属将も同様の編成で132体を麾下に加えた。
不足分はクィマームからの増援で補った形だ。
クィマームは産むペースを落とす気が現状無いらしく、森中央での口減らしも兼ねているようだ。
方針の変更に伴って、敵地でご飯を食べる作戦に切り替えたようだ。
もうじき眷属将ももう3体くらい産みたいとか言っていたから、
「我が王、ではクィマームに伝えてくれるか? 速めに眷属将を送ってくれとな。どうも指揮は好かん」
カブトムシだしそりゃそうだろうな。仲良くできてる方が不自然か。
あと単純にステルスキルが上手すぎるからな。
大軍といるとかえってバレやすいのだろう。
「分かった。伝えておく」
やり取りは終わった。何か問題が起きない限りは、もうほとんど俺がすることは無い。
まあ、軍事行動でなにもトラブルが起きないわけが無いので、暇になることは無いと思うけど。
かくして
最寄りの輸送網は執拗に隠蔽した。
集落小都市の攻撃はド派手に行った。
これは計画通りではある。すでに構築した輸送網に勘づかれたくないからだ。
しかし、予想外にド派手にならざるを得なかった一面も否定できない。
眷属将は村々の予想外の抵抗に苦慮していた。
そもそも村に居ない。
村に食糧備蓄が無い。
では何をしているか?
彼らは村から避難し、中心の小都市。
いつもはほそぼそと物々交換をするための市を開くだけの小都市を要塞化していた。
「ふむ、これだけの築城、魔術師を雇えたか。あるいは縁故ある者が里帰りしてきたと言って良いじゃろうなあ」
ちょっと行き詰ったか。
村のはせいぜい150人くらいしかいなかったが、周辺の4~5村落が寄り集まったこの簡易要塞には750は居ると見た方が良いだろう。
トレーヴィ市が鈍重な対応をしているのに胡坐をかいていたが、村人は村人で自衛のため動いていたようだ。
当たり前といえば当たり前か。
「煮炊きの煙からして、2,000くらいはいてもおかしくないじゃろうか」
「2,000? ちょっと多すぎない?」
「傭兵団を雇ったとかならありえるかもしれんな。まあ、それにしても多いから、煮炊きの煙で人数を多く見せかける戦術もありうるか」
「
「うーん、現時点で敵は人間だと思っている可能性が高いかもしれんな」
「というと?」
「森の連中で煮炊きの煙から人数を推定するやつがると思うか? クィマームは除くぞ」
「……エルフくらいか」
やっぱり
もっと言えば森陣営は、人間が一日に必要とする食糧薪水を把握している奴なんかいない。
エルフも口に出したものの、「たくさんいるなあ」くらいしか読み取れないだろう。なんなら煙を隠す知恵もないとか思って逆にナメそうだし。
「ああ、だから村人以外の入れ知恵を疑っておるぞ。明らかに戦いを知っている者の動きだな」
「そうか。潰せそうか?」
「分からん。現状分かるのは、最大でも2,000人が限界だろうということだけだ」
「それ以上は収まりきらないかな」
「ああ。砦の規模からするとな」
「じゃあ、攻めないということもありうる?」
一応聞いてみた。
「いや戦うしかあるまい」
ここでこの程度の砦も落とせないと知られたら、トレーヴィ市の陥落もあり得ないとみられ、見くびられる。
少なくとも城塞攻撃能力があること、攻城戦が実行可能なほどの集団であるということは示さなければならないだろう。
「そして、この砦を落としたと同時に、敵は知ることになるだろう」
「何をだ?」
「敵が単なる賊ではなく、森陣営という軍隊であるということだな」
なるほど。たしかに魔法による突貫工事とはいえ城壁は石造り。
だいぶ分厚いし、急ごしらえの城門も分厚い丸太だ。
とても一夜城とは言えないな。魔法の存在はやはり大きい。
たった一人の人間に建設会社1社くらいの生産能力を与えてしまう。
「で? 作戦は?」
「もちろん。正面から叩き潰す」
「え? トンネル掘ったり、空から奇襲したりしないの?」
今さっき数が多いって話を下ばかりだよね。
「いや、今後トレーヴィ市を落とす時に虎の子の戦術は秘匿しておきたいからの」
「数は足りるのか?」
「そこじゃな。反対側の眷属将もこちら側に差し向けられないだろうか?」
隊を分けた意味が急速に失われた気がするが、いいのだろうか?
こんな会議をしていたらクィマームから連絡が入った。
「……そんなことを言うかと思って掘らせておきましたよ。トンネル」
……クィマーム、もしかして拠点と拠点のには地下道を作らないと気が済まない性分なのかもしれんな。
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