第7話 超回復
「おかえりなさいませ、ってええ⁉ 酷い痣」
訓練の後、ボロボロの体で帰るとローザリンデが出迎えてくれた。
「ただいまローザ」
「すまないな姉ちゃん、我が王を返しに来たぜ、っておおう⁉ 某はこれで帰るぜ」
ローザリンデは気にしてないが、
でももう少しまともな服を着てほしいかも。
「ローザこそ、裸にそれ一枚?」
「はい。外をうろつかないときはだいたいこれ一枚ですが?」
白絹っぽいワンピースの下着。谷間も太ももも見える色っぽい服装だ。
こうしてみると足長いなあと改めて思う。
胸が大きいのでダボっとしている感はあるが、部屋着なら気にしないのだろう。
「そうか、ローザが見られても気にしないなら別にいいか」
「ああ、でもこの姿をロイドには見せないですね」
え?
「ん? なにか不思議でした? だって
「そうだったんだ。俺の感覚だと
「え⁉ ロイドが木に見えてるってこと? ふふふ。面白いですね」
意外なカルチャーショックを受けた。人に近いなあという感覚がここまでずれるとは。
正直、今までのメンバーでは、ローザリンデがほとんど人で、
「一応、お食事は用意しました。お口に合うかは分かりませんが、それよりも先に私ですね」
「え? ローザ?」
「あれ? 昨夜言いませんでした? アルラウネが気持ちよくなると良い薬の原料が出ると」
「うん、言ってたね」
「あれをそのまま塗り薬に使うと打撲に効きますよ。人間は他の薬品と混ぜて飲み薬にしているようですが」
「え? これからするの?」
どうしよう。正直全身が痣で痛いので、今日はちょっとなと思っていたのだが
「大丈夫です。痛み止めの薬効もありますから」
そう言うといそいそと俺の手を引いてベッドへと案内された。
拒否権は無いみたい。
家に入る前に井戸で体は拭いたから清潔なはずなんだけど……
「じゃあ脱がせますね」
ローザリンデの顔色が明るい。
そして、極力体に触れないように、服を脱がされた。
「うわあ、ひどい怪我。
「そんなこというなよ。だいぶ加減してくれてるんだからな。木刀で木の幹へし折るんだよあいつ」
「やっぱり悪魔じゃないですか」
話しているうちにローザリンデの見立ては終わったようだ。
「じゃあ、私が仰向けになりますから、左手首から始めましょうか。私が甘噛みした状態で、身体をまさぐってください」
「ローザはそれだけで満足できるのか?」
「昨日の媚薬の希釈を間違っていて、染み込んでしまったんです。だからノボル様に虐めていただけたら、すぐにでもおおお⁉」
「痛、本当だ」
胸を揉んでみた。跳ねた体が俺の痣に当たった。
不意打ちを食らったローザリンデは首をのけ反らせながら、薬液を口から少量出していた。
なんだか蛇の毒の採取みたいだな。直接見たことはないけど。
「無駄、撃ちさせないれください」
「ああ、ごめんごめん」
既に呂律が回らんくなってきている。
ベッドにかかった薬液に痣を押し付けると、するすると肌の色が戻っていく。
「凄い、痛みも消えてなくなった」
「ふふふ。良かったれす」
「じゃあ、他の場所もお言葉に甘えて」
俺だけ裸なのも変なので、ローザリンデの服をたくし上げる。
仰向けになると胸は左右へと流れてしまうが、それでもなお圧倒的であり、服の下で虚勢を張っていたウエストは細い。厳密には胸と腰の幅が大きいのだと思うのだけれども。
「ああ、すごい。全快だ。体も軽いし、熱も引いてる」
全ての痣が消える頃には、ローザリンデの反応は無くなっていた。
昨晩に引き続き甘えすぎたかもしれない。
幸せそうな顔で静かに寝息を立てているので、起こさないようにそっと体の汗を拭きとる。
アルラウネが風邪をひくことがあるのか分からないが、体温が人並みにある以上は、冷やすべきでないだろう。
「あれ? 胸が引っかかるな、あ、腰もか」
たくし上げるときはするりといったワンピースだが、きちんと着せるときには難航した。
意識の無い体を動かすのは骨が折れるな。
でも白磁の体を撫でられたからヨシ!
「ふう、じゃあ布団をかけてと。仰向けだと苦しいよな、横向きにするか」
痣も治ったところで、遅めの夕食を取る。
すっかり冷めてしまったのだが、満足感は既に得ていたので美味しく食べられた。
いや、空腹に気づかなかっただけかもしれない。
「あれ?
ダイニングの窓の外できらりと光るものがあった。
それが
それにしても何をしているのだろうか?
「あ⁉ 木に穴を開けて、樹液を吸ってるのか。うーん、エコ」
最後に珍妙な光景を見た。
あいつの食事あれなんだな。というか食事要るんだ。召喚とか悪魔とか言ってたから不要だと思ったのだが、知るべきことが多すぎるな。
「あれ? 歯ブラシって? そもそも歯磨きの習慣てあるのか?」
寝る前になって気づいた。
ああ、そう言えば昨日は洗ってないのか?
でも臭いとかしなかったけどなんでだろう?
「まあいいや。今日は口をゆすぐだけで寝よ」
そうこぼしながら寝室に入ると、仄かに薔薇の香りがした。
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