42.「え?で、でも……この鎧なんか明らかに禍々しい気みたいのが漂ってるんだけど……」

エリムとイライザが、『家族団らん』の濃密な一日を過ごした、少し後のこと──。



ファルツレイン侯爵、出陣───。

その報せは王国軍を俄かに活気づかせ、普段は敵対している筈の帝国ですらその報せを喜ばしいものだと報じた。

先んじて参戦したノーヴァ公爵軍もまた、ファルツレインの出陣に呼応するように帝国軍を纏め上げ、そしてその時に備えて動き出す。

王国軍──

帝国軍──

そして、森林国───

三者三様の大軍勢がぶつかり合う時、歴史は動く。




♢   ♢   ♢




ラインフィルのノーヴァ公爵邸の庭。其処は色とりどりの花々で溢れ、木々が咲き誇っている。

その中に一人、静かに佇む女性が居た。普段身に着けている瀟洒なドレスではなく、猛々しい鎧を身に着けた美しい女性が。

白銀を基調としたその鎧は戦乙女を思わせる神々しい装飾が施され、女性の持つ美しい白銀の髪を映えさせていた。


「戦が、始まる」


鎧を纏った女性はそう呟くと、徐に背負っていた剣を抜く。その剣は女性の身丈に迫るほどに大きく、しかし女性はそれを軽々と振るう。

女性が剣を一振りすると、鋭く煌く銀閃が空を斬って線を描いた。

帝国の技術の粋を凝らして作られたその剣は、全てを切り裂く星の剣。夜空に浮かぶ月を思わせる剣身は、その名の由来の通り美しさと鋭利さを併せ持つ。


「はぁっ!」


不意に女性が剣を振るうと、辺りには銀閃が煌き、一陣の風が吹いた。その風は周囲で咲き誇る花々を舞い上げる。


「ふふ。楽しみね」


女性は剣を収めると、その瞳にまるで少年のような輝きを灯してそう呟く。

女性の名は───アイリス・ノーヴァ。帝国が誇る英雄の一人であり、最強の名を冠する戦士。

その細い身体からは想像できない程の膂力を秘め、その身に宿す力は戦神の如き猛々しさ。

彼女は一心不乱に剣舞に興じる。その姿はまさに戦乙女のようであり、見る者はその美しさに感嘆せずにはいられないだろう。

そしてそんな彼女を見る人影が一つ。


「わぁ……!かっこいいです、アイリス様!」


エリムである。彼は目を輝かせて自らの主人であるアイリスの舞に見入っていた。

壮麗な鎧を着て剣舞を披露するアイリスの姿は、御伽噺に出てくる英雄のようであり、エリムの心はあっという間に奪われた。

美麗さと猛々しさが入り混じった彼女の姿は、性別を超えて見るものを虜にする。

アイリスは剣舞を終えると、ふぅと一息吐くとエリムへと笑顔を向けた。


「どう?エリム。私の剣舞は」

「すごいです!アイリス様!」


そう言って目を輝かせるエリムに、アイリスは優しげな笑みを浮かべてそっとその頭を優しく撫でた。


「なら、もっと凄い所を見せてあげましょうか?」

「えっ?」


アイリスは再びエリムから離れると大剣を握りしめ、その身に闘気を漲らせる。すると周囲の空気が一変し、空間がびりびりと振動し始めた。

離れたところにいるエリムにも感じられる程の闘気。それを放つアイリスの姿に、エリムは戦慄を覚える。


「あ、あぅ……!!」


その圧倒的な闘気の奔流は、エリムの心に畏怖の感情を刻み込むには十分なものだった。

そしてアイリスは剣にありったけの闘気を注ぎ込み、そして天に向かって構えた。


「はぁああああッ!!」


そしてアイリスは、勢いよく剣を空へと振り抜いた。その瞬間、闘気が収束し空間を斬り裂く一筋の光となって放たれた。その光は大気を揺らし、彼方へと駆け抜けていく。

一瞬の静寂の後、空の雲が二つに割れる。そして遅れて衝撃が辺りに響き渡った。


「ッ……!」


エリムはその音を聞いて身を竦ませる。思わず尻餅をついてしまったほどに。

なんという剣閃。まるでゲームや漫画に出てくるような光景を目の当たりにして、エリムは驚きを隠せなかった。


「ふふっ、どう?凄いでしょう?」


そう言ってアイリスはエリムに手を差し伸べる。その手をエリムはおずおずと握った。


「す、すごいです……!!」


今のエリムの頭の中は感動でいっぱいだった。見た目は美しく、そして可憐な女性であるアイリスが見せる、圧倒的な力と技術の奔流。

それはエリムの心に深く刻まれる事となった。

そんな彼の反応に気を良くしたのかアイリスはドヤ顔で彼に言う。


「そうでしょう、そうでしょう!何故なら私は最強なんだからね!」


自分を最強と称する、まるで中学生の妄想のような事を言ってのけるアイリスだが本当にそうなのだからしょうがない。

そうしてアイリスが気を良くしていたところに、ふとエリムは疑問を覚えてふと尋ねた。


「あの、アイリス様」

「ん?」

「何故鎧を着て、剣舞を披露されてらっしゃるのですか?」


エリムの問いにアイリスは一瞬きょとんとした表情を浮かべる。そして直ぐに当たり前だというような顔で言った。


「あら?言ってなかったっけ。私これから戦争に行ってくるって」


アイリスの言葉にエリムはカチンと固まった。そして頭の中で漸く彼女の言葉を理解すると、慌ててアイリスに問いかける。


「えっ!?こ、これからですか!?」

「ええそうよ。だからこうして身体を慣らしてるって訳」


アイリスはさも当然とばかりに言うが、エリムはそうはいかない。

何故いきなり戦争に行くことになっているのだ?もし怪我でもしたら、死んでしまっていたら──、とエリムは軽いパニックに陥る。

そんなエリムの様子を見かねてかアイリスは優しく彼に微笑むとそっとエリムを抱き寄せた。


「大丈夫よ、心配しないで」


アイリスはエリムの頭を撫でながら続エリム


「私が居なくても、貴方はここにいれば安全だから。それにすぐ戻ってくるわ」


エリムはアイリスの胸に抱かれながら、その温もりを感じつつ彼女の言葉に耳を傾ける。


「だから、少しの間だけ待っててね」


そしてアイリスは笑顔を見せる。彼女の事は心配だし、もっと一緒にいたいが我がままをいって彼女を困らせる訳にはいかない。

エリムは決意を固め、アイリスから離れると、こくりと頷いた。


「分かりました!ぼく、アイリス様のこと待ってます!」


エリムの力強い返事に満足したように彼女は微笑んだ。エリムはその笑顔に思わず見惚れてしまう。

寝室で沢山愛を育んだ。身体を重ね、毎夜のように愛し合った。エリムはアイリスと離れたくなかったし、それは彼女も同様である。

しかし彼女は行かなければならない。愛する祖国の為……ではなく、ただの自分の野望と性欲の為だが。


「アイリス様……その……森林国と戦争する……んですよね?」


エリムはおずおずとアイリスにそう尋ねる。


「母上は悪い御人ではないのです。理由もなく他国を侵攻するような真似はしない人なんです。きっと、今回の事も何か理由があって……!」


エリムは何故母が他国を侵略しようとしているかは分からない。まさか自分を探すために軍勢を使って世界を荒らす訳はないだろうし。

だけど、彼女は悪い人ではないのだ。それは幼い頃から母の愛を一身に受けて育ってきたエリムの紛れもない本心だ。

だからこそ、エリムは母の愚行を誰かに止めて欲しかった。何故ならそれは彼女の為でもあるのだ。


「その……もし母と相対する機会があるならば、お伝え下さい。エリムは元気だと。そして、もう侵略のような行為はしないでと……」


アイリスはそんなエリムの言葉を聞いて、優しい表情を浮かべるとそっと彼の頭に手を置いた。

そうだ。彼は森林国の王子であり、女王は彼の母なのだ。母を慮る息子の気持ちを聞き、アイリスは胸が熱くなるのを感じた。

なんといういい子なのだ。こんな子を悲しませるなんてなんて酷い母親なのだ。

これは自分がなんとかしてあげないといけない。具体的には女王をぶっ殺してエリムを母の束縛から解放してあげよう。

よく考えたらエリムと結婚したら森林国女王とは姑になる訳だが、そんなのいたら面倒くさいし、なんか話聞いてると実の息子にセクハラしてる変態みたいだしぶっ殺してもいいよね。

アイリスは決意を新たにするとエリムの頭を優しく撫でた。


「分かったわ、必ず伝える」


そう言うとアイリスは、最後にぎゅっとエリムを抱き締めた。

アイリスは頭と胴体を切り離してから伝えるか……と内心で思っていたのだが、その事をエリムは知る由もなく甘えた顔でアイリスの胸に頬擦りするのであった。

そんな時である。抱き合う二人の背後から不意に声が掛けられたのは。


「アイリスよ、出陣の準備は整ったか」


ノーヴァ邸の門から堂々と歩いてきたのは、ファルツレイン侯爵ことイライザであった。

彼女もまたアイリスと同じくいつものドレスのような装いとは違い、軍服のような凛々しい出で立ちをしている。

鎧ではないものの、その姿は司令官を彷彿とさせるような威厳あるものだった。


「おぉ……」


その姿にエリムは思わず感嘆の息を洩らす。目を奪われるエリムであったが、アイリスに頬をギュっとつねられて慌ててアイリスの顔を見る。


「こら、他の女に見とれるんじゃないの

「あうあう……ご、ごめんなさい……」


アイリスに叱られたエリムはしゅんとして謝る。そんな二人のやりとりを見てイライザはふっと微笑ましそうな表情を浮かべた。


「ふん。エリムが妾のような美女に見惚れるのは当然のこと……なぁ、エリム?」

イライザはそう言ってエリムの頭を撫でる。撫でられたエリムは気持ち良さそうに目を細めつつ「はい!」と返事をした。



「いや、はいじゃないから!何言ってんのよエリム!」


アイリスは目の前のババァに見惚れているエリムを再び抱き寄せると彼を取られまいとぎゅーっと抱きしめる。

エリムの鼻腔にアイリスの甘い香りが満ちた。


「も、申し訳ありません……アイリス様」

「全くもう!貴方は私のものなの!私の奴隷なの!分かった!?」

「は、はい!僕はアイリス様のものです!」


エリムの返事に満足したアイリスは、ゆっくりとエリムを離す。解放されたエリムは名残惜しそうな顔を浮かべたが、アイリスは再び彼に微笑むとそっと頭を撫でた。


「ふふっ……良い子ね」


そんな二人のやりとりを呆れながら見ていたイライザだが、いつまでもここでまごまごしている訳にはいかない。そろそろ出陣せねばなるまい。

彼女は門の方へ視線を送ると、そこには一台の馬車が止まっていた。


「おい!例の物をここへ!」

「畏まりました」


イライザが馬車の御者にそう言うと、何人ものファルツレインの使用人達が馬車の中から何かを持ち出して、全員でその物体を運んでくる。

突然の事にアイリスとエリムは目をぱちくりとさせた。


「な、何よこれ?」


アイリスが問うとイライザはふふんと笑みを浮かべた。


「貴様の鎧だ」

「はぁ?」


ドスン、と数十人がかりで運ばれていた黒い鎧が地面に置かれる。

その鎧は見る者に威圧感を与えるような漆黒の輝きを放っていた。離れていても禍々しい雰囲気を漂わせている事が分かる。

血のような刺々しい線があちこちに施されており、鎧の各所には同じ色の装飾が施されている。

それ単体でも威圧的な存在感を放つそれは、間違いなく強力な魔法の武具である事が見て取れた。


「いや何言ってんのよアンタ。鎧なら私のがあるから」


アイリスはそう言い、自らが今まさに着ている白く輝く鎧をアピールするが、イライザは首を横に振った。


「貴様こそ何を言っているんだ。その鎧はノーヴァ家の紋章が刻まれてるし、顔なんて丸出しだから貴様がアイリスだとバレバレだ。確かに貴様のその鎧は一級品だろうが、正体がバレるのはまずい」


今回アイリスはイライザと共に出撃する。それはつまり王国軍の一員として参戦するという事であり、そんなところに急に王国の仇敵であるノーヴァ公爵(元)が現れたら、王国の兵達に動揺が奔るのは必至だろう。

故に今回イライザは鎧を用意した。それもフルフェイスの兜で顔を隠せる鎧を。これを着れば中身がアイリスだとバレる心配はないだろう。


「え?で、でも……この鎧なんか明らかに禍々しい気みたいのが漂ってるんだけど……」


アイリスが言う通りその鎧は禍々しい気を放っていた。

それは恐らく、この鎧自体が強力なマジックアイテムである証左であろうが……正直とても着たいとは思えない代物だ。


「そうだろうな。その鎧を着た者は例外なく死……あ、いやなんでもない」

「は!?なんか今言い掛けなかった!?なんで途中でやめた!?死ぬのか!?私これ着たら死ぬの!?」

「うるさいな!今正体がバレたら不味いんだから、黙って着ろ!」

「ちょっ、やめて脱がせようとしないで!エリム助けて!」


エリムに助けを求めるアイリスであったが、彼は目を輝かせて黒い鎧を興味津々と言った様子で見ていた。


「アイリス様!この鎧なんか強そうだし、かっこいいです!」


その瞳はまるで少年のような輝きを放っていた。そんな目でそんな事を言われたらアイリスは無下にも出来ず……。


「……」


アイリスはおずおずと漆黒の鎧を着ることとなった。


「き、きつい……」


鎧を身に纏ったアイリスは圧迫感と暑さに顔を顰める。初めて着た鎧だが、やはりこの鎧はかなりの重量があるようだった。

特に胸がきつい。これを着ていた奴はどんな貧乳野郎なんだと言いたいくらいの胸囲の格差社会である。

アイリスは鎧を身に着けると自分の腕や胴体を確認する。フルフェイスの兜のお陰で視界が遮られて鬱陶しいことこの上ないが、それでもこの鎧が見た目通り禍々しい気配を放ってるのはひしひしと感じ取れた。


「う……うぅ……なんで私がこんな見るからに邪悪な鎧なんか着なくちゃならないのよ……」


先程までアイリスが着ていた鎧はノーヴァ家に代々伝わる神聖な鎧だ。アイリスはノーヴァ家というものにそこまで帰属意識を持っている訳ではないが、あの鎧だけは特別なものだった。

見るからに神々しくて、心が清らかで、慈悲深い自分にピッタリの鎧だったというのに……!

それを問答無用で脱がされ、そしてこのような禍々しい鎧を着せられるなんて……とアイリスはちょっぴり涙が出てきた。

そんなアイリスに対してイライザは諭すように言う。


「正体がバレてはいけないといったのは貴様だぞ、アイリス」

「それはそうだけど……うぐぐぅ……」


くそ、なんでこんな目に合わなくてはならないのだ。自分はただエリムとイチャイチャしたいだけだったのに……。

まぁ自分の企みが原因なのだが。


「おや、お屋形様。それにイライザ様。もうご出陣で?」


悲観に暮れるアイリスの背後からそう言って現れたのは、マリアだった。その後ろにはプラネとミアの姿も見える。

どうやら三人はアイリスとイライザの出陣の事を知っていたようで見送りに来たらしい。


「マリア……くっ、私を笑いにきたのね。いいわ、笑うがいいわ。この美しく神聖な私がこんな禍々しい邪悪な鎧を着てるんだから」

「はい?何を仰っているのですかお屋形様は。いつも以上にお似合いですよ、その見るからに邪悪な感じ」

「うむ。まさに姉上にぴったりの雰囲気だ。まるで姉上の為に作られたかのような凶暴な感じ……あ、いえなんでもありません」

「流石アイリス様です!殺害人数一万人以上の異常者って感じがして、とてもお似合いですよ!」

「ぶっ殺すぞてめぇら」


言いたい放題言いやがって……!

誰がなんといおうと私は神聖なんだ。私はいつも清く正しく美しく、そしてちょっぴりエロいんだ。

邪悪なわけがない。そうとも、そうだとも。


「おい、遊んでいないでそろそろ行くぞ」


身内にまで裏切られ、膝をつくアイリスに掛けられるイライザの言葉。この世に神はいないとアイリスは確信した。

アイリスはよろよろと立ち上がり、エリムを見る。彼は少し心配そうにアイリスを見ていた。


「エリム……少しの間留守にするけど、いい子にして待ってるのよ?この屋敷にいればマリアもいるし、プラネもいる。ミアは……まぁどうでもいいか。だから何も心配しなくて大丈夫よ」


アイリスはエリムに笑いかける。その笑顔はエリムをたちまち虜にした。

彼女と離れるなんて嫌だけれど……我慢するしかないのだ。


「はい。僕、アイリス様のお帰りを待ってます!」

「帰ったら、イチャイチャしましょうね!それまで、誰ともイチャイチャしちゃだめよ!」

「はい!」


二人は笑い合うと、抱擁を交わした。そしてお互いの体温を忘れないとばかりに強く、そして優しく抱き締める。

そして名残惜しそうに身体を離すと、ゆっくりとエリム達に背を向ける。


「三人とも!エリムを頼んだわよ!」


その後ろ姿はとても凛々しく、そして美しく見えた。

これからアイリスは戦場に向かうのだ。ならば、自分もいつまでもウジウジしていないで彼女を信じよう。

そして、帰ってきた彼女を笑顔で迎え入れるのだ。


「はい!アイリス様もご武運を!」


エリムの声に応えるように手を振って応えると、彼女は門の方へと歩いていく。


「御屋形様、ご安心を。私たちがいる限りエリム様には誰にも手出しはさせません」

「うむ。私も微力ながら姉上の為に尽くそう」

「私もがんばります!」


三人もまた、これから戦場に向かうアイリスを激励した。

それをアイリスは背で受けながら、門へと歩いていく。


───頼んだわよ、三人とも。


彼女たちだからこそアイリスは大切なエリムを信頼して預けられるのだ。彼女たちが自分を支えてくれる限り、自分は戦える。


「別れは済んだか?では行くとするか」

「えぇ」


アイリスはそう呟くと、門を潜り抜けた。これから戦場となるだろう場所を目指して。


エリムと三人は凛々しくも勇ましいイライザとアイリスの背にいつまでも熱い眼差しを送っていたのであった。






















「行ったか?」

「えぇ、もう姿は見えません」

「ようやく行きましたかぁ!」


二人が乗りこんだ馬車が見えなくなった途端、マリアとプラネ、そしてミアは今までの雰囲気から一転、何かから解き放たれたような雰囲気を漂わせていた。

その姿にエリムはきょとんと三人を見るも彼女達は変わらず話し続ける。


「あー、肩凝った」

「そうですね。演技とはいえあの喋り方は疲れました」

「アイリス様がいなくなった途端、この変わりよう……流石です!プラネ様!」


三人はそう言って思い思いに身体を伸ばすと、先程までの凛々しい雰囲気など微塵も感じさせないくらいだらけ始めた。

そして次の瞬間、エリムの身体に三人の手が伸びる。


「ひゃ!?♡♡♡」


突然の出来事に驚くエリムを無視して、三人は彼をもみくちゃにするように撫で回した。


「ようやく邪魔者……あ、いや姉上がいなくなったな。さぁ王子、このプラネと一緒にお留守番をいたしましょう」

「エリムくん、もう邪魔者……あ、いや御屋形様は暫くいないのでこれからは四人で楽しいことをして彼女の帰りを待ちましょう♡」

「エリム様!あの邪魔者……あ、いやアイリス殿下はいらっしゃらない間、不肖このミアがエリム様の下のお世話をさせていただきます!」


三人共が一斉にエリムへ詰め寄る。

エリムは彼女達のあまりの変わり様にたじろいだが、腕に感じるおっぱいの感触と、いい匂いが彼の鼻と本能を刺激して……。


「あ……あの、僕……」


彼女達から溢れ出る色香に、彼は思わずその身を彼女達に委ねる事にした。

そうだ、これはお留守番なんだ。決してアイリス様を無下にしたり裏切っているわけではない。

そう、お留守番……。


そう自分に言い聞かせ、彼は再び彼女たちの感触を全力で味わうのだった。

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