35.「……アイリス様は頭が良すぎてご自身でも自分の能力を忘れてしまっているのですよ。ほら、ミア様がこのような状態になっているのが何よりの証拠ではないですか」

エリムによってミアが快楽の虜になったのを確認したマリア。

アヘ顔を晒しているミアを見るとうんうんと頷き、横たわる彼女を担ぐとそのままエリムに向かって微笑んだ。


「ありがとうございます、エリムくん。これで彼女は私達の……いえ、貴方の言いなり奴隷になりました」


えぇ……?とエリムはマリアの言葉に困惑を示す。


「い、言いなり奴隷って……」

「彼女は今、快楽による幸福絶頂で意識はありませんが……【言いなり】です。彼女の表情から分かるでしょう?」


確かにミアは白目を剥き、舌をだらしなく突き出しているアヘ顔になっているが、これで言いなりなのかなぁ?とエリムは思った。


「これで準備は整いましたね。さぁ、私はこの便器ちゃんをセットアップしますので、エリムくんも準備をお願いいたします」

「え……準備ですか?」

「えぇ、準備です。これからもう一人、エリムくんの従順な奴隷になる女性を作るための準備……♡」


マリアはそう言い、淫靡に笑った。その笑みはとても妖艶で、そしてとても愉しそうだった。




♢   ♢   ♢




───そして時は戻り、アイリスとプラネがミアの凄惨な(アヘ顔)姿を見て驚愕していた時。


「え?これなに?」


アイリスの間の抜けた声が部屋に響き渡る。だってそうだろう、アイリスはミアがボロボロになっている姿を想像していたのだが、現実は違う。

ミアの意識は朦朧としており、どこか幸せそうな表情でアヘ顔を晒しているではないか。

これではまるでイチャラブ子作りをしてきたかのようで、全然凄惨でもなんでもない。むしろ全世界の女が羨むような幸せそうな姿だ。


「ミ、ミア……?」


プラネもまた、ミアの凄惨たる姿(アヘ顔)を見て、困惑の表情を浮かべている。

なにを……なにをされたんだ?いや、なにをしていたんだ?ミアは。

これではまるで男と交尾してきましたとでも言っているようなものだ。


「こ、これは一体……」


プラネは困惑しながらアイリスの方へ視線を向ける。何故か姉も困惑しているのが気になるところではあるが……

するといつの間にかいたのか、マリアが彼女は微笑みながら、困惑するノーヴァ姉妹を見て口を開く。


「プラネ様。ミア様は、最早我々の従順な僕へとなりました。彼女は快く、アイリス様に全てを委ねてくれました」

「ミアが……従順な奴隷に……?一体、どういうことだ?」


マリアの言葉の意味がイマイチ理解出来ず、プラネは彼女を問い詰める。しかしマリアは微笑みを崩さずに言葉を続けた。


「言葉の通りですよ、プラネ様♡ミア様はもう快楽のためならなんでもするメス奴隷に堕ちたのです♡」

「お、お前は何を言っているんだ?」


プラネは理解出来なかった。メス奴隷?こいつは一体何を言っているんだ……?というか、ミアはどうしてアヘ顔になっているんだ? プラネが混乱していると、マリアが彼女の元へやって来て、ゆっくりと話し始める。


「実は秘密にしてきましたが……アイリス様には人を洗脳する特殊な能力があるのです。これはノーヴァの血筋とは関係ない、アイリス様だけが持ちうる権能……!」


マリアの言葉にプラネは後頭部をガツンと殴られたような衝撃を覚える。

あの脳味噌まで筋肉で構成されているアイリスが、実は洗脳能力を持っていた?そんなことあるはずがない。そんな能力、都合が良すぎるし、そんなものがこの世に存在するはずがない。

思わずプラネは姉アイリスを見る。するとアイリスは身体を震わせながら、口を開いた。


「マジで!?」


え?マジで?洗脳能力を使えるのではなかったのか?なんで本人が一番驚いているんだ?

プラネはそう訝しむが、マリアは笑みを絶やさずに言葉を続ける。


「……アイリス様は頭が良すぎてご自身でも自分の能力を忘れてしまっているのですよ。ほら、ミア様がこのような状態になっているのが何よりの証拠ではないですか」


笑顔でそう口を開くマリアだったが、その内心はこの馬鹿には話を合わせろと言うのは無理があったか……と自らの主の壮絶な頭の悪さを嘆いていた。

しかしアイリスはその言葉をすんなり受け入れ、納得する。


「わ、私にそんな能力があったとは……!これなら私の野望に一歩……いや、百歩は進む……!」


しかも信じてるじゃねぇか。嘘だよ、プラネを騙すための方便だよ。アホなのかお前は……。

マリアはそう思ったが今この場で口にする事は出来なかった。


「し、しかしミアを一体どうやって……というか彼女の身体に付着している液体は一体?」


やはりプラネはアイリス程馬鹿ではないらしい。それに対してマリアは適当に答えておいた。


「あぁ、アレですか?ミア様が快楽と幸福絶頂のあまりに分泌した液体ですよ」

「えぇ……?」


プラネはそう言いつつも、目の前の状況に脳が追いつけずに困惑しているようだ。


「くっくくく……さぁプラネ、私の洗脳攻撃を食らわせてやるわ。これでアンタは私に絶対服従よ……!」


アイリスはそう言い、プラネを洗脳するために彼女の眼前に立ち塞がった。

マジで信じてるのかコイツは……と呆れるマリアだったが、すかさずアイリスとプラネの間に立ちふさがる。


「お屋形様。貴女の洗脳能力は貴女の見ていないところでひっそりと行われます。なのでお屋形様はさっさとこの部屋から出て行ってくださいまし」

「……え?そ、そうなの?」


流石に訝しむアイリスであったが、マリアの真剣な目を見て、ここは従っておいたほうが良いと判断し、部屋から出ることにした。


「わかったわ……じゃあ私は行くから!しっかり洗脳されるかどうか見ておくのよ!?」

「もちろんですとも」


馬鹿だなぁ。この人は本当に馬鹿だなぁ。マリアはそう思うが、思っただけだった。

そしてアイリスが部屋から去ったことを確認した後、プラネを見下ろす。


「……そんな下らない嘘まで吐いて、何故姉上をこの部屋から追い出した?」


やはり彼女は手ごわい。というか普通の人間であればこんな下らない嘘に騙される訳がない。

アイリスとは違う常識と知能を持つプラネにマリアは感嘆の息を吐きながらも、何事もなかったかのように話を始めた。


「ふふっ……。プラネ様、ご安心ください。嘘ではありませんよ、貴方が従順になるという事実はね」

「なに?」


プラネは訝しむが、彼女は気にせずに続ける。


「貴方はこれから、ミア様のようになります。ミア様と同じように、奴隷となって私達と運命を共にするのです」

「なにを言って……」


不意に。マリアは指をパチンと鳴らした。

それと同時に彼女は拘束されているプラネを持ち上げ、ミアがいるベッドへとプラネを放り投げる。


「ぐっ……!?」


ベッドに寝かされたプラネは困惑の声を上げた。

な、なにをする気だ。と声を上げようとしたプラネだったが、マリアは何も言わずにプラネとミアに背を向けると意味深な笑みを浮かべ、そのまま無言で立ち去って行く。


「お、おい待て!な、何故出て……!」


プラネがそう言ってもマリアは止まる気配はない。ただ彼女は振り返らずに部屋を後にしたのだった。

そうして部屋は静寂に包まれ、プラネは訳も分からず困惑する。


「あへっ……♡あへへっ……♡♡」


プラネの横ではミアが幸せそうなアヘ顔を晒しながら、だらしない笑みを浮かべている。

それを見る度にプラネの心に言いようのない恐怖と不安が襲い掛かってくる。


しかしミアはそんなプラネの胸中など知らずに嬌声を上げ続けるばかりだ。

───ミアは一体何をされたのだ。まさか妙な草の煙でも吸わされたのだろうか?

それとも、何か脳に直接刺激を与えるような薬を飲まされたのだろうか? とにかくミアは正気ではない。もし、もしこのまま彼女が元に戻らなかったら……? そんな不安と恐怖がプラネを襲う。


その時であった。


ガチャリ、と部屋の扉が開き、そこから何者かが入ってきた。


「貴方は……」


プラネは入ってきた人物を見て驚愕する。入ってきたのは男。それも、見覚えのある男だったからだ。


「プラネ様……」


金色に光る髪に、煌めく碧眼。見る者の心を奪う絶世の美男子。

そう、彼はプラネが中庭で合ったエルフの王族、エリムであった。


「エ、エリム王子?何故ここに……っ!?!?」


そうプラネが言い掛けた時である。プラネは彼が……エルフの王族たるエリムが一糸纏わぬ状態であることに気付いた。

そして、彼は後ろ手に扉を閉めると……ゆっくりとプラネの元へと近付いて来るではないか。


「な、何故裸で!?……っ!?」


そうプラネは驚きの声を上げたが、その時である。

彼女の視界を突如、エリムの顔が覆う。プラネはエリムに覆い被さられたのだ。


「何をして……!?」


次の瞬間。プラネは唇を奪われた。、そして口の中へと舌を入れられてしまう。

突然のことに驚きを隠せないプラネであったが、彼女は拘束されている状態だ。抵抗は出来ない。


「んっ……!んんんっ……!!」


プラネはくぐもった声を上げるが、エリムは構わずに彼女の口内を舌で犯し尽くす。

それと同時にプラネの鼻腔にかぐわしいオスの臭いが流れ込んできた。


「んふっ……!?♡♡!んんっ……!?」


その匂いは女の正気を飛ばすような、濃厚で淫猥な匂いだ。それも女なら一発で魅了し、支配してしまう程のオスのフェロモン臭だ。

それを至近距離で嗅いでしまった彼女は瞬く間に理性が蕩けていく感覚に襲われた。


「(な……なんだ!?これは一体なにが起きているんだ!?)」


何故貴き血のエルフが自分に接吻を!?しかも、こんなに濃厚に! プラネは訳も分からないと言った表情で必死に思考を巡らせるが、考えはまとまらない。

その間にもエリムはプラネの口内を蹂躙し続け、確実に彼女の思考力を奪い取っていく。


「(なんで……!?)」


プラネが快楽と困惑で目を白黒させている間に、エリムはゆっくりと唇を離した。

銀色の糸が二人の間で伸び、そして消える。二人の唇は唾液で濡れていた。


「エリム王子……!貴方は一体なにを……!」


とろんとした瞳で自分を見つめながらもそう言うプラネに対して、エリムは淡々と言葉を紡ぎ始めた。


「プラネ様、ごめんね」


申し訳なさそうに、しかしどこか妖艶な笑みを浮かべながら呟くエリム。

彼の口から紡がれる言葉の端々に色香を感じ、プラネは自らの心と身体が熱くなるのを感じた。


「そ、それは一体どういう意味で……?」


何故彼が謝るのか。何故彼はこんな事をするのか。プラネには全く理解出来なかった。しかしエリムは構わず、言葉を続ける。


「ミアさんの事をこんな風にしてしまったのは、僕なんです」


───なんだって?

プラネは驚愕で目を見開く。ミアをこんな状態にした?プラネは混乱する。しかしそんな混乱した思考も、直ぐに快楽と幸福絶頂によって吹き飛ばされてしまった。


「んっ……!?あっ……あぁっ♡!」


プラネの頰が染まり、彼女の口から嬌声が上がる。エリムが彼女の股関に触れたからだ。

彼の細く長い指がクニクニと股関を擦り上げる度に身体が快感で震える。


「あっ……あぁっ……!やめっ……♡」

「プラネ様……」


エリムはそう言うと、彼女の顔に自らの顔を近付ける。互いの鼻が触れ合う程の距離だ。彼の碧眼がプラネを射抜くように見つめている。彼女の心臓がドクンと高鳴った。

そんな彼女は必死に抵抗するが、拘束されている身では抵抗など無意味に等しい。むしろそんな仕草が、エリムにとってはとても可愛く愛おしく思えたようで……彼の指の動きはより一層激しさを増していった。


「し、正気に戻るのです、エリム王子!こんな事をしては森林国に帰れなく……ひゃん!?♡♡♡」


プラネの言葉を遮るように、エリムは彼女の耳を甘噛みした。そしてそのまま耳の穴に舌を挿し入れ、舐め回す。

ぴちゃりという音が脳に直接響き渡り、プラネは身体を震わせる。今までに感じた事のない快感だ。


「んひっ!?♡あぁああぁあっ♡♡だ、だめっ……耳は……♡♡♡」


エリムがプラネの耳を舐める度に彼女の身体が快楽に震える。腰が抜け、全身に力が入らない。

なんだ、この感覚は。耳を舐められただけで、なんでこんなにも気持ち良いのだ。


「あっ♡あっ♡だ、だめっ……やめてください……♡♡♡!」


プラネは必死に声を上げ続けるが、エリムは全く聞く耳を持たない。それどころか彼は更に彼女の耳を蹂躙していくではないか。

もう駄目だ。耐えられない。これ以上は本当に頭がおかしくなってしまう。そう思っても身体は言う事を聞かず、プラネの身体は更なる快感を求めてしまう。

もっと、もっとして欲しいと、彼女の本能が告げている。


「あぁっ……!だめっ……駄目です……」


しかしそんなプラネの思いとは裏腹にエリムはゆっくりと顔を離すと、今度は自らの唇を彼女の唇へと近づける。

それはまるで恋人にするかのような、優しいキスだった。


「んっ……」


唇が触れ合うだけの軽い口付けだったが、プラネにとっては十分すぎる程の快楽だったようで、彼女はビクンッと身体を振るわせる。そしてそのままエリムは舌を出し、ゆっくりとプラネの口内へと侵入してきた。


「あっ……あぁっ……んんっ……」


エリムの舌がプラネの舌と絡み合う。それと同時に、彼は彼女の歯茎や上顎を丁寧に舐め回す。今まで経験したことのない刺激にプラネは悶えるしかなかった。

そしてそのまましばらくの間、二人は舌を絡め合ったまま抱き合い続ける。

どれくらいの時間が経過しただろうか?数十秒か、あるいは数分かもしれない。時間の感覚が分からなくなる程の濃厚で甘い接吻だった。

やがて名残惜しそうに互いに唇を離し、二人は見つめ合う。


「はぁっ……はぁっ……」


息も絶え絶えにプラネは肩を上下させ、呼吸を整える。エリムはそんな彼女の顔を愛しそうに見つめると、静かにプラネの拘束を解いた。


「え?」


突然拘束を解かれた彼女は困惑する。一体どういうつもりなのだろうか? しかしエリムは相変わらずの微笑みを浮かべながら、口を開いた。


「プラネ様。貴女と繋がる為には、こんな縄は邪魔だと思いませんか?」

「繫がる……?」


プラネは訳も分からぬと言った表情で首を傾げる。しかしそんな時でも彼女の心臓の鼓動は激しさを増すばかりであった。


「(なんだ、この気持ちは……?)」


プラネの胸の内に芽生えた感情。それは不思議な事に、とても心地良いものだった。そして同時に胸が高鳴り、身体が熱くなるような感覚を覚える。

これは一体何なのだろうか?



「プラネ様……今日だけは、今だけは、何も考えずに気持ち良くなってください……ね?」


そうして、プラネは身も心も堕ちていくのであった──

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