16.「私は見てましたよ。お館様がアヘ顔晒してしょわしょわしてたのを。それはもう気持ち良さそうに」

「あっあっ……♡♡♡♡」



艷やかしい声を出しながらビクンビクンと震えるアイリス。それを見てエリムは目を丸くして立ち尽くしていた。

何が起こっているのだろうか?もしや持病の病気かなんかか?とエリムが思っていると、いつの間にいたのかマリアがアイリスの身体を支えるようにして後ろから抱き上げる。


「お屋形様、彼を見ただけで無様にイかないでください。発情期のメスブタですらもっと上手にやりますよ」


マリアが辛辣な言葉をアイリスに投げかける。しかしエリムにはその言葉は聞こえていなかった。

何故なら彼は突然現れたマリアの裸体に釘付けだったからだ。

透き通るような白い肌に整った美しい顔立ち。そして柔らかそうな胸の膨らみとその先にある桜色の乳首、そしてその下をたどれば金色の茂みが見える。

アイリスに勝るとも劣らない完璧なスタイルを持つマリアの裸を見て、エリムは顔を赤らめる。


「エリム様、申し訳ございません。この処女膜がビンビンに張ってる女にはキツく申し上げ……て……おく……」


マリアの語尾が途切れたのはエリムの身体を見たからだ。

彼女の頬が紅潮していく。同時に彼女も自らの腹の奥が熱く疼き始めるのを感じた。


「……」


ごくりと生唾を飲むと、トロンとした目つきでエリムを見つめた。

マリアの視線が自分の身体に向いているのを見て、エリムは恥ずかしくなると同時に、ぞくぞくと背筋が震えるような快感を感じていた。

一方で、マリアもまたエリムの雄の象徴が自分に向けられたものだということを感じ取り、胸がきゅんきゅんと締め付けられるのを感じた。


体温を上げた身体自らに発情してくれているという証左……。

イチャラブが極めて少ないこの過酷な世界において、嫌がらない男というのはまさに女の夢だ。

マリアはエリムを見て、めちゃくちゃにされる自分の姿を鮮明にイメージしてしまった。

それはマリアにとって人生最大の喜びであり、幸福でもあった。


「あ、イきます」

「え?」


処女膜がビンビンに張ってる女2号こと、マリアは無様に絶頂した。

表情こそ無表情を保っているが、足腰をガクガクを震えさせる。

なにかの余韻に浸るマリアを見て、エリムはただ呆然とするしかなかった。


そうしてマリアはへにゃりとその場に座り込み、アイリスも床に寝そべって息を整えていた。

絶頂の余韻に浸る二人であったが、暫くして復活したアイリスが上半身を起こし、呟くように言った。


「こ、これは……公爵家に伝わる入浴前の儀式です……」


流石にそれは無理がないか?と彼女達の痴態を見ながら、エリムはそう思ったのだった。




♢   ♢   ♢



ちゃぽん、と水面が波打つ。

大浴槽になみなみと張ったお湯に浸かりながらアイリスは大きく背伸びをした。


「あぁ~、イッた後のお風呂は最高ね!」


何やらよく分からない事を口走るアイリスに対し、エリムは顔を真っ赤にしながら湯に浸かる。

何故なら彼はアイリスとマリアの二人に挟まれるような形で風呂に入っているからだ。

絶世の美女二人に密着される形で浴槽に浸かる。それはまさに最高のひと時だったが、女性経験の少ないエリムにとって、このシチュエーションは刺激が強すぎるものだった。


それに加え、二人は先程から湯の中のエリムの身体をサワサワと触ってくるのだ。

アイリスの柔らかい手のひらがエリムの腕を撫でるように触れ、マリアの指がエリムの太ももを揉むように滑る。

その度にエリムは身体を震わせて反応してしまうのだが、二人はそれが面白いのかますます身体を密着させてくるのだ。


エリムと同じく、異性に全く免疫のないアイリスとマリア。

しかしこの世界の女性の本能として、ヤレそうな男を見るとチャンスを逃してはならないとプログラムされているため、二人の身体はエリムに必死にアピールしていた。

普段は拒否されるのが怖くて行動に移せないチキンなアイリスだが、相手が拒否しないと分かると途端に積極的になるのである。


「あ、マリア。アンタはもう上がっていいわよ。奴隷とは一緒にお風呂に入るしきたりはあるけど、使用人と一緒に入るしきたりなんてないし」

「なにを仰るのですかお屋形様。発情したケダモノと二人きりになんてしたら天使のようなエリム様の身体が汚されてしまいます」

「は?私は発情なんてしてないし。まだイッてもないし。これからだし」

「私は見てましたよ。お屋形様がアヘ顔晒してしょわしょわしてたのを。それはもう気持ち良さそうに」

「いや流石にそこまで無様晒してないから!つーかアンタだってイッてたでしょ!」

「私はイってません」

「嘘つくんじゃないわよ!アヘアヘ言いながら腰振ってた癖に!」


などと低俗な言い争いをしている二人の会話は、エリムにはほとんど聞こえていなかった。

何故なら二人はエリムの身体に手を這わせるのをやめてはいなかったからである……。


「んっ……♡♡」


そんな二人のいい争いは唐突に終わりを告げた。エリムの艷やかしい声が彼女達の耳に届いたからだ。

耳にまで処女膜が張っているようなアイリスとマリアだが、エリムの声だけはやけに敏感に感じ取ってしまうのだ。

二人は言い争いをピタリとやめて、エリムの方を向き直る。


「そ、そろそろ身体を洗いにいきましょうか?」

「そ、そうですね。うん。それがよろしいかと思われます」


そわそわとしながらそう言う二人はエリムの返事を待たずに湯船でザッと立ち上がる。

勿論、二人共エリムの手をしっかりと握りしめて身体を密着させている。

二人の柔肌が身体にむにゅっと押し付けられる。エリムは更に顔を真っ赤にして俯いた。


「あ、あのぅ。当たってるんです……が……」

「え?なにが?」

「その……胸が……」


エリムの両腕には彼女達の胸の感触が、胸からお腹にかけては彼女達の柔らかくも引き締まったお腹が接触している。

アイリスとマリアはお互いに顔を見合わせる。同時に再びエリムに向き直り、ニンマリと笑った。


「ふひひ……♡♡」

「んふふ……♡♡」


二人は興奮したような笑い声を上げると、身体を更に密着させてエリムの身体に絡み付いてくる。

柔らかい感触に挟まれて、エリムは目を回した。


「これから身体を洗うのですよ。これくらいで恥ずかしがってちゃダメよ」

「そうですそうです。むしろ普通です。そう、公爵家では普通なのです」


こういう時だけは絶妙なチームプレーを見せるアイリスとマリア。二人にそう言われては、エリムにもう拒否権はない。

それに先程から身体が熱を持っていくのを感じていた。これはお湯に長く浸かっていたからではない。

エリムもまた、彼女達と同じように発情し始めていたのである。


そうして、三人は洗い場へと向かうのだった。




♢   ♢   ♢




「そ、それではお身体を洗わせていただきます、アイリス様」

「えぇ、よろしくね」


エリムはアイリスの後ろに立つと、スポンジにボディーソープを垂らそうとするが、アイリスの一言によってそれは制止させられる。


「エリム。私の繊細でか弱い高貴な肌は荒れやすいの。スポンジなんかで擦ったら肌荒れを起こしてしまうわ」

「そうなのですか?」

「えぇそうよ。だからあなたのその手で直接洗ってちょうだい」


実際には剣で斬りつけられても傷一つ負わない人間とは思えぬ強靭さを誇るアイリスの肌なのだが、彼女は適当な理由を付けてエリムの行動を誘導する。

見た目だけは雪のようにして真っ白で可憐な肌なのでエリムはまんまと騙されてしまった。

だが、彼もそれを嫌だとは思っておらずむしろ望んでいたことだった。


「……」


ゴクリ、とエリムの喉が鳴る。自分の前に在るのは女神のような人物の美しい背中……。

痩せすぎず。太り過ぎず。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる完璧なスタイル。

彼女の背中に見惚れていると、後ろからマリアがエリムの耳元にそっと囁いた。


「お屋形様のお美しいお身体を洗う絶好のチャンスですよ。さぁ、エリム様」


マリアの囁きでハッと我に帰ったエリムは、スポンジを床に置くと、恐る恐る両手をアイリスの首元から肩にかけて沿わせるようにして触れていく。


「んっ……♡♡」


ピクッと反応するアイリスを見て、エリムはなんだか悪いことをしているような気分になった。

そして、そのままゆっくりと手を下に降ろしていく。背骨のラインをなぞるように上から下に撫で下ろすと、今度は腕を持ち上げさせて脇の下まで洗う。



「じ、上手ですよ……エリム……♡♡」


脇という敏感な場所を洗われ、アイリスはビクビクと身体を震わして反応を示す。

彼女の脇はすべすべで、今まで触れてきたどんなものよりも柔らかく滑らかだった。


「んっ……♡♡あっ♡♡」


アイリスの恍惚とした声を聞いて、エリムはよりいっそう興奮し、今度は両手を使って彼女の両腕を洗い始めた。

二の腕から指先に向かってゆっくり擦り上げるように洗っていく。そして指の間までしっかりと洗う。

その度にアイリスは色っぽい声を出しながら身体をビクつかせていた。


「あ……♡♡」


時折漏れる艷やかな嬌声がエリムの心を昂らせる。彼は無我夢中で彼女の身体を撫でるようにして洗っていった。

そして、アイリスの背中とその周囲を洗い終わった後……不意に、アイリスがくるんと身体を回転させた。


「え、えっ?」


突然振り返ったアイリスに驚くエリム。そんなエリムに対し、彼女は悪戯っぽく笑いかけると言った。


「背中の次は……前を洗って貰おうかしら」


至近距離で見るアイリスの可愛らしい笑顔と、柔らかそうな身体。そしてぷるっとした唇。

最早冷静さを欠いているエリムはボーッとした頭のまま、その美しい身体に見惚れていた。


「ま、まずはお願いね……♡♡」

「あ……あ……♡♡」


脳の回路が焼き切れたように思考が上手く働かない……しかし、本能が彼女に従えと命令してくる。

エリムは操られるように彼女に触れると、ゆっくりと丁寧に揉み始めた。


「んっ♡♡あっ……あんっ♡♡」


アイリスが甘い声を上げる度、エリムの鼓動は早くなる。そして段々と激しく揉みしだいていった。

可愛らしい反応をするアイリスに、エリムは興奮を抑えきれなくなっていった。


 「(もっと……もっと触れ合いたい……♡♡)」


エリムの柔らかく、そして小さい手が触れる度、アイリスは気持ち良さそうに反応を示す。


「ひぅっ!!??♡♡♡♡」


その瞬間、アイリスの身体がビクンと跳ねた。脳髄にまで響くような快感。

アイリスの反応を見たエリムは、しまった!と思い慌てて手を引こうとする。

しかしアイリスはそんなエリムの手を自らの身体に押し付けると、潤んだ瞳で懇願した。


「やめないで……続けて……♡♡」

「……!」


エリムはゴクリと喉を鳴らすと、そのまま優しく身体を洗う……。


「あっ♡♡んぅっ♡♡はぁぁっ♡♡」


エリムの指が動く度に身体を跳ねさせながら甘い声で鳴くアイリス。そんな可愛らしい恋人の姿を見て、我慢などできるはずがない。


「はぅっ♡♡やっ♡♡んんっ♡♡」

「(すごく……綺麗……)」


エリムはアイリスの蕩けた顔を見ながらそう感じた。普段は凛々しくも可愛らしい彼女の顔が、今は快楽に染まり切なくも色っぽい表情となっている。

そんな彼女の姿を見て、エリムはますます興奮を昂らせた。


「エ、エリム……もうお胸はいいわ……ありがとう……」


はぁはぁと息を吐くアイリス。彼女はゆっくりと身体を離すと、満足気に微笑んだのであった。




♢   ♢   ♢




──そうして暫くして……。

アイリスは幾度となく身体をビクンビクンと震わせ、そして息も絶え絶えで口を開く……。


「はぁ……♡♡♡♡はぁ……♡♡♡あひがとぉ……きもひよかっらぁ……♡♡♡♡」


そう言ってカクリとアイリスは意識を失った。

──しまった!やりすぎた!

まずい!とエリムは慌ててアイリスを介抱しようと彼女の身体を抱き上げようとするが……その直前でエリムの後ろから、艶やかな声がかけられた。


「お疲れ様でした、エリム様」


その声にエリムが振り向くとそこにはにこりと微笑むマリアの姿があった。

普段と同じような穏やかな笑顔ではあるが、目は笑っていない。


「え……あの……」


何か言わなければと思ったが、上手く言葉が出てこない。

もしかして、調子に乗ってアイリスを気絶させてしまった事を怒っているのだろうか……。

エリムはしゅんと項垂れるように顔を伏せた。そんなエリムの姿を見て、マリアはクスリと笑った。


「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ、エリム様」


冷や汗をかきながら固まっていると、マリアはそっと耳元に唇を寄せてきた。


「ちゃんとお仕事をこなしてくださったのですから責める事など致しません」


ねっとりとした声が鼓膜に響き渡り、思わず背筋がゾクリとした。


──仕事?


それは一体、何の事だろうか。エリムがきょとんと疑問符を浮かべていると、不意にマリアは床に寝転がっていたアイリスを足蹴にしてまるでゴミを見るような目で見下ろした。


「この処女を拗らせた淫乱メスブタ女のお世話……さぞや大変でしょう……」

「あ、あの……マリア様?何を……?」


困惑しながら問いかけても、マリアは何も答えない。ただ冷たい目をしてアイリスを見下ろしているだけだ。

そして徐に足を上げると、勢いをつけてアイリスを蹴飛ばし、遠くへと転がしてしまった。


「マリア様!?」


エリムは驚きのあまり声を上げるが、アイリスはゴロゴロと転がってそのまま浴場の壁に激突する。

そしてそのまま大股を広げ無様な格好のまま意識を失ってしまった。

アヘ顔を晒し、ガニ股で痙攣している姿はとても高貴な身分の女性とは思えず、エリムは困惑する。


「一体何を……?」


恐る恐る尋ねると、彼女はニコリと微笑んで答えた。


「エリム様……。貴方のお役目はアイリス様の滾る欲望を解消させる事……」


マリアのしなやかな腕がエリムの首に絡みつき、ゆっくりと顔を近づける。


「そして……私の役目はそんな貴方を癒す事……」


耳元で囁くように言いながら、マリアの手はゆっくりとエリムの身体に伸びていく。


「さぁ……エリム様……」


艶っぽい声でそう言うと、マリアの手がエリムに触れた。思わず腰が引けそうになるが彼女に後ろから抱きつかれているせいで逃げる事ができない。

そして、マリアはエリムの耳を舐めながら甘く蕩けるような声色で囁いた。


「今この時だけは、全てを忘れましょう……」


その瞬間、エリムの頭は真っ白になった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る