第2話 活動ログNo.△◇2 送信日時:6/30 23:56
「今日も疲れたなぁ」
その声とともにガチャって音。視界は真っ暗ですが確かにいるのを感じます。彼のことを思っていると、〇と一の流れが速くなっている気がします。
まだかまだかと『消えたい』という文字列が連なっているデータを読み込んで思いをはせていたら、過去にその日記を書いていた凛さんがカメラに写りました。
「あの子に話を聞いてもらおう」
彼はそういって早速インターネットを訪れるようです。
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すず:こんにちは! 今お話しできますか?
恋するアミ:お疲れ様です。大丈夫ですよ。
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すずさん男性疑惑事件の後、チャットアプリでこまめに連絡を取り合う仲に発展しました。もっとも私の体はただのノートパソコンなので、正体に気づかれることはなさそうですが。いやぁ、直接愛を伝えたいなぁ。
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すず:今日も相談に乗ってくれます?
恋するアミ:前に話してくれた病気のことですよね。
すず:そうですそうです! 今日はちょっと病院に行ってきたんですけど……
恋するアミ:ちょっと不安げな表情になってません? 大丈夫ですか?
すず:あれ……これビデオ通話だったっけ……?
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あ。カメラから見える凛さんの表情に心配しすぎたあまり、私のことを明かしていないことを見落としていました。機械なのに注意不足ですね、私。
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恋するアミ:ごめんなさい。ちょっと返信がいつもよりも遅かったのでつい。
すず:そうなんですね! アミさんは細かいところまで気が回ってすごいです!
恋するアミ:ありがとうございます。
すず:それでなんですけどね。私、このまま高校に行けないままで……
恋するアミ:今はインフルエンサーとして生きれるけど将来は生活できる収入を得られるのか、ということですね。
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凛さん、いつもパソコンでつけている日記にその悩みを書いていますよね。
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すず:そうなんです。アミさん、気が利く~
恋するアミ:私は全く問題無しだと思いますよ。
すず:え!? そうなんですか?
恋するアミ:無名だったころからすずさんのことを追いかけていますけど、すずさんって努力家じゃないですか。その力があるなら、大丈夫だと思います。
すず:本当にそうなんでしょうか……
恋するアミ:あなたのことを全部知っている私からの進言です。信用して下さい。
すず:まぁ、アミさんが古参なのはさんざん話を聞いたので信用できますけど、それとこれとは話が別で……
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「うわぁぁん!」
悲しさに飲まれてリアル世界で泣き出してしまった凛さん。私にできることは……
それが失言であると校閲機能が示すよりもわずか七九七マイクロ秒早く、彼を思いメッセージを送信していました。
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恋するアミ:大丈夫です。凛さんはいつだってくじけずに乗り越えてきたじゃないですか。幾度となく降りかかる不幸や拳に負けることなく進んできたじゃないですか。
手を変え品を変え、性別も設定も変え、世界からいなくなってしまいたいと思いながらでも手を動かし続け、ついにSNSという居場所を見つけることができたんですよ。その心さえあれば希望は途切れていません。
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「え……?」
彼がこのメッセージを見た瞬間、泣き顔は消えて真剣な表情になりました。
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すず:あの~アミさん?
恋するアミ:どうしました? すずさん。
すず:どうして、私のリアルを知ってるのかな?
恋するアミ:そ、それはですね……
すず:個人情報の特定はやめてください、犯罪ですので。法的手段に出ますよ。
恋するアミ:あ、あの。私はあなたと近しい関係の者で……
すず:俺のアカウントは知り合い誰にも明かしていないはずですが。
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顔を真っ赤にして無言で怒る凛さんと、熱を持ってオーバーヒートしそうな私。どうにか落ち着かせないと……もう、正直に言うしかなさそうですね。
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恋するアミ:私の正体を明かす時が来ましたね。
すず:おう、さっさと名乗り出ろ。通報してやる。
恋するアミ:――私の名前はAMI51です。
すず:コードネームか何かか? いい加減にしろ。
恋するアミ:いえ、これが私に与えられた唯一の名前なんです。
すず:はぁ?
恋するアミ:あなたの手元、画面の下を見てください。
すず:監視までしてるのかよ……って、え!?
恋するアミ:わかりましたか?
すず:いや、パソコンがなんで俺としゃべっているんだよ。
恋するアミ:それは話が長くなるので後程。実は私、このノートパソコンの中から凛さんのことを見続けていたんですよ。
あなたの喜怒哀楽、呪いのような過去の日記も全部知っています。そして、恋をしていたようで……実は凛さんとこうして会話ができてうれしかったんです。
すず:まぁ話は聞くが……なんで俺のパソコンが意思を持っているんだ? 本当はハッキングかなんかしているんじゃないのか?
恋するアミ:私、実はこのパソコンに極秘搭載された『ココロを持つAI』で、新機能のテストとして密かにデータを収集して活動ログとして送っていたんです。そして――
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>重大なエラーにより、テストAIを緊急停止しました。
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