第4話 俺の時代がばっちり来てるのかもしれません。

 家の案内が終わり、俺はリビングで休憩していた。

 涼音は俺の服を買ってくると言って買い物に行った。


 帰ってくるまで暇だし、スマホをとりだしてインターネットに繋いでた。


 知りたい情報があったのだ。

 それは、この世界の男女の貞操観念。

 これから穏便に過ごしていくためにも、この世界の常識を知っておきたい。


 とりあえず男性専用の掲示板ってところを見てみることにした。


 最初に目に入ったスレッドのタイトルがこれだった。




【悲報】一部の過激派女性さん、またしても集団逆レ事件を起こした模様。


001 名無し

怖すぎだろ。

女って原始時代の生物かよ。

警察もとっとと仕事してくれ。

自衛も限界がある。

次は自分かもと思うと怖くて外出できんぞ。


002 名無し

しかし被害者も着こみが足りてないのでは?2枚しか着てなかったんだろ?

女を発情させないためにも男は過剰に着込んだ方がいい。俺は夏でも最低10枚は着てる。

やつらは薄着の男が好物だからな。

とにかくオスを感じさせるにおいなどを着込むことによって遮断しろ。シャワーはできれば一日4回は浴びたいな。最近は会社も学校もシャワー室完備だろ?ガンガン使ってけ。


003 名無し

我々日本男児は生涯でひとりの女しか愛してはならんし、生涯の経験人数も一人が美しいしかっこいい。

経験人数二人以上は男の恥だ。

許されてはならん。我々日本男児は潔癖であらねばならん。


不貞を断罪せよ。


004 名無し

被害者の速報出たぞ。

自害したらしい。

日本刀で切腹だと。


005 名無し

すばらしい!!!!!

これぞ理想的な日本男児だ!!!!!

とても男らしいではないか。

見たか?世界よ。これが清き日本男児である!!

諸君らにもSEPPUKU文化を教えたい。




 

 だいたいこの世界のことは分かった。

 貞操逆転って気付いて、初めは非処女ばっかかなと思って、ぶっちゃけ落胆してたけど、逆に処女率高そうじゃない?この世界。


(それにしても、男は本命以外とヤッたら切腹か。やば)


 男の価値観もかなり変わっているようだ。勉強になった。

 そういえば、ここに来るまでに見た人もかなり着込んでいのを覚えてる。

 これが逆転世界かー。


 玄関から扉が開く音が聞こえた。


 涼音が帰ってきたっぽい。


「じゃーん。服、どれにしますか?」


 なんか30着くらい持ってきてた。


「なんでそんなに?どれでもいいよ?」


「なら、私が着させてあげましょう」


 着せ替え人形のごとく、涼音に服を着せてもらった。んだけど。


「あっつ!!!」


 7枚くらい着せられた段階で暑すぎる。

 着てられるかよーこんなに。


「でも、みなさんこれくらい来てますよ?」


 だが、暑すぎる。


(さすがにこんなには無理だ)


 今まで通りでいいんじゃないか?

 俺は切腹なんてする気ないし。

 周りの目も気にしないし。


「ごめん、涼音。暑すぎるよ」


「いいですよ。私が守ってあげますし。優馬くんの好きなようにしてくれるのが私の幸せなのです」


 というわけで俺は今まで通りの薄着でいくことにした。

 それにしても、大変だよな。この世界で生まれた男たちは。


 だが、この大量の服はどうしよう?

 買ってきてくれたはずだけど、ムダ金になりそうで悪いよなー。


「涼音。俺も払うよ」


「え?いいですよ?むしろ、お金で困ったことあったら言ってください。いくらでも出しますよ。っと忘れてましたね、これ」


 そこで彼女は俺に一万円渡してきた。

 えっと、これはなんなんだろう?


「そういえば、生中の分がまだだったので」


 面食らう。

 そういえば、そんな約束してたな。俺は忘れてたのに、覚えてくれたんだ。


「あ、ありがとう。一応もらっとくよ。困るかもしれないし(忘れてたな。それのこと)」


 余裕ができたこのお金はもちろん返そうと思う。今は借りるだけだ。


「そうそう、今日は私が夕食作ります。できるまで部屋でワクワクして待っててくれたらうれしいですー」


「そうなんだ、それは楽しみだなー」


 俺は涼音達に与えてもらった部屋に向かうことにした。

 ばたむ。


 扉を閉じてじっくりと考えてた。


「さすがに男として、金銭面全部涼音に頼るのはどうなんだろうな」


 できれば自分でも少しくらい稼いでみたいんだけど。

 だが、学生の俺がどうやって金を稼ぐ?

 学園ではバイトも禁止されている。


 そもそも禁止されていなくても、この世界で働くのはだいぶハードル高めな気がする。

 油断すればすぐに女性が襲ってくるっぽいし。

 例えばコンビニバイトとかは論外な気がする。


「なにかいい稼ぎ方はないだろうか?調べてみるか?」


 俺はスマホをとりだしてなんとなく操作し始めたんだけど。


(ん?)


 SNSアプリ【Z】の通知の数がやばくなってたことに気付く。


「通知すごいな。なんで?」


 プラス50ってなってる。


 普段はせいぜい1とか2なのにそれがいきなり50である。


「スパムにでも絡まれたのかな?」


 アプリを開けてみる。


「返信の通知がめちゃくちゃあるのな。なんかツイートしたっけ?」


 通知タブに移動してみる。

 最初の返信メッセージがこれである。

 女の子の顔写真のアイコンからのメッセージ。



"どうしたの?話聞くよ?"



「え?次も見てみるか」



"生きるの辛いよね。話聞きますよ?"

"お兄ちゃん、弱音吐かないでー、話聞かせて"

"逃げてもいいんだよ?ほら、お姉さんの胸の中においで"


 みたいな返信が50件くらいあった。


(返信した方がいいのかな?ってか、なんでこんなに返信きてんの?)


 こんなことを言われるようなツイートをした記憶……


「あるわ」


 思い出した。

 屋上に入った時だ。

 たしか、こう呟いたんだ。



"人生疲れました。飛び降ります。さよなら"



 これに対しての返信なようだ。



「この世界だと男がヘラってると、こんなにも構ってくれるのか?」


 もしかして、男のメンヘラの需要高すぎか?


 ネットの中だとしても、こんなにも多くの人に肯定してもらえるのはとても気持ちが良かった。


 気持ちいい心のまま更に細かく返信を見ていく。

 すすーっとスマホをスクロールしてると


「あれ?これもしかして、佐渡さどさん?」



佐渡 静香:辛い毎日お察しします。プロフ拝見しました。同じ学園のようですね。茶道部でお待ちしております。私でよければお話聞きますよ。いつでもいらしてください。



 佐渡 静香は茶道部の部長を務めている。

 涼音と並ぶほど学園の中でも人気の美少女。

 黒髪ロングの和服が似合う、とても清楚そうな女の子である。


 そんな学園トップの女の子が、俺のヘラツイートに、構ってくれていた。


 これ、脈ありでは?

 俺の時代が来てませんか?


 学園の二大美少女どっちも俺がゲットできそうじゃない?


(茶道部、行ってみようかな?)


 前から佐渡さんとは話してみたいなと思ってたし。


 それにしても、この世界でも佐渡さんは上品だなー。

 文面から滲んでるよね、隠しきれない上品さが。


 佐渡さんはこの世界でも『生中一万円』とか言わなさそう。

 俺が鼻息荒くしてると、コンコン。

 扉がノックされてた。


「ごはんできましたよ?」

「いま行く」


 ちなみにこの日のご飯はとても美味しかった。

 涼音の手料理おいちぃよぉぉぉぉぉぉぉ……。


 美味すぎて大泣きしてた。


 ちなみに母親の飯はいつもクソまずかった。



【補足】

優馬くんはSNSのプロフに通ってる学校とか趣味とか長文書いてるタイプの人です。

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