第2話 事の始まりと俺はSSR
俺はずっといじめられてきた。
小中とずーっといじめられてきていた。
理由は分からないけどいじめられてた。
そんな俺も義務教育を終えて次の進路を決める年齢になった。
俺は私立の【光坂】学園への進学を希望した。
いじめなんかも少なくてそこそこいい学園って噂が流れてたから。
必死に頑張ってなんとか入学した。
それから半年くらいが経った。
学園の生活は良くも悪くもない、みたいな感じ。
いじめこそなかったけど、周りからの俺の対応は厳しかった。
俺のことをいないものとして扱ったりしてきた。
それだけならいいんだけど。
更に追い打ちをかけるような出来事があった。
俺は勉強についていけなかったおだ。
学力不振ってやつ。
親はブチ切れてた。『お前みたいな出来損ないはいらない!!!』って。
周りに俺の味方なんて一人もいない気がして、俺は願ってしまった。
異世界に行きたいって。
でも、都合よく異世界なんて行けるわけが無い。
それでも弱りきった俺の心は僅かな希望に縋った。
ネットで異世界へいける方法を検索した。
1つ、手軽なものを見つけた。
紙に【飽きた】と書いて枕の下に置いて寝る方法だ。
翌朝起きて紙が消えていればそこは異世界なんだそうだ。
今考えれば馬鹿げてると思う。
でも、俺は試した。
それが昨日の話だったんだけど。
その翌日、つまり今日なんだけど。
結果から言えば、異世界には行ってなかったんだ。
俺は絶望して、学園に登校して、放課後に自殺を決意した。
心当たりがあるとしたらこれだ。
(まさか、ここは異世界?どう見ても日本だけど?)
異世界と言われたから、分かりやすいファンタジー系の異世界を考えていたんだけど。
ひょっとして、俺はいわゆる平行世界ってやつに来たんじゃないだろうか?
詳しくないけど、世界は同時にいくつも存在しているっていう話をきいたことがある。
アルファ世界ベータ世界、うんぬんかんぬん。
まぁ、つまるところ。
(俺は貞操が逆転した平行世界の日本にやってきた?)
としか考えられない。
思えば天城さん以外にもおかしい点はあった。
朝起きた時。
俺のことを見る妹の視線がおかしかった。
いつもなら軽蔑するような目で見てきていたのに、今日は俺のちんこに視線をやってた。そんで、『朝立ちやばw』とか呟いてた。初めはバカにされてると思ってたけどたぶんエロ100%の意味で口にしてたんだろう。
それから親父だ。
親父もおかしかった。
外に出る時、童貞死守ベルトなるものをつけていた。
そのときは、そういう新商品が出たのか?くらいに思っていたんだけど。
よく考えてみたら、そんな馬鹿みたいな商品が発売されるわけないよな。
それからクラスメイトの視線もおかしかった。
男子生徒の俺への扱いは変わらなかったけど、女子からの視線はおかしかった。
「あいつ、やれるんじゃね?」
「あいつならいけそう」
「あとでいっとく?」
みたいな会話が聞こえていた。
俺を見て。
喧嘩の話でもしているのかと思ったけど、違うと思う。性的な話だったんだ。
以上のことから確信。
間違いない。
俺は異世界にきている。
(となると、この世界。男女の価値観が逆転していると考えるべきか)
現役JCによる集団逆レ事件というのは笑い事ではない。(俺からしたら笑えるけど)
この世界の住人からしたら現実に起きた凶悪犯罪なんだろう。
そんな凶悪犯罪が起こっている魔境、ニッポン。
俺も犯罪に巻き込まれる可能性は十分にある。
ということで、天城さんからの質問の答えは出た。
「天城さん、送ってくれないかな?」
「涼音って呼んで欲しいなぁ?私たち恋人同士なんですよ?」
「あ、うん。送って欲しい、涼音」
「かしこまりぃっ!」
彼女はスマホでどこかに連絡を始めた。
「パパ、彼氏ができました。危険なので家まで送りたいのですがお迎えお願いします」
パパ?
てか、いいの?そんなこと報告して。
涼音のパパなんてめっちゃ厳しそうだけど、娘の色恋なんて許してくれるの?
そう思っていたらスマホ越しに、でかくて豪快な声がここまで響いてきた。
『でかしたぞ、涼音。まさか、その歳で人生最高難易度のミッション彼氏をゲットするなんて、パパは鼻が高いぞ。ふーはっはっはっは!』
(あ、ふーん)
今の会話から察せることがあった。
どうやらこの世界。
彼氏を作る難易度というものがものすごく高いようである。
連絡を終えると涼音は俺の顔を見てきた。
辛そうな顔をしている。
「本当は束縛なんてしたくないんですけど、いくつか言うこと聞いてくれますか?」
束縛系彼女?
あんまり束縛されるとウザイけど……涼音ならいいか。
かわいいもん。かわいい子に束縛されるならまぁいいや。
かわいいは正義だ。
「まず、一人で出歩かないでください。夜は特に危険ですから。それから、他の女ですけど」
「大丈夫だよ。浮気はしないから」
「え?浮気はしたいならしてもらっていいですよ?」
ふえ?
いいの?
「その代わり本命は私ということを忘れないでくれますか?」
「それは肝に命じるよ」
「なら良かったです。守って欲しいのはこれくらいかなー」
思ったより束縛されなかったな。
これだけでいいんだ。
そのとき、学園の外に1台の車が止まった。
「迎えが来ましたね。行きましょう」
俺は涼音の家の車に乗り込んだ。
運転手は筋肉ムキムキのめっちゃガタイのいい男の人だった。たぶん100キロくらいあるんじゃないだろうか?(つーか、この世界の男はだいたいガタイがめちゃくちゃいい)
思い出してみれば学園の生徒も全員ガタイがいい。
「君が涼音の彼氏かね?私はその子の父親だ」
(これが父親かよ……こわっ!俺なんてワンパンされそう)
緊張しながら口を開く。
「は、はい」
怒られないだろうか?
かわいい娘の処女を得体の知れないこんな情けない男に奪われたんだからな。(俺なら切れる)
だが、ここは価値観の逆転した世界。
俺の心配は杞憂に終わる。
「涼音、よくやったな。SSR彼氏のようだな」
「うん、パパ!優馬くんって言うんですよ。絶対結婚しますから」
え?
俺がSSR彼氏?
まさか。
勉強もできないし、運動も出来ないこの俺が?
信じられない。
「優馬くん、君は線が細いね?」
「すいません。これからはしんどくても頑張って鍛えます。涼音を守れるように」
「何を言ってるんだ?鍛えてはならん」
「そうですよ。優馬くんは鍛えないでください」
え?
「この世界で線が細い男というのは希少だよ?未だに君のような男がいるとは思いもしなかったよ」
チラッ。
涼音パパは窓から外に目をやった。
街ゆく男はめちゃくちゃガタイがいい。全員マッチョ。
最低でも70キロはあるんだろうなぁって感じ。
みんな最低限鍛えてるようだ。
「私も含めた男性は襲ってくる女性に怯えて体を鍛えるからな。今では男性はゴツイのしかいなくなってしまった。顔もゴツイだろう?」
たしかに。中世的な顔立ちの奴全然いない。
全員めっちゃ男らしい顔してる。
理解した。
だから俺みたいな線の細い弱そうな中性的な男は逆に希少価値があるってことか。
「安心してくれ優馬くん。キミのことは涼音に守らせるから。キミの貴重な童貞を奪った責任はきっちり取らせるから安心して欲しい」
涼音は俺の手を取ってきた。
「優馬くん。こんな私に君の大切な童貞をくれてありがとう、ぐすっぐすっ。ふえええええ。命を懸けて君を守りますからね」
そっか。
価値観が全て逆転してるから。
俺は守られる側だし責任を取ってもらう側なんだな。
なんか複雑だなぁ。
でも、まぁいいか。
この世界の男の人生、めっちゃ楽そうじゃね?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ってことに気付いたので。
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