人生に絶望して校舎の屋上から飛び降り自殺しようとしてたら学園一の清楚系美少女が「死ぬ前に私とセッ〇スしませんか、生中なら一万円払います」と止めてきた。後から知ったがここは並行世界の貞操逆転世界だった

にこん

第1話 自殺します。やっぱやめます

 ヒュォォォォォォォォォォォォッ。

 風を感じる。


 俺は眼下に広がる景色を見ていた。


 ここは校舎の屋上の外周。

 本来、外周には落下防止のフェンスが張り巡らされている。

 しかし、俺はそのフェンスの外側にいた。

 俺が数日かけてひっそりとペンチで切込みを入れていたのだ。今日、そこを起点に思いっきりこじ開けて穴を広げた。

 そこから簡単にフェンスを通ることができる。


 視線の先は校庭。

 一歩踏み出せば落ちる状況。

 踏み出したらどうなるだろう?


 まぁ、死ぬだろうな。

 てか、ぶっちゃけ死にたい。これ以上生きてたっていいことないし。


 よく、生きてればいいことあるって聞くけど、そんなことは妄言だ。実際は苦しいことだらけ。これからもそうだろう。

 なんか、いろいろしんどくて涙が出てきた。うぅ、ちくしょう。


(ぐすっ。もう、死のう)


 その時だった。


「お待ちを」


 背後から声が聞こえた。

 凛とした声だった。


「もしかして、死のうとしてますか?」


 振り返る。

 クラス、いや学園1の清楚系美少女と呼ばれてる女の子が立ってた。

 天城 涼音。

 それが彼女の名前だ。俺にとっては雲の上の存在。高嶺の花。

 文武両道。完璧超人。


 なんでここにいるのかは分からないけど。


 屋上に向かう俺をつけてきたのだろうか?

 んでもって、自殺しようとしてる俺を止めて英雄にでもなりたいのだろうか?

 それで内申点稼ぎ?

 生きてたっていいことないのに。無責任だよなぁ。自殺を止めるヤツって。


「だとしたら?」


 どうせ綺麗ごとを吐いてくるんだろうなぁ。

 そう思った。

 でも俺の予想はすぐに打ち砕かれることになる。



「死ぬ前に。ぜひ私と一発セッ〇スしませんか?生中なら1万円払います」



 ふえっ?


 は?


 え?


 ん?!!!!


(聞き間違えか?こんな美少女と生中して、更に金まで貰えんの?!)


 様々な疑問の言葉が高速で頭の中をグルグルしていた。

 結果。

 俺の答えは出た。


「やります。助けて。本当は死にたくなんてないんだ(やりたいやりたいやりたいやりたい!天城さんとやりたいっ!)」


 ニヤリ。

 天城さんは口元を歪めて笑っていた。


「ふふふ、そうこなくてはね」


「はぁ、はぁ。天城さんとやれるってまじ?(これからの会話、証拠として録音しといた方がいいかな?)」


 興奮で鼻息が荒くなる。

 俺はフェンスの外側から内側に戻ってきた。

 なんか泣きつかれてドッと疲れた。


 フェンスに背中を預けて座り込んだ。


 それにしても、天城さんの豹変っぷりが気になった。

 特に気になったのが以下の一言である。


『生中なら1万円』


(こんなこと言うような人じゃないんだよな)


 俺は知ってる。

 天城さんが清楚なこと。

 たとえ、自殺を止めるためだとしても絶対こんなこと言わない。


 家柄はとても素晴らしく、本人もお嬢様気質な人だ。

 とち狂ってもこんなことは言わない。

 それでももし言うのであれば、世界がおかしい。


 夢でも見ているのだろうか?


「……」


 理解できない。

  そのとき。


「さて、じゃあ。やりますよ?」


 脱ぎ脱ぎ。

 天城さんは制服を脱ぎ始めていた。

 既に下着。


「え?」


 キョトンとした。


「なにを不思議そうな顔をしてるんですか?約束したではないですか。やらせるって。あれは嘘だったんですか?」


「あ、いや。そんなことは……」


 正直、心の中では自殺を止めるための冗談かなにかだと思ってたんだけど。

 本気で言ってたのか?あ、いや。本気で言ってくれてるならうれしいんだけど。


 カチャカチャ。

 天城さんは俺のズボンに手をかけ始めた。

 それで理解する。


(この人、マジで言ってたんだ。これまでのこと)


 それからのことはよく覚えてない。

 気付けば全部終わってた。

 ちなみに内容はほとんど逆レイ〇みたいなもんだった。天城さんがずーっと主導で、俺はほとんど何もしてない。いわゆるマグロだったけど。それでも不満のひとつも漏らさなかった。



 俺はいろんな疲れから相変わらずフェンスにもたれかかっていた。


「お疲れ様です。とてもよい経験でした」


(どうなってるんだ?ってか、天城さんも初めてだったんだな)


 天城さんが処女なことはまぁ予想していたけど、だって清楚だし。

 でも、この世界なんだかおかしいよな。


 天城さんの言動がやっぱりおかしい。

 本当に生中させてくれたし。

 とち狂って「やらせろ」と言ってくるまでは理解出来ても生中はねぇだろっていう。そんなキャラじゃないよこの人。


「木原くん、あなたはどうでしたか?気持ちよくなれましたか?」


(俺の名前知ってるんだ。)


 驚いた。

 この学園の生徒数たしか1000人とかだ。

 一学年300人くらいいる。

 俺はただのカースト最底辺で、向こうは学園の花。

 名前を覚えられてるなんて思いもしなかった。


「私は天城 涼音」


 天城さんはスマホを取りだした。


「私たち身体の相性がいいと思いませんか?」

「分かんない。初めてだったし。でもすごい気持ちよかった。天城さんもかわいかったし。一生の思い出だよ。ほんとうにありがとう」


 そう答えると照れたように口元を抑えた。

 その仕草もかわいい。

 あー、もう死んでもいいかも。

 幸せすぎる。


「かわいい?私が?」


 そのあと、天城さんは表情を柔らかくして、嬉しそうにしていた。


「それより、私はあなたを気持ちよくすることが出来たんですね。嬉しいです」


(男が気持ちいいのは当たり前じゃないか?)


 って思ってたんだが彼女は話を進めてくる。


「これからも定期的にやらせてくれませんか?できれば、毎日がいいですけど」


 すっ。

 天城さんはスマホの画面を見せてきた。


 そこにはSNSアプリ【レイン】の画面。

 彼女のIDが出ていた。


「連絡先交換しましょうよ。木原くん」

「いいけど」


 連絡先を交換した。


 女の子の連絡先なんてひとつも無かった。

 俺の連絡帳に"あの"天城さんの連絡先が増えた。


 天城さんを見てみるとポっと頬を赤らめていた。


「男性の連絡先、やっと一件登録出来ました」


(え?連絡先も俺が初めてだったの?)


 ゴクリ。

 天城さん、かわいい。

 正直言ってずっとこんな美少女と付き合いたいと思ってた。

 てか、まじ好き。


 さっきも俺の顔見ながら『私はあなたに生きてて欲しいんです』ってパンパンしながら慰めてくれたし。これからも慰めックスさせてほしい。


 俺ちょろいかもだけど、やっぱまじで好き。

 天使だよこの人。


(今ならいけるんじゃないか?告白してみようかな)


「ねぇ、天城さん」

「はい?」

「良かったら、俺と付き合ってくれない?ずっと好きだったんだ」


 キョトンとしてた。

 それから少しだけ恥ずかしそうにしてた。


「え?そ、それは。その、私の彼氏になってくれる、ということですか?私は木原くんの特別になれるっていうことですか?」


 あれ、予想以上に好感触?


「うん」


 頷いてみると


「彼氏ができましたぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!やったーーーーーーー!!!彼氏なんて都市伝説だと思ってましたぁぁぁあぁぁ!!!」


 狂喜乱舞してた。

 まさか、俺が彼氏になって喜んでくれるなんて。

 思いもしなかったなぁ。てか、俺が狂喜乱舞したい。

 だって"あの"天城さんが彼女になったんだから。

 でも、疲れてて無理だ。


 それから天城さんは恥ずかしそうな顔をしてた。


「じゃあ、優馬くん。帰り道は気をつけてくださいね?」


 それ、俺のセリフじゃ?


「それとも送りましょうか?近頃物騒ですし」


 それも俺のセリフでは?


「半年前には現役JC集団による集団逆レ事件がありましたしね。加害者は全員妊娠したようです。被害者の男性の人、心に傷を負ってないといいんですけど」


 なんだよ、現役JCによる集団逆レ事件って。しかも全員が妊娠?

 俺が被害者になりてぇよ。天国だろ。


 うーん。

 それにしてもほんとに変だな。

 調子が狂う。


(天城さんが変なのか、俺が変なのか。世界が変なのか……それとも全員変なのか)


 とりあえず、世界が変になっていると仮定することにした。

 だって、そうでもないと俺が天城さんと付き合えるわけないしな。



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