第2話 鏡の話2
なぜ、僕はこんなにも周囲の目が気になるんだろうか?
細かいことを言えば、自分とは関係ない他人の言動にさえも
左右される。昔の僕はそんなこと気にせずに、毎日が楽しければ、
こんなに鬱々とした気分にはならなかった気がするが。
最初は、あまり気にせずに受け流した名前を間違える現象が、
こうも頻繁に起きてしますとムカつくというより気にかかる。
物事には必ず因果関係があるはずだからである。
後輩の女の子、とても可愛らしいちっこい女の子が、面識がないはずなのに
話しかけてくる。
「西島先輩、部活ですか?」
僕は、「えーっと、誰だっけ、それに僕は東島だよ、双子もいないし、帰宅部なんだけど、、」
その遠山という古風な感じの可愛い女の子は、
「またまた、ホントにジョーダンが過ぎますよ、、剣道の県大会頑張って下さいね!」
反論する気はなかったが、その暇も与えてくれないまま、遠山さんが去っていった、
少し離れてから、彼女は、
「これからは、ミドリって言って下さいね!西島センパーイ!」
テレビで有名な国際政治家が、まるでキレ芸の芸人のような怒り方をしていたのをテレビで見た時、
くだらない話だと受け流していた。
「僕の名前は八幡(ヤハタ)秀一(シュウイチ)なんだが、関西で仕事があると、一般人だけ出なくて、
メディア関係も初対面の時は、八幡秀一(ヤワタシュウイチ)さん、今日の仕事の打ち合わせですが、
と平気で名前を間違える。一番ひどい時は、ハチマンヒデカズと呼ばれたよ。名前を間違えるなんて
一番失礼な行為だよ!」
くだらない悩み,だと今でも思うが、それが自分の身に起きると、確かに困る。僕の場合は、
ムカつくではなく、困惑である。因果関係である。八幡を九州ではヤハタ、京都ではヤワタ、
関東の一部ではハチマンと呼ぶのは、地方方言の域であり因果関係があるが、僕の東島を
西島と間違えるのは因果関係が見当たらない。だから困惑である。
そんな悩ましい日々の中、夏休み明け、僕の彼女という噂が立っている坂上千晶(サカガミチアキ)
ちゃんを校舎玄関口のところで上履きに履き替えるところで、彼女から声をかけてきた。
「西島くんですよね、確か、同じクラスの、、、」
「あのサカガミさん?」
「あっ、えーっと、」
僕は、「ヒガシジマです。ヒガシジマ明人(アキト)です!」と答えようとした、
けれどその言葉を飲み込んだ。
「こんにちは、西島君、サカガミチハルです。クラスでは、あまり話したことなかったけど、
あの、お願いがあるんだけど、今度、数学の参考書選びについてアドバイスをもらいたいんですけど、
ご都合はいかがでしょうか。」
僕は彼女が同じ顔の別人であることを確信した。僕の知っている千晶ちゃんは、平野綾演じる
ハルヒのような超陽気の女の子。たまに暴走もする。しかし、二言三言しか話していない、
チハルと名乗る女の子は、早見沙織が演じるお嬢様のようなキャラでまるで別人だった。
僕は内側で湧き上がる抑えきれない困惑が表に出ないように、極めて冷静に対応してみせた。
「参考書の件は,今度,本屋とネットでリサーチしておきますね。」
彼女が離れていく後ろ姿を見た瞬間、フッと気が緩んだ瞬間に、
彼女が振り返りざま聞こえるか聞こえないかのボーダーライン的な囁き声で、
僕に語りかけてきた気がした。実際には声を聞いたわけではないが、
そんな口元で、まるでブラックな能登麻美子が語っているようだった。
「君、芝居が上手いわね。」
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