第3話

第三話




「ふわぁ……おはようユキ」

私は背伸をしながらキッチンで朝食を準備していたユキに挨拶しその腰を椅子に下ろす


「おはようセレナ、もうすぐ朝食は作り終わるよ」

ユキが振り返り私に微笑み掛けながら香ばしい優しさの溶け出した様な匂いを醸し出す朝食をテーブルへと並べる


「今日もありがとユキ」

私はテーブルに並べられた料理に目を移し手元にあったフォークとナイフを取り料理へとその手を伸ばす

ふとユキの方を見ると料理のために括っていた髪を解いている最中だ


「どうしたの?」

私のユキを見る視線に気付いたのか振り返り不思議そうな顔で私に問い掛ける


「何でもないよ、食べようか」

「そうだね」

私の答えにやや不満そうなユキを放置し食事を食べる


私がユキを雇ったのは数年前

一人でこの店を切り盛りしていた時だった

古い友人であるマキと言う人物が私の状況を見て紹介してくれたのだ

ユキについて詳しい話は聞いていないが昔から1人で家事などを熟し

武力もあるとは聞いている


事実ユキはここに来てから家事全般と私の護衛をしてくれている



「今日も美味しいよ」

「それは良かったよ!作った甲斐があるって物だね」

「そう思ってくれくれて嬉しいかな」

そうやって話しているとテーブルに置いていた通信用のデバイスが振動する


「誰からかな?」

私がそう言いデバイスを起動すると

赤い髪にサングラス、葉巻を口に挟む女性が映し出された

「マキはん?どーしたんすか?」

そうこの人こそユキを連れてきた張本人である


「おぉ〜セレナ、それにユキも仲良くやってるみたいじゃねぇか」

「お陰様でね、行き着いたのがここで良かったよ……」

「ほーん、そりゃ良かった、んで本題だがな丁度昨日の夜お前らの出した求人見つけてさ、うちで育てた人材を紹介しようと思ってたんだがそいつが任務に出かけたっきり帰ってこなくてな、今日定休日だろ?金は弾むから面接ついでに救出頼めないか?」

「えぇ……」

マキはいつもこうである

急に連絡を寄越しては身勝手に事案を押し付ける

まぁ探偵事務所を運営しているから仕方ない事なのだろう


「頼めるよな?」

「どうする?セレナが良いなら準備するよ」

「あぁ……待って、はぁ、分かったよ」

「それは良かった、座標は送っとくから頼んだわ」

「あいあい」

それだけ言い残してホログラムが消える


私はため息を付き腕を伸ばす

「じゃあ準備してくるよ、」

ユキがそう言い立ち上がる

「あいよ」

私はユキに返事をし玄関へと向かう


数分待っていると大きなカバンを持ち

背中には剣を装備したユキが玄関へとやってきた


「ふぅ……じゃあ行こうか」

「そうだね……」

私は扉を開け外へ出る

外は工事が盛んに行われており定期的なバスと一部の道路以外は封鎖されている


「それじゃ行こうか」

「そうだね」


私達は目的地へ向かうため店の駐車場に向かい配達用に買った車に乗り込みナビに座標を入力し発進する


店を出ようとすると笛が鳴り少し待っていると前からおじさんが姿を表し話し掛けて来る

「この道工事中でね、立入禁止だからね、こっちのね、道を使って欲しいね、ホントすいませんね、」

私はおじさんの指示に従い車を動かす


「大変そうだねぇ……」

「まぁ大規模な工事みたいだしねぇ」

「それもそっか」


車を進めていると開けた場所に出た

「ご協力ね、ありがとうございました、帰りもここに来たら警備員居るからね、その人に聞いてね、あいあい」

そう言うおじさんを背に私達は目的地へと向かう



「ねぇセレナ、目的地は何処ら辺なの?」

「ん〜、前にとある事故で倒産した企業あるでしょ?あそこの残骸だよ」

「あぁ……なんか採掘されてるんだっけ」

「まぁここ近辺では良く名前が上がるくらいよ大企業だからね、事務所やら小規模な企業が集まって機材や技術を発掘してるんだ」

「私達が行く場所はマキの事務所が保有するエリアかな?」

「そうみたいだね、採掘の為に送った人から救難信号が出てその救助の為に人を送ったらしいんだけどまだ帰って来ていないみたい」

「まぁ中は電波も悪いだろうしね……間に合うと良いけど」

「マキぱいの所の人だしそこら辺は心配しなくても大丈夫でしょ」

「そうだと良いけど……」

私達は目的地へ向かってる間他愛もない雑談をして時間を潰す


出発してから数十分後遂に目的地周辺へと到着する


「止まってください」

私達が道路を外れ目的地の施設周辺に来るとアナウンスが流れ私はそれに従う


するとドローンが私達の車を囲い付いてくるよう促す

それに従い進むと駐車場へと案内され促されるがまま駐車を行い外へと出る


「ん〜」

「やっぱり車は疲れるねぇ……ユキも大丈夫そ?」

「ん?ストレッチすれば大丈夫だよ」

そう言ったユキは腕を天高く上げ体を伸ばしている

「そっか、んじゃ行こうか」

「そうだね」


目的の場所へと入るため入り口へと向かった

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