第31話 激闘

楽阿寒軍と球国軍の戦場では変わらずに汗唖と網嵐が何度もジリジリと傷を負いながらも斬り合っているところが盛り上がりを見せた。

網嵐「楽阿寒様と共に戦場を出て数十年になるが此処まで苦戦した敵はいない…そしてこんなにも高揚し、斬りたいと思った敵もいなかった!」

全力で振り下ろされた矛は重く、汗唖は受け止めるだけで精一杯だった。だが此処で倒れるわけにはいかない汗唖も全力で押し返し、網嵐を馬ごと飛ばした。

汗唖「それの何処が凄い、この世に武人として生きてきたのなら戦場など切っても切れない存在だ。それがただの男と一緒だからと高揚しおって。貴様に教えてやることは1つ!昨日までの相手が弱かった。それだけだ」

網嵐「楽阿寒様を支えてきた俺にそう言うのか…面白い、ではその首を落としてやる」

網嵐は先程の力を凌駕する力で矛を振り下ろした。これには汗唖は受け止めれず、少しだけ深傷を負ってしまい、血を吐いた。

汗唖「何度でも言おう。そのような感傷は戦場にとってつまらないの言葉でしかない!あるのは目の前にいる敵を打ち砕くのみだ」

今度は汗唖が網嵐に深傷を負わせた。網嵐も汗唖と同じように血を吐いた。そして周りで見守っていた両軍の兵士は何度か斬り合えば勝負が決することに薄々と気付いていた。

汗唖「だが俺も此処まで追い込まれたのは久しぶりだ。でも!俺を殺そうと控えている我が大将は俺よりも何倍も強い!だから俺を殺そうが多少の影響しかないのだ!覚悟して俺にかかってこい!」

そして網嵐は矛を振ろうとしながら汗唖に馬を走らせた。汗唖はそれを斬ろうとしたが網嵐は汗唖の大矛を振り下ろす前に懐に入り込んで汗唖の上半身を思いっきり斬った。汗唖は何かをボソボソと言いながら馬から落ちて動かなくなった。一騎討ちが終わると先に罫国軍が攻撃を仕掛けて周りにいた球国軍を蹴散らした。網嵐は後ろに下がることなく、矛を振るって球国軍を大いに討った。最初の球国軍の勢いは失われ、再起不能の直前までになっていた。

矢佐君「この面汚しが!あの馬鹿野郎!何をしてくれてやがる!李警、すまぬが俺らは失態を犯した。斬首にしたいなら戦が終わって勝手にしろ、現場の人間が直ぐに立て直しをするはずだ」

汗唖の死は戦場全体は勿論、罫国の王宮にまで届いた。両者の反応は対極を成すものであり、言うまでもなかった。列国連合軍では球国以外の国が球国を戦犯として責めなかったが打撃を与えられた責任の落とし前をどうするのか説明を求める者が多かった。

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