第25話 大きな一歩

真と黄攏が一騎討ちをしていると日が暮れてきたため、罫国軍が撤退の銅鑼を鳴らしたのをきっかけにどちらも撤退をしていった。真隊は1千から943人と数を減らしてしまったが誰も悲しい顔をしていなかった。

蘇随「私の隊も6人くらいが殺されましたが悲しいと思いません。彼らは最後まで戦場で立って戦い、死にましたから。だから歩兵達にもそれを伝えると悲しむ者は激減しました」

真は傷を手当てしてもらいながら話を聞いていると横たわった。

真「あの将軍首は近そうで遠い。俺も一騎討ちで何度も死を覚悟したくらいだ。だがそれを乗り越えないと今までやってきた全てが無に帰すからな、意地でも乗り越えてやるぜ」

そして日が明けると直ぐに呉国軍が突撃を開始した。また先頭には黄攏がおり、次は呉国軍の一部を率いて真隊を目掛けて突撃をしてきた。

黄攏「貴様は此処で殺しておく。昨日の一騎討ちでお前は死にかけたというのに運が良いな、死ぬのが伸びるとは」

真「るせぇよ、お前こそ死ななくて良かったな。だが今日こそはお前をぶった斬ってやるぜ!」

そう言うと一騎討ちがまた始まり、昨日ように激しいものとなった。中には戦闘をやめて見守る者も出てきた。そして黄攏が少しだが押され始めたのだ。

黄攏「(何だこいつ、昨日と全く別人のようだ。武の匂いと気配が拡大している。余計に此処で始末しておかなくてはならないようだ)」

そう思いながら戦っていると黄攏は真の一太刀を浴びてしまった。浅かったものの初陣から怪我をしたことがなかった黄攏にとっては驚きを隠せずにいた。

大皇「黄攏は武将として大事なものを1つだけ欠けている。それは勘違いだ。奴の凄まじい努力は戦場で大きく発揮された。それが奴にとっては自信となったが枷ともなった。いつしか自分が最強だと自負してしまい、先陣に立って戦うようになった。兵士の士気が爆発するため、嬉しい話だが実力がまだ追い付いていない」

その言葉通りに黄攏は真に斬られ、動揺してしまったことで剣筋と狙いが悪くなり、真に何度も避けられながら斬られてしまった。そして黄攏軍騎馬兵が間に入って一騎討ちを止めた。真は邪魔してくる黄攏軍騎馬兵を斬ろうとしたが先に黄攏が斬った。

黄攏「俺の顔に泥を塗るつもりか…一騎討ちをした時点でどちらかが死ぬかどちらかが倒れるまで終わらせてはならん。恥をかくつもりなら此処で死んだ方がマシだ」

そう言って真との一騎討ちを始めた。だが遂に真の剣に深く斬られ、倒れかけたが何とか手綱を握って起き上がった。そして目の前に剣を振ったがそこには何もなく、上に影が見えたため、見上げると剣を振り下ろそうとした真がいた。黄攏は剣で防ごうとしたが体が言うことを聞かず、真の重い剣を体で受け止めた。黄攏は上半身の大半を斬られ、絶命し、馬から落ちた。

真「お前は何度も死を覚悟したくらい本当に強い奴だったが最強はこの俺だ…ハァハァ」

前線の呉国軍は黄攏が討ち取られたことを知り、各地で撤退をしていった。

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