第18話 最後の抵抗
大皇と遠南は生き残った呉国軍を率いて撤退を開始した。韓名軍の残党は韓名の元へ行こうと玉砕に近い攻撃を何度も繰り返して呉国軍の撤退の手伝いをした。大皇は大声を出して感謝を述べたかったがその暇もなく、ただただ戦う韓名軍の残党達の方を見て感謝の気持ちを思っていた。だが冠希は撤退を阻もうとした。
冠希「おい、俺に憧れて入ってきた馬鹿の少年兵共を投入してやれ。生き残ったら俺に会わせてやるって言って士気を上げろ。本物の戦場と死を馬鹿共に今回の場を借りて教えてやる」
そう言うと年齢が15歳~18歳までの少年達によって形成された部隊が大皇達の前に投入された。だが大皇は前に止まって突撃してくる少年達を制止させようと大矛を握っていない左手を出した。
大皇「我らは呉の軍人だ。この場を借りて言わせてもらう。貴殿らの勇気は我々に見劣りしない、だが力の差がありすぎる。男が誰かに憧れ、その道を行くのを心苦しいが今のお前達には止めなければならん。君達の家族や親族の残された悲しみや唐突な別れを君達は知らないだろう。私は何度もそんな場面を見て心を苦しませた。だから君達にはもう少し成長してから此処に出てきて欲しい。その時は私が全力で戦おう。安心しろ、我々は君達が攻撃してこない限りは攻撃しない。さっさと撤退せねば君達が斬られてしまうぞ」
その言葉を聞いた少年兵達はぞろぞろと後退し始めた。冠希は少年兵達を弓矢で壊滅させるよう命令したが大皇軍がそれを全力で防ぎ、少年兵の逃亡を補助した。
観弁(大皇軍千将)「我らの殿の助けを無駄にするな。直ぐにお前らは撤退して村に帰れ。我々が君達を1人も失わずに帰そう」
そう言いながら観弁と観弁隊は最後まで戦い、少年兵達を逃すことに成功した。だがいつの間にか囲まれており、少しでも道連れにしようと抵抗して壊滅した。
大皇「この戦で俺は大敗と失態を犯した。全ての責任はこの俺が承る。遠南殿は全ての罪を俺に擦り付けよ。誇張しても構わん」
遠南「責任は私にもあります。しっかりと兵を率いれてなかった私が悪い。だから責任は同じくらい受けましょう」
そう言って馬を走らせていると呉国警備軍が見えてきた。それに向かって走らせると何とか呉国内部に到着した。罫国軍も追うのをやめ、冠希軍は逃亡した少年兵を探し、見つけ次第、殺した。国に帰還した大皇は国王に呼ばれた。
万瀬王(呉国第10代大王)「わしも貴殿を少し信用しすぎたようじゃのぉ。この敗戦は誠に大きい…国内でも貴殿の人気は少しばかり下がってしまっているようじゃ、この戦争を起こした朝廷の大臣達は全て解雇した。貴殿にはどのような罪を背負ってもらうか考えていただこう」
大皇「大敗した将として私はどんな重罰も受ける覚悟です。貴方様の命令とあれば今、此処で首を落とされることにも何の抵抗もしません。何なりと」
そう言う大皇を哀れに思った夫残が万瀬王に進言するかのように言った。
夫残(呉国右丞相)「大王様、大皇の反省は深きものです。彼なりの反省はしているはずです。許すとまではしませんが挽回の機を与えてみてはいかがでしょうが?そしてそれが失敗すれば現場で死罪と言い渡せば良いはずです。勿論ですが決定権は大王様です」
その進言を万瀬王は目を閉じて静かに頷き、何処かへ歩いていった。大皇は最後まで頭を下げていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます