第17話 怒りと出会い
大皇は冠希への怒りを覚えながらも歯をくいしばりながら本陣へ帰っていった。
遠南「大皇様、不要に動かないようにしてくださいませ。此処で貴方様が討たれては罫国にとっては大きなことにございます」
大皇「すまぬな、反省する」
そう言うと下をうつむいて何も話さなくなっていた。だが王満は呉国軍に綻びができたとして突撃させた。両軍が衝突すると各地で血潮が吹き飛び、悲鳴と雄叫びが聞こえてきた。剣や槍が交わる音や重そうな鉄の音、その全てが戦場を包み込んで新兵にとって最悪の事態を作ってしまった。
王満「王紇、直ぐに兵を率いて呉国軍の横へ雪崩れ込め。奴らはそう長く持たん」
そう言って王紇が1千の騎馬隊を率いて呉国軍の横に突撃すると不意を突かれた呉国軍が対応できずに王紇達の侵入を許してしまった。呉国軍は立て直そうとするが現場にいた指揮官も次々と討ち取られ、呉国軍の前線は崩壊していった。
岸塀(呉国軍全歩兵部隊長)「隣に100送れ、あっちが少しずつ崩壊してきている。俺の警護も厚くして敵が入ってこれないようにせよ」
指示していると王紇が単独で護衛を突破して岸塀の喉に槍を一突きして討ち取った。直ぐに周りにいた王紇の騎兵隊が到着して王紇を守りながら呉国軍歩兵達を斬っていった。岸塀の死が広まり、呉国軍歩兵達の力は弱まってしまい、各地で突破する罫国軍が現れた。
韓名「た、大皇様…」
韓名は包囲されながらも戦局をひっくり返そうと戦っていたが何度も槍や剣で刺されてしまい、遂に力尽きそうになっていた。そして矢が心臓付近に刺さったことで剣を落としてしまい、そのまま動かなくなった。そこで戦っていた罫国軍歩兵達は敬意を払って死体をそのまま放置して前線を突破した。
大皇「まさかとは思っていたが韓名が討ち取られるとはな…何とも時代の流れを感じさせられるな。俺と韓名は敵同士だった」
少し昔の呉国と夕国の戦いで大皇は韓名と出会った。大皇の圧倒的武力で夕国軍は壊滅的損害を被った。そして捕虜となった韓名は縛られ、処刑されそうになっていた。
大皇「お前はこんなところで死ぬべき男ではない。前線で剣を振るい、この俺を前にして怯まずに立ち向かってきた男はお前以外に知らない。お前に選択肢を与えてやる。俺の配下となって俺の夢を叶える手足となるか、此処で首を落とされるか…選ぶのはお前だ」
韓名「そうだな…良いだろう。あんたの言う通り、俺はこんなところで死ぬ男じゃねぇ。これからあんたの手足となって」
そう言うと大皇は縄をほどいて韓名と共に戦に出た。いくつもの戦場を駆け回っていった。大皇は大将軍になり、韓名も将軍に昇格しようとしたがそれを断って大皇の元で五千将を続けた。
大皇「下らん、俺の下にいてもお前の出世は難しいのだぞ?それに戦場にはいくつもの死が転がっておる。将軍になって女と添い遂げ、未練をなくそうとは思わんのか?」
怒りっぽく言う大皇に韓名は照れくさそうに笑って言った。
韓名「普通の男はそうします。ですが私は大将軍の大皇様に助けてもらったんです。今の韓名は大皇様のお陰であるのです…私は最後までこの軍の人間として戦いたいのです。良い同期もおりますし…ですが大皇様の言う通りにもしてみたいです。だから次の罫国との戦が終わったら大皇様の軍で将軍になり、未練を1つでも減らそうと思います」
そんな話が大皇の頭の中には過った。そして大皇の目からは涙が出てきてしまい、その場で立ちすくんでいた。
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