第16話 自分のやり方
冠希は他国に関わらず、罫国内でも残忍で欲深い男として名を知れ渡らせていた。
冠希(罫国将軍 後方奇襲軍大将)「さぁてと、始めるか…いつものやつを」
そう言って森に配置した天幕から顔を出して冠希を見つめてくる直下兵達に笑みを浮かべていた。そして遠南は遠西の死を知ると怒り、冠希討伐軍を出した。
遠南「冠希を捕まえて連れてこい!難しいなら苦しい死に方を与えて殺せ!」
だが森を事前に熟知していた冠希軍はゲリラ戦を選択し、本隊と外れた小隊を順に全滅させていった。本隊もじりじりと追い詰められており、冠希討伐軍隊長の大例が討ち取られたことによって全部隊撤退となった。
冠希「あいつらは俺らを舐めすぎだな。雷命、良くやった」
そう雷命を褒めてまた天幕へ戻って寝転がり、後頭部を掻いていた。王満はその報告を知り、何も動じずにいた。
王満「奴にとってはあれが当たり前だ。我らも少し動くとしよう」
そう言うと王満軍が前進し、呉国軍を挑発するかのように前進と後退を繰り返した。呉国軍は遠西が討ち取られたことを知っていたため、その怒りも兼ねて罠にはまってしまったのだ。
遠南「え、えぇい!直ぐに兵を落ち着かせて元の場所に戻させよ!」
その命令を伝える前に呉国軍歩兵達は罫国軍によって容赦なく斬られていった。
大皇(呉国大将軍)「困ってるようだな、俺の兵を少し貸そう」
本陣で慌てている遠南と参謀達を前に冠希の後方奇襲軍を少ない犠牲で突破してきた大皇が姿を現した。
韓名(大皇軍五千将)「大皇様、私以外の部隊が全て配置につきました。余兵は全て冠希のところへ向かわせて交戦させております。戦局は互角と報告が入ってます」
大皇「そうか…では下がってお前も罫国軍の撃退に貢献せよ」
その言葉を聞いた韓名は一礼して自分の持ち場へと帰っていった。大皇は大矛を握り、冠希の方へ向かった。
冠希「伃弊、10騎だけ連れて裏に回り込め。そして奴らを包囲したかのようにしろ」
そう言っていると大皇が前線を圧倒的武力で突破し、少しのところまで冠希に迫った。だがそんな絶望にある冠希は笑っていた。
冠希「そそくさと俺の罠に入ってきてくれたんだ。何も知らずに…面白くてしょうがねぇな、だろ?桜妃」
そんなことを言っていると大皇の進撃が少しずつ勢いをなくしていった。
大皇「後方が追い付いていない。このままだと俺だけが孤立する。直ぐに横に逸れて脱出を試みる」
そう言って大矛で横に迫ってくる冠希兵達を一気に何人も斬って突破しようとする。だが四方八方の包囲と矢によって脱出は困難を極めていた。そして大皇は1人でも多く道連れにするため、限界まで大矛を振るった。
贈携(大皇軍五千将)「大皇様!全兵力を連れて助けに参りました!我らが脱出路をこじ開けます故、そこから脱出してください!」
贈携と贈携兵によって包囲の中に外への道が完成し始めた。そして大皇が贈携に感謝をしながら外に出ようとしているのを冠希兵は全力で阻止しようとしたが失敗した。贈携は少しでも大皇兵を逃がすため、中心に入って剣を振っていたが大皇が逃げたことを確認し、撤退しようとしたところを出てきた冠希と冠希兵によって串刺しにされてしまった。
贈携「大皇様、申し訳ございませ…ぬ…」
そう言いながら贈携は絶命し、落馬した。その死体を冠希兵は本陣に連れ帰って酷い姿にして森に放置した。
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