第21話  ぶつかることで生まれる絆は必ずある

 それから一週間。

 俺は何をする気も起きず、無心でマジカルフロッピーを視聴し続けていた。


 相変わらず双葉とは話せないまま。彼方くんの顔も見ていない。きっと、俺たちはたまたま脆い糸で結ばれていたにすぎなくて。一つの糸がほどければ簡単に、ばらばらになってしまうのだ。


「おにーちゃーん。おへやはいってもいいー?」


 ……愛しき妹の声。もちろん、お兄ちゃんはいついかなる時でも大大大歓迎である。


「どうぞー」

「おじゃましまーす」


 そう言って、清蘭は元気よくドアを開けた。この前買ってもらった新しいマジカルフロッピーのパジャマがよく似合ってる


「おにーちゃん、おともだちとけんかしたの?」


 パソコンに張り付く俺にテテっと駆け寄りながら、清蘭はストレートに質問を投げかけた。


「えっと、どうして?」

「だっておにーちゃん、さいきんげんきないもん」


 心配そうな表情。やっぱり清蘭にもばれてたのか。


「うん。ちょっとね」

「そっか……でもせーらしってるよ。けんかするのは、わるいことじゃないって」

「そうなの?」

「マジカルフロッピーがいってたもん。おともだちとなかよくするのにひつようなのは『ぶつかるゆうき』なんだよ」


 ぶつかる勇気……『第8話 カエルの合唱で大喧嘩!?』における、マジカルフロッピーの名言だ。 

 合唱コンクールの練習がうまくいかず、喧嘩になってしまったフロッピーたち。でも互いに素直な想いをぶつけ合ったことで、みんな目標は同じであることを再確認し、結果的に素晴らしい輪唱で金賞を取った神回……あっ!


「ともだちのきもちをいっぱいきいて、じぶんのきもちもいっぱいはなす。いっぱいけんかしたらさいごはなかなおり、でしょ?」


 そうだ。マジカルフロッピーが教えてくれたじゃないか。お互いを理解するために、ぶつかる勇気を。

 俺にとってかけがえのないあの繋がりを、どうやって取り戻すべきか。それだけを考えていた。でも……そうじゃないんだ。雨が降らなきゃ地面は固まらない。双葉つぐの想い、彼方光琉の想い、そして俺の想い。それをぶつけ合った先に、きっと――


「せーらもね。たっくんがなんでせーらいがいのおんなのこにもやさしくするのかわからないから、あしたようちえんできいてみるんだ~」


 うん。それは間違いなく修羅場じゃないか。双葉拓斗は俺の敵だが、同じ男として健闘を祈ろう。どうかお手柔らかにしてあげてくれ。


「……清蘭、ありがとな」

「うん。せーら、おにいちゃんのことおうえんしてるからね」


 10個以上も下の妹に教えられてしまったな。さすがは俺の自慢の妹だ。


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次回は清忠くんがついに答えを出します。



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