幕間1 双葉つぐの独り言
「あなたの笑顔が、どうしようもなく好きです! ぼくと付き合ってください」
その誠実な青年は、メガネの奥の瞳を濡らしていた。
あたしがもらった、人生8度目の告白──
たぶんあたしは、恋愛に向いてないんだ。絶望的に。
告白した経験も、された経験もたくさんあるの。付き合った人数は、10人超えたあたりから数えるのやめちゃったくらい。てへっ。
でも……あたしは誰も幸せにできなかった。幸せになれなかった。
だってどんなに素敵な人と付き合っても、あたしはあたしのままなんだよ? なんの取り柄もないありふれた女の子、双葉つぐなの。
あたしは彼氏から貰ってばかりで、何もあげられない。そんな釣り合わない関係に結局、疲れちゃうんだ。大好きな人に迷惑をかけるのって、自分が傷つくよりもずっっっっっとつらいんだもん。そうしてあたしは……いつも失敗するの。
光琉との関係も、そうなりかけてた。彼方光琉は、双葉つぐにはもったいなすぎるほど、優しくて、誠実で、かっこいい。彼に相応しい人間になりたいって、必死にもがいたけれど……やっぱり無理だった。
そんな時、あたしは出会ったんだ。海堂清忠に。
ほーんと、びっくりしちゃった。あんな不憫な人、あたし初めて見たもん。転校初日にみんなの前で『変態男!!!』って叫ばれて、あげく自己紹介が飛ばされちゃうんだよ? 笑っちゃうよね。
……でもね。清忠は不服な顔だったけど、不幸な顔じゃなかった。むしろちょっぴり嬉しそうで。あぁ、きっとこの人は、逆境にめげない、強い人なんだろうなぁ、って。そう思ったの。
でねでね、あたし考えたんだ。
清忠なら、あたしの嫌なところも、許してくれるかもって。もしも清忠の前で嫌な双葉つぐを出し切れたら、光琉の前では素敵な彼女でいられるかもって。
だからあたしは……清忠を利用した。
『2番目の男』なんていう、失礼で、傲慢な、ひどい言葉で。
彼方光琉に優しい双葉つぐを見せたくて、清忠の強さにつけこんだの。
最低な女だね、あたし。
でも結局。全部無駄だったな。
当たり前だよね。あたしはただ、清忠に迷惑をかけて、問題を先延ばしにしただけ。根本的には何も解決していない。
――だからまた、一番大切な人を、不幸にしちゃったんだ。
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