第15話 やっぱり妹に彼氏なんてお兄ちゃんぜっっったいに認めないんだからね!

「がんばれ。マジカルフロッピー……!」


 強大な敵の出現により、世界が闇に包まれ、人々は絶望に陥れられる。 

 それでも――マジカルフロッピーは決して諦めなかった。何度倒されようとも立ち上がり、勇気を奮い立たせ、未来を守るために戦い続ける。

 彼女たちは決して特別な蛙じゃない。どこにでもいる普通の蛙だ。それでも、大好きな時間を、世界を、仲間を守りたい。そんな強い気持ちがあれば、魔法は誰にでも宿り得るのだ。がんばれー、マジカルフロッピーーー!!!


「おにーちゃーん。おふろあがったよー」


 髪をお団子にまとめた宇宙一可愛い俺の妹、清蘭が部屋に入ってきた。マジカルフロッピーのタオルを首に巻いている。お兄ちゃんの買ったタオル、気に入ってくれてとっても嬉しい。


「あっ! おにーちゃん、今日もマジカルフロッピーみてるの?」

「うん。面白すぎてつい」

「かっこいいもんね! マジカルフロッピー」

「そうそう。かっこいいんだよ」


 すると、清蘭はパソコンを後ろから覗き込んだ。


「そこ、せーらすきなんだ~。みんなにおうえんされて、マジカルフロッピーがげんきになるところ」

「わかるぞ。ジーンってなるよね」

「うん、じーんってなる!」


 ああ。愛する妹と、こんなに素晴らしいアニメについて語り合えるなんて。俺はなんて恵まれているんだろう。彼女なんていなくても、清蘭さえいれば、俺は十二分に幸せだ。


「そういえばね。せーら、おにーちゃんにおねがいがあるの」

「おっ、どうした? なんでも言っていいぞ」


 妹のお願いなら、お兄ちゃんなんでも聞いちゃうぞー。


「あのね、こんどのなつまつりにね。せーら、たっくんといきたいの」

「そ、そうか。たっくんと……」


 にっくきたっくんめ。まさか妹と花火を観ようとか考えてるんじゃないだろうな。舐めた真似しやがって。大切なうちの妹と交際するなら、まずは兄である俺のところに挨拶に来るのが筋じゃねーのかよ。あん?


「でも、おかーさんおしごとだから。おにーちゃんについてきてほしいの」


 たしかに、いくら清蘭がしっかりしているとはいえ、幼稚園児だけで人混みには行かせられない。しかしながら、なーんで彼氏のために俺が……という気持ちと、清蘭のためなら喜んで!という気持ちが拮抗している。心が裂けそう。


「だめ、かな……?」


 その天使すぎる尊い声と潤んだ瞳により、俺の気持ちは一瞬で固まった。


「大丈夫。お兄ちゃんに任せなさい」

「やった! おにーちゃんだいすき!」


 そうして清蘭は俺に抱きつ――きはせず。なぜか怪訝な顔で俺の匂いを嗅ぎ始めた。もしかして……やっぱり臭い? ショックなんだけど。


「せ、清蘭?」

「……おにいちゃん、いろんなおんなこのにおいがする」

「え」


 もしや双葉たちの匂いか? たしかに疑似ハーレムはしてたけど。にしても鼻が強いな。彼氏の浮気とか一瞬で気づきそう。


「おにいちゃん、だれかとつきあってるの?」

「……ツキアッテナイヨ」


 ごめんな清蘭。お兄ちゃんにまだ春は来ないんだ。




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