サカバー

 ミハエルはいじめ倒した昔自分を慕ってくれた女に似ているモデルのキャラがその本人ではないかという恐怖と共に、彼女を放置プレイして海岸を去った。

(まさかな……世界違うのに追ってくるわけが……適当に自分を慕ってくれる人から1人選びだして結婚してるさ。あの子。じゃないと、こわい)

 次のマップは適当に選んだらミハエルたちは酒場に辿り着いた。

「お、いいねーこういう雰囲気を望んでいた」

 と、ミハエルが言う。こういう雰囲気とは酒場の雰囲気ではなく。

「ちょっと、あの人、酒…………」

 東雲波澄しののめはすみが言葉をみなまでいえない。

 注目している人物は、酒を両手に持ち、目から飲んでいた。

 クレイジーである。

 ガシャァァァンガシャアン!

 そして左右の1升瓶が空になると、それを地面に叩きつけてバラバラにかち割った。

 ガシャァァァン!

 と、ミハエルの近くでもう1瓶割れた音がした。そちらの方を見てみると――

 顔を真っ赤にした氷川ひかわ舞子まいこがミハエル達を睨んでいた。間違いなく飲んでいる。

「うわ、追跡されてる?」

 ミハエルが怯える

「だろうな」

 フレッドが気楽に答える。

「やっぱ中身ありなんじゃ……」

 アリウスが言う。

「逃げて済む問題じゃなさそうよミハエルさん」

 東雲波澄しののめはすみが警戒する。

 目で酒を飲むプレイヤーがビールの入ったジョッキをミハエルに投げつけた。

 ガシャァァァン!

 ミハエルはわざと避けずに食らう。

「おっしゃあああ! 乱闘と行きますか!」

 ミハエルはやる気だ。目で酒を飲むプレイヤーに椅子を投げる。

「現実だと大犯罪~仮想世界ではそうでもない~」

 ミハエルは爆裂する気をたくさん投げた。

 どぉぉぉぉん!!! どぉぉぉぉん! どぉぉぉぉぉぉん!

 店中で爆発が起こる。だが、酒に引火しての爆発じゃあない。

 爆裂型エネルギー弾(霊気の塊)を用いたのは、火炎瓶だとやはり現実でどうなるかも想像してしまい、ストッパーが働いたからである。

 良心というストッパーが。

 目で酒を飲むプレイヤーはNPC飲み客を拳で粉砕している。

 そのプレイヤーを背後からフレッドが一升瓶で襲いにかかっている。

 目で酒を飲むプレイヤーはNPCを武器にしてフレッドに対抗している。

「おいおいそれ武器になるんかよ!」

 フレッドが戸惑う。

「ぐへぇ」

 フレッドが目で酒を飲むプレイヤーにやられ、グロッキー状態になる。

「フレッド! 武器だ!!」

 ミハエルの声がする。フレッドは彼女の足首を持った。

「…………?」

 フレッドは氷川ひかわ舞子まいこを剣として装備した!

 フレッドは氷川ひかわ舞子まいこをぶんぶんと振ってみる。剣のように。

「あ、水色パンツ見えた」

 男としてはしっかり覗いておく。

「うっうぅ…………うっうっ」

 氷川ひかわ舞子まいこは泣いていた。ひょっとすると泣き上戸かもしれない。

「こんなのヒロインの使われ方じゃない…………! よごれじゃんわたし!!」

 氷川ひかわ舞子まいこはパンツ見られたことよりも扱いに不満があるようだった。

「うっぷ! うぇ、おろろろろろろろ!」

 ぶんぶんと振られた影響なのか剣(氷川ひかわ舞子まいこ)が吐きだした。

氷川ひかわ舞子まいこを道具として使う! 氷川ひかわ舞子まいこの口からエクトプラズマが発生した! 目で酒を飲むプレイヤーはエクトプラズマによりダメージ(物理&精神)を受けた!」

「つええな、やりこんでるプレイヤーだぞこの人」

 フレッドが唸る。氷川ひかわ舞子まいこを剣として振り回してもなかなか倒せない。

「あーうめー」

 目で酒を飲むプレイヤーは目で葡萄酒を飲んでいる。

と、そこにアリウスが乱入した!

 アリウスはフレッドの足首を掴んだ

 アリウスはフレッドを装備した!

「これでどうだ!」

 アリウスはフレッドで目で酒を飲むプレイヤーを攻撃した。

「効いてる!」

 フレッドは氷川ひかわ舞子まいこを手に持っていたままだったので、追加攻撃で氷川ひかわ舞子まいことエクトプラズマのダメージを目で酒を飲むプレイヤーに与えた!

 目で酒を飲むプレイヤーはアリウスに倒された…………。

「一時はどうなる事かと、でも被害は抑えられたね」

「いや、あの、アリウスさん……」

 東雲波澄しののめはすみが声をかける。

「なに?」

「被害抑えられてないんですが……特に氷川ひかわ舞子まいこちゃん」

「もうヨゴレなんて嫌だ……なんで!?……わたしメインヒロインできる顔よね!? 少女漫画でヒロインやっていける顔の自信あるんだけど!? もうVRやだー!」

 口からエクトプラズマの余りを垂れ流しながら、氷川ひかわ舞子まいこは泣きながら自分がメインヒロインやっていける可愛さを持っている事を訴えた。

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