VRで暴れる最終回 数字に支配されるとか生き物としてのプライド原始人以下なのわかってる?

「ん? なんだこれ」

 ミハエルがなんとなくメニューバーを呼び出す。

 そのうち、ステータスという項目を押してみる。

 Name:ミハエル

 sex:male

 HP:100%

 ……

 と全部の情報が出てくる前に

黒竜光波こくりゅうこうは!」

 ミハエルはステータスを消し去った。冷たく笑いつつ。

「アホか。人を数字で支配しようとしやがって。人を数字の奴隷にしたくてしかたないようだな」

 黒竜光波2撃目をセットする。

「フレッド、アリウスくん、波澄はすみ、破壊を手伝ってくれ。ゲーム内部に入り込んだわたしたちがゲームを壊すぞ! 壊しちまえ!」

「ほいほい!」

 フレッドが右手に滅炎剣めつえんけん、左手に滅氷剣めつひょうけんを持つ。

「オーラキャノン」

 アリウスが魔力の大砲を右手に用意する。

霊牙閃れいがせん――」

 東雲波澄しののめはすみが霊気の大砲をいつでも撃てるようにする。

「数字に支配されるとか生き物としてのプライド原始人以下なのわかってる? みんな、システムに干渉できる穴はわたしが開ける。霊波動ならそれができる! 撃て!」

 ミハエルが冷たい顔で復活するステータス画面を完膚なきまでに破壊する。

「わたしが狂ったように見えるかい? 数字にとわられ過ぎな奴の方が狂ってるさ」

 フレッド、アリウス、東雲波澄がそれぞれの技――氷と炎の暴れっぷり、魔力の大砲、霊気の長い牙をミハエルが明けたワームホールっぽい穴に叩きこむ。

「そういう奴って、面白いって何なのか自分で判断できなくなってるんじゃないの……?

 数字に支配されてるよ魂が。

 小説なら裏工作してても星多いのが全てサクラ駆使しても売れてると見せかけたのが全て、動画や通販ならサクラでもgood押されまくってるのが全てでてめえの自分の感性で判断してないように見える……。

 てめえの魂、数字に食われてるよ……数字は人の心を操る物であってはいけない!

 テストの点数しか見ない学校、患者の心じゃなく検査の数字しか見ない医者、業績しか見ない職場! これらは全部クズだ。

 こういう奴らは綺麗ごとぬかすな結果が全てって言う。

 だが、『自分が数字というシステムの奴隷になって惑わされて落ちぶれてる』ってオチだ、ふはははは!

 お前ら全員数字野郎に操作されてるネ

 わたしが守護天使ミカエルとして地球守ってあげる前に全員数字野郎にやられてるね こいつら操作されてるよ」

 といいつつ他のキャラのステータスも黒竜光波でぶち壊すミハエル。

「ま、わたしは守護天使ミカエルじゃなくて、ただのおっぱい貴族ミハエルだけどな!

 何がクズって数字だけで人の心を見ていないからだ!!

 もっと心を大事にしてやれよ…………自分自身の感受性だろ? なんで自分をそんな簡単に他人に明け渡すの?」

 ミハエルは、言葉をつづけた。

 これまでの時代は、特にここ火明星ほあかりぼしじゃなく地(獄の)球では数字が、その人の価値を決めるという幻想がまかり通っていた。悲しい事に数字が多くの心を握りつぶしていたんだ」

 ミハエルは左手を上に上げ、黒竜光波を1つ空に向かって空撃ちする。特に意味はない。

「まず子どもの頃、でっかい墓石の建物――学校では多数決というのがありました。

 間違ってても挙手している人数が多いほうが採用されるというクソ方式です。

 これは悲劇です。正解でも人数少ないとゴミと扱われる、ソクラテスが衆愚政治の極みと切って捨てた手法だ。選挙でもな。

 そして『偉人は常に批判を受ける』ソクラテスも多数決で死刑になった。当時のアホ金持ちが徒党を組んでな。哲学と称して人心を惑わせました(俺らが支配しやすいバカ民衆を賢くしようとしました→賢くなる=人心惑わすと金持ちが定義、自分の思う通りに先導されてくれないから)ー、だからソクラテスこいつ死刑なってな。

 お前らは 『自分にとって何が歓びか』ということよりも、

 より多くの人に支持されることを優先しなければならないとか、どれだけ客観視したらつまらないものだろうが『いいね』が多い奴が正義、いいねのためには乳首もパンツも見せるわ堕落するわ。

 『多数派に属することが安全である』と、子どもの段階で刷り込まれます。

 あの豆腐みたいな、でっかい墓石の形をした学校とやらでな! マヌケだぞ学校のダサさ、離れて凝視すると。

 髪をポマードで固めたリーゼントしたり、タバコ、ケンカ、しまくってた奴の方が賢かったんだよ! 理性でなく野生で危険思想を埋め込まれることを察知したんだ。行動が不良の鑑だったやつの方がな! わたしはアホな優等生だったが。

 腐った社会に魂を堕落させないという意味でな!

 これに気づいて自ら不登校になった奴は偉い!!

 自分の心を堕落させずに高潔に守ったのだから!

 子どもでそこまで考えられるのは超賢いぞ。そんな才能あふれるやつ、わたしの騎士団に好待遇で入れたい。そういう賢い不登校者は。

 学校の成績も、テストの点数で順位が決められるので、数字が人の価値の指標であるという暗黙の了解が進む。

 わたしなんか飛び級だったからな。大学に行ってた13歳くらいまではいい気になってた。アホの数字おだてにのっかってな。

 賢い不登校者は、13で大学行っていたわたしよりもずっと賢い! これは自信をもって言える」

 ミハエルは、辺りを見回して世界の崩壊を確認する。

「もうちょい話でもして、崩壊確認まで待つ必要があるか」

ミハエルは、大きく息を吸い込んだ。

「大人になると、今度は売上数字。

 より多くの売上を上げることが価値のあること。

『もっと売れるように頑張れ!』と頭悪い煽りにすら反論できず、言われても、反抗しない。

 抵抗できない大人。だっせー。子どもから見たらそんなとーちゃんかーちゃんだっせーよ! 殴りたくなるね!

 数字が人間の価値を決めるという価値観が。既に染みついているお父さんお母さん。お前なんのために生まれてきたの。って子どもに言われて言葉詰まらせてんじゃねえよダメ大人。

 そして自分の気持ちよりも、数字や『お金』を優先し続け、何が自分にとっての幸せなのかわからなくなってくる大人。

 自分の人生の主導権が数字やお金に奪われているとは、思いもしないし、気づくこともできない。

 数字信仰の世界にいる人は、数字に支配され続ける。

 だからVR世界で数字信仰があったら消す! システム壊してでもな!!」

 フレッドが言葉を挟む。

「でもさ。オレたち宇宙人かもしれねえな。そろそろ崩壊しそうだぜ」

「ふっ。なんだよフレッド。お、マジやっと崩壊?」

「僕たちのこの生き方は、もしかすると数字信仰の世界の人からすると、理解しがたい生き方のように映るかもしれないっていいたいんだよ」

 アリウスがフォローする。

「お互い様じゃあ、ないかしら。地球の堕落した人間って自分を賢いとか思い込んでるゾンビだって見なしてるわたしたちを、わたしたちの事、病的に数字を拒否する理解不能の化け物って思ってるかもよ?」

 東雲波澄が後ろ手に両手を組んで、上半身を少し倒して上目遣いにミハエルを見つめる。

「じゃあわたし化け物でいいわ。数字の奴隷になるくらいだったらな!

 数字なんて3Dモデリングに使うくらいでちょうどいいのさ。マスファンクションでX=SIN(U)Y=SIN(2×U)Z=Uで素早く三つ編みの1/3が、モデリングの骨組みができる。

 あとはその骨組みのベベルオブジェクトに円を通してスムーズ面にすれば、三つ編みの1/3出来上がり。1/3できたら、それをデュプリケイション(複製)して3/2πパイ回転させる。

 それをあと1回くりかえしたら三つ編みの完成だ。こういう3Dで複雑な髪の素早いモデリングには数学はかなり使える。

 サイン(SIN)、コサイン(COS)、タンジェント(TAN)は髪のモデリング速くしたいなら覚えておいて良い。目的さえあるなら、やる気出てくるだろ」

 そうミハエルは笑う。

 そしてミハエルたちはVRゴーグルを外し、夕食を食べに屋敷の1階の食堂にわいわい騒いで行った。

 そんなミハエル達4人は笑顔に包まれていた。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ――が、泣きべそをかいた氷川ひかわ舞子まいこがミハエルの家に向かっている事はミハエルたちは気づいていなかった。

「あなたこっちの世界じゃア有名人ジャン。人にあなたの家きいたらすっごい詳しく教えてくれた。

 許さない! 許さない! ミハエル――!

 このまま終わってなるものですか!」




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 VR最終回以前に、気が向いたらエピソード入るかもしれません。

 この物語の最終回がパッと浮かんだので最終回をっばばっと乗せる暴挙。

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