ビーチバカー

  とりあえず氷川ひかわ舞子まいこに飽きるほど黒竜光波を撃って恋愛を楽しんだので他のマップに移ることにした。

 「あ、ここはビーチだね。でもVRでこんなところ来る必要あるのかな。現実で行けば……」

 とアリウス。

「おい、ミハさん」

 フレッドがビーチバレーのコートの向こう側を指さす。

「うわ」

 思わずうめくミハエル

「いるわね…………」

 東雲波澄しののめはすみもびっくりしている。

 氷川ひかわ舞子まいこがビーチバレーの敵側のコートにいた。

「…………」

 元々やや釣り目だったが、今ははっきりと釣り目になっている。

「早くきなさいよ、ミハエル」

 ご指名がかかった。

「アリウスくん行ってあげな」

 だがミハエルは従おうとしない。

「お前よ、お前。ミハエル」

 氷川ひかわ舞子まいこは恨みが積もった顔でミハエルを指名する。

「フレッド、指名だぞ」

 やはりミハエルは従おうとしない。

「いや、それで逃げられはしなさそうだぜ」

 フレッドが氷川ひかわ舞子まいこの表情を見てたじたじになる。

「耳にわかめでも詰まってんのか。お前だお前。人がイキこんでパンツ見えそうになるかなって不安になりながらミニスカで足ぎりぎりまで見せつけて、かわいいわたしみてもらおうと内心はしゃいでたのに、恋愛しようとお前にドキドキしてたら黒竜光波を嫌というほどぶつけやがって。バトル漫画じゃねーっつのに。きたねえ花火上げたろか!」

 これでも優等生というか品行方正キャラである。外ヅラは。

 氷川ひかわ舞子まいこははっきりと釣り目になっていて暗ーい、というか怒気を含んだ雰囲気なのでこわい。

「はーい、いきまーす」

 観念してコートに入るミハエル。

「君こうやってみると華奢なイメージあったけどムチムチな方が魅力ある所は太いね。ふとももとか。正直その太ももは魅力だ」

 ミハエルが褒める。

「…………」

 氷川ひかわ舞子まいこは怒気を含んだ雰囲気を崩さない。

「ノーリアクションとはキャラ変えた? きみ」

「恋愛な雰囲気だったのに黒竜光波浴びまくって吹き飛ばされたのにちょっと褒められたくらいで機嫌戻ると思う? あぁん!?」

「あ、そ。で、試合始める?」

「ええ。コテンパンにしてやるわよ恋する女にエネルギー波何発も撃ち込むクソ男」

 氷川ひかわ舞子まいこは怒気を含んだ雰囲気でそういう。

 ――と、ミハエルが氷川ひかわ舞子まいこのコートに入る。

「ちょ、ちょっと! コートはいんないでよ、反則よ!」

「それ、誰が決めたの?」

「はぁっ!? 誰がってルールじゃない」

「……わたしきみに関してあの世界で別れる前に見下げはてた所1つあるんだけどね、ルールなんてくそくらえ~な勇気ある態度でいるかと思ったら、ルールにせこせこ従っている根性なしな女な所。

 『いや、ここは賢く行くところですし……』

 って言ったところ。あれで君に対する気持ちがかなり下がったな。

 『なんだ口で偉そうに行っておいて上から押さえつければへりくだるんじゃん安い女』

 って思った。だから君も一緒にこないかって言葉は出す気起きなかった。

 いい。VRだしわたし君にきつい言葉言うよ。

 そういう奴は天上天下唯我独尊っていっておいてせこせこと権威主義で上からの言葉に頭下げてしたがってる。わたしそういう男も女も権力にひざまづき靴をなめるクズで根性なしだって思ってる。

 わたしも友達のフレッドやアリウスくんはそんなごみとは違うから友達やってる。わたしたちそういうクズはエネルギー波で容赦なく殺してるからな。

 だから、カイアスのような腐敗した国以外じゃこの火明星ほあかしぼしじゃ権威主義は流行らない。地球的心に毒された人からエデンて呼ばれる所以かもな。

 『地球人は他人の命かかってる場合でもルール厳守で人の心を忘れている。特に会社員はな! 機械のような奴らに 支配されることに安心感を覚えてやがる』

 わたしたち太陽系外の人間が地球人を見下す原因だ。

 逆に第2次世界大戦で、権威、大日本帝国に逆らって拷問されて命落とした人は尊敬する。まともな日本人は第二次世界大戦でほとんど死んだよ。残ってるのは臆病者の子孫」

「そんな……そんな! ならそう言ってくれれば良かったのに!! わたし治したよ! 全然治したよそのくらい! あなたさえわたしの隣にいれば勇気なんていくらでも湧いてくるんだから!」

「誰かと一緒じゃなくてさ。一人の勇気で足進めようよ。1人での勇気さえ見せてくれれば、わたし君を背中から支えてあげたのに」

「そんな………うぅぅぅうううううう。ちくしょーーーーーーーーーーーっっ!!

 あの時、あなたそこまで思っていたの!? 生きる知恵の1つ程度だって思ってたのに……あの時違う行動取ってたらあなたわたしを連れて行ってくれてたんだ」

 氷川ひかわ舞子まいこが大粒の涙をこぼしながら、唇を前歯で突き破るくらい悔しがる。当然血まみれになる。

「で、試合の話に戻るけど、審判宣言してない」

「何? あの審判ハリボテ?」

「ハリボテなのは君も同じじゃないかAI。何自分は違うみたいなことを」

「あのね、それちょっと言いたかったんだけどね。

 わたしはわたしだから。そりゃあ最初はちょっとキャラAI操作にしてたけど、それはトイレに行きたくなったからで、途中からはちゃんとわたしが中身はいって――」

「わかったわかったAI。人に化けるのがうまいな」

「ぐうう――ちくしょーーーーーーーーーーーーーーーっっっ! 人の言うことを聞こうともしない!」

「だって本物の氷川ひかわ舞子まいこは別世界で自分に惚れてた男グループの誰かと結婚してるだろうもん。このヴァーレンスまで異次元ゲートあけてくるわけないって」

「ゲート開けてきたのよ! あなたに会うために! あなたのお嫁さんにしてもらうために! わたしがあの程度で諦めて男漁り始めると思う!? ふざけないで!」

「はいはい、嘘がお上手ですねAIよ。でも掲示板の書き込みならAIって見破りにくいけど、こうやって話すならAIって見破るの簡単だよ。

 ルシファーも人も騙す手口一緒だなーたまには変えろよ。

 そんなに空間移動術の素質なかったから彼女じゃ無理だ」

「AIじゃないのに…………わたしなのに…………AIって思われてるからミハエルこんなに冷たいんだ…………どうしたらAIじゃなくて生身の人間って信じてもらえるの? 名前入力してくれた時覚えていてくれたんだ! って嬉しい気持ちで天に昇りかけたのに、黒竜光波で天に昇りそうにさせられるなんて思わなかった。

 うぅうぅぅぅぅぅうううぅぅぅぅぅっ――悔しいよぉ悔しいよお!」

 泣きべそをかきながら、バスン、バスンと砂浜で地団駄を踏んで泣きじゃくっている。

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