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 12時00分。

 国籍不明機から最初の投擲があった。真下に位置していた常磐自動車道を埋め尽くした乗用車が爆発音とともに炎を上げて燃え上がる。

 途端に渋滞した車から上空を見上げていた人々は悲鳴を上げて逃げ惑った。自動車を降りて高速道路外まで逃げようとする者、路側帯を加速して走り抜こうとする車、それぞれが衝突事故を起こす。

 

 円盤から放出されたそれは花火のように空中で火の塊が分散して多数の炎が落下していく。着地地点では一瞬にして人も車も燃え上がった。

 報道関係のヘリコプターに向かって黒い円盤が突撃する。ヘリコプターの旋回速度で対応できるはずもなくヘリコプターは霧散した。その様子を間近で中継していたヘリコプターが続く犠牲者となる。


 まるで準備運動を済ませたかのように国籍不明機が突如速度を上げて東京へ向かう。


 百里基地司令 空将補 花園はなぞのの予測していたとおり、9機の円盤は南方から同時に爆撃を行うはずの14機を待っていただけだった。今、14機が来ないまま黒い円盤は音もなく飛行し、地上にマグネシウム―テルミット系の火炎をまき散らしながら東京を目指していた。


 ◇◇◇


 国家安全保障会議、スクリーンと大臣の手元のモニターにはE-747早期警戒管制機から送られてきた惨状が映されていた。

「総理、今からでも迎撃命令を」

 海江田防衛大臣が梶原かじわら総理大臣に迫った。


「野田市と柏市一帯に避難命令を出せ!」

 大久保おおくぼ総務大臣が騒いでいる。

 梶原総理大臣の目に涙が光った。

「わかった。あの円盤を撃墜したまえ。自衛隊に防衛出動命令を出します。みなさん、異議ありませんね?」

「異議なし」

 全大臣が揃った。


 ◇◇◇


 百里基地からはすでに全てのF-2戦闘機が飛び立っていた。

 しかし、首都圏に所在する唯一の戦闘航空団への航空自衛隊司令基地である。集団から外れた1機の円盤の目的は明らかだった。

 ロックオンできない円盤に対してミサイルを撃ちこもうと近づけば「通過」され、F-2は次々と数を減らしていた。もちろん、百里基地からも基地防空用地対空誘導弾の発射はありうるが、円盤の周囲を飛ぶF-2に誤射しうる可能性がある。しかも、円盤はロックオン不可能、つまりレーダーによる誘導が不可能ということである。


 ――(こちら管制塔、Skylark班、B地点まで下がってください)This is control、Skylark please fall back to rally point Bravo.


 円盤の周囲を飛び交っていたF-2が全て立ち退いた。一瞬遅れて通信を傍受していたであろう円盤が急上昇した。4連式発射装置から放たれたミサイルが一列になって上がっていく。間をおかず、らせん状に放出されたミサイルが基地の反対側へ降下してきた円盤を捉えた。


 残り8機。

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