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 空母から約10km離れた上空を黒い円盤は飛翔していた。かなりの速度が出ている。

 F/A-18戦闘機は空母からカタパルト発射される。簡単に言うと、エンジンをかけている戦闘機を昔の玩具である小石をゴムで飛ばすパチンコで打ち出すような感じで発射している。発射直後の戦闘機の速度はほぼ300km/hと言われている。


 つまり、戦闘機が速度を上げなかったとしても2分後にはF/A-18は12km先まで進んでいるのである。


 ――(管制塔、こちらBellflower 3-1、目標を確認した)

 Control、this is Bellflower 3-1、we have visual on the objects. 


 黒い円盤も戦闘機集団の意図がわかっているのだろう、一斉に散開し、上昇するもの、下降するものに分かれた。そのうちの1機がBellflower 3-1の背後についてくる。急上昇するF/A-18に追従していた。


 コックピット内にレーダー警報受信機の警告音が鳴る。こちらから黒い円盤をロックオンすることはできないが、黒い円盤はミサイルシステムを搭載しているらしい。

 Bellflower 3-1がフレア(ミサイルの誘導装置を引き付ける囮)をばら撒いて上方へ旋回する。バルカン砲でしながらSan Marcos1-1の率いるチームと共に西側へと円盤の群れを牧羊犬のように追い立てていく。途中、5枚の円盤を撃墜し海中に沈めてしまったが、9枚残っていれば硫黄島近辺まで連れていけるだろう。


 ――(硫黄島だ。もう落としてもいいだろう)

 Bellflower 3-1、that is IWO-TO、you're clear to engage.


 ――(残骸に不発弾の心配はあるかな?)

 UH, San Marcos1-1、any UXO concern from debris?


 ――(いやいや、UFOの残骸より自衛隊基地に攻撃されるほうがマズいから)

 Be advised, risk of air base attack outweighs risk from debris.


 ――(了解)Roger.


 かくして硫黄島の東海岸付近にはUFO墜落現場が出来上がることとなった。以下はコックピット内カメラやフライトレコーダーに残されていた通話記録である。


 ――Bandit, splash down. はい1機目水没。

 ――Make it two! 2機目!

 ――on your left, 9 o'clock. 左、9時の方向にいるぞ。

 ――en--gage. 発ーー射

 ――And here's six! そして6機目!

 ――Ka--boom. ドッカーン

 ――Hey was that lucky number seven? おい、いまのラッキーナンバーの7じゃね?

 ――yep, and here's the hateful eight. そ。そしてヘイトフル・エイト。

 ――This one's dressed to the nines.  お洒落な9機目。

 ――I think I heard that one calling for his mom. アイツきっとママーって叫んでたな。


 Bellflower 3-1とSan Marcos1-1は部下たちが楽しんでいるのを止めることなく見守っていた。


 ――I think that's it. おしまい。


 ――(悪い子たちは全員やっつけた。管制塔、掃除を開始して構わない。)All bandits have been destroyed. Tower, feel free to commence clean up.


 Bellflower 3-1が管制塔に連絡すると、空母打撃群に同行していたサルベージ船から「了解しました、ただちに現場に向かいます」と緊張した声で応答があった。


 ――This is gonna be one helluva highlight reel. この戦闘、マジで今回のハイライトシーンだったな。


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