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早朝、ワシントン特別区、ホワイトハウス3階、ワークアウトルーム。
ランカスター大統領はアンナ・ロバート大統領補佐官の報告を聞きながらトレッドミルの上で走っていた。
「休暇中の国家安全保障問題担当シモンズさんが午後には帰国予定です。なるべくすぐに閣下とお会いしたいそうです」
「そうね、アンナ、日本の外務大臣ってまだアメリカにいるなら面会できるように調整してもらえるかしら? シモンズより先に会っておかないと怒られそうだわ」
「はい、閣下。それから先日の件ですが、FBIとCIAの間で話がまとまったようです」
◇◇◇
篠山外務大臣は再び黒いSUVの中にいた。先日と同じパークウェイ(自動車専用道路)を南下していた。
何度も申し込んでいたアメリカ大統領との面会が急遽、本日の11時半に決まったのだ。
「全く、どうなっているんだ」
苛々した様子で篠山外務大臣は後ろの大使館職員
「容疑が固まったみたいですよ」
相変わらずスマホから顔を上げずに言う。
「容疑? 一体誰の何の容疑だね?」
「そこまでは先生はあずかり知らぬこと、で宜しいかと。我が国にとっても合衆国にとっても喜ばしいことですから」
もう一人の秘書官
「先生? お嬢様にお土産は用意されました? 奥様が欲しがっていらしたスカーフだけは確保しましたけど?」
◇◇◇
黒っぽいボディアーマーの背中と胸元に白く「FBI」の文字が書かれている。12階建のアパートの廊下にはFBIの係官たちが詰め掛けていた。一室のドアの両側に待機する。同行しているCIA職員ウォルシュ は用意した携帯電話を使用した。
数回の呼び出し音の後に半分眠っている声で応答がある。
――はい?
「ウォルター・H・シュミットですね? こちらCIAのウォルシュ 捜査官です。FBIの捜査官と一緒にいます。今すぐ部屋から両手を上げて出てきてください」
――は? 何を言っているんだ?
「逮捕令状もあります。1分以内に出てこなければあなたの部屋に突入します」
――ふざけているのか? 警察を呼ぶぞ。
通話が途切れた。
1分が過ぎる。
シュミットのアパートのドアが蹴破られ、大勢のFBI職員が銃とライトを構えて突入していく。シュミットはベッドルームで身柄を確保された。
「うわっ、わかった、わかった、眩しい」
「ウォルター・H・シュミットですね?」
「そうだよ! 一体何だっていうんだ!」
ライトに照らされてシュミットが後ろ手に拘束された。うつむいていたシュミットが顔を上げると両目の虹彩が縦に閉じているのがライトで照らし出された。
「
「これって人種差別じゃないのかな?」
「あなたをスパイ活動法違反の容疑で逮捕します」
「なんで? レプティリアンだから?」
「あなたには黙秘する権利がある。
あなたの供述は、法廷であなたに不利な証拠として用いられる事がある。
あなたには尋問されている間弁護士の立会いを求める権利がある……」
馬鹿にしたように薄笑いを浮かべているシュミットに対してFBIの捜査官が「ミランダ・ライツ」を告げる。
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