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「ふん、意外と身近なところに『未知との遭遇』があったものだな」
「おや、驚かれないようですね。それならば話は早い、現在、我々の仲間が首脳を務める国が大変困惑しているのです」
「どこだ、それは?」
「ロシアです」
ベネットがグラスを口に運ぶ。
「ロシア人が
「いいえ、一般大衆はヒトです。我々はブラドミル大統領以下ロシア政府の中枢を握る位置にいます」
「なぜオーストラリアを攻撃したんだ?」
「一つ、我々の出撃地区から近かったこと、一つ、邪魔が入らなかったこと、一つ、あなたに我々の威力を教える必要があったこと。こんなところですね」
オーストラリアには空軍に給油機はあるが海軍に空母は無い。円盤はレーダーで捕捉できないので目視で追うしかない、空中で給油していれば見失う。円盤がどれほどの巡航距離を持っているかわからなかったが、都市を破壊して太平洋上へ逃げれば戦闘機での追跡は諦めざるを得なかっただろう。
「我々は現在ほとんど地表にでてくることはありません。ほぼ地下で生活しています。
ですが、我々も地上で日光浴や風を楽しみたいこともある」
「ヒトを殺す必要ないだろう、バカンスにでも行けばいいだけのことだ」
「かつて我々は地上のバカンスを楽しんでいたのです。我々のピラミッド型太陽神殿はエジプトを始め、中国やアンデスにもある。かつて我々には神殿を建設するなど労働力兼使用人として働く奴隷猿を配置した温暖な島がありました」
「ムー大陸か?」
「ちがいます、やがて狂暴化した奴隷猿が我々の祖先を虐殺して根絶やしにすると日本という国を作りました。いわば、あの島は我々にとっての『約束の地』というわけです」
窓の外はすっかり暗くなり、ビルの屋上につけられた航空障害灯が点滅している。シュミットとの面会が始まった時に付けた照明が室内の様子を窓ガラスに反射していた。
「議員、あなたに依頼したいことは2つ、ヨーロッパの戦争について我々ロシアを支持すること、そして日米同盟の破棄を推進することです。そうすればあなたは黒い円盤を実際に目にすることは無いし、4年後の大統領選挙でお好きな大統領を選んでいただけますよ」
「……確約できるのかね?」
「もちろんです、議員」
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