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  野党有力国会議員であるマイケル・ウィリアム・ベネットは他の議員と同じく国会期間中の住居を持っていた。一軒家ではないが、長年気に入って使っている部屋である。

 インテリアデザイナーにより選択された洗練された家具と窓から見えるワシントンモニュメントが気に入っていた。窓は大きく、バルコニーもついているが、警護員たちに「絶対に外に出ない事」を約束させられている。いつか政界を引退したらバルコニーにテーブルと椅子を並べて妻のエマと一緒にグラスを傾けるのもいいだろう。


 そのワシントンモニュメントが夕暮れ時の空にライトアップされている美しい窓辺に今は一人の男が立っている。その男が持参したタブレットにはベネットが何度か訪れたことがあるオーストラリアのシドニーが崩壊していく様子が映されている。


「シュミット大統領補佐官、この映像をどこで入手したんだ?」


 ウォルター・H・シュミットと名乗った大統領補佐官が面会を希望してきたのは数日前だ。オーストラリアが黒い円盤に襲撃されたのは昨夜のことである。画面が固定されているのを見るとこの映像は空中で静止できるという黒い円盤から撮影されたものだろう。


「細かいことは必要ないでしょう? 我々には映像を入手する伝手ツテがあるんですよ、議員」

「ふん、まあいいだろう。それで、私に相談したいというのはどういうことだね?」

「その円盤の威力、わかっていただけましたか? 予算不足で四苦八苦しているF/A-18戦闘機など役には立たない。いつでもロスアンジェルスからサンアントニオ、ダラス、フロリダを通って東海岸まで一帯を焼野原にできるのですよ」

「そうかもしれんな」


 ベネットはタブレットをコーヒーテーブルの上に置くと立ち上がり、キャビネットからウィスキーとグラスを取り出した。ソファーに座る。

「飲むかね?」

「結構です……もちろん、我々もそんなことにはなって欲しくはありません。あなたももちろん、そんなことは望んではおられない」

「当たり前だろう!」

 ウィスキーのボトルが少し震えている。ベネットはボトルの端をグラスに押し当ててなんとかウィスキーを注いだ。ちらり、とシュミットを見ると自らの優位を確信しているように薄く笑っているようにも見えた。


「それで、何が欲しい、金なら無いぞ。選挙のたびに献金を集めるのに90%のエネルギーを使っているんだ」

「あなたには無くても合衆国にはあるでしょう。我々が欲しいのは金だけではありません」

「大体、我々ってのはなんなんだ? イルミナティか何かか?」

「あのような狂信者共と一緒にしないでいただきたい。こちらは正真正銘の『地球人』ですよ」


 シュミットがベネットの向かいに腰を下ろした。片目からコンタクトレンズを外して見せる。その虹彩は爬虫類のように縦に切れていた。

「あなた方の一部が言うところのヒト型爬虫類レプティリアン、人類発生以前から地球上にいる地球人ですよ」

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