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 09時10分アメリカ国防総省。


 ワシントン特別区からポトマック川にかかる橋を渡ってすぐの場所にある、グーグルマップなどで上空から見れば五角形をしている建物も地上から見れば低層砂色の目立たない建築物である。ワシントンDCに立ち並ぶ豪華絢爛な装飾を施された建築物に比べるといささか見劣りするが、合衆国の歴史的建造物として指定されている由緒正しい建物である。ちなみにワシントン特別区ではなくヴァージニア州にある。


 もちろん「Welcome to Pentagon」などといった看板も出していないので、すぐそばを地下鉄と幹線道路が走っているが、車窓からは注意して見ていないと見落としそうな地味さ加減ではある。ちなみに最寄り駅「ペンタゴン駅」の階段を上がってすぐが入り口なので、通勤には便利そうである。国防総省の職員しか駅を利用しないため、休日には各駅停車がウッカリ通過したこともあるという噂もある。


 デイビス国防長官に呼び出された体でCIAから公用車で乗り付けてきたのはジョン・W・ケンプ諜報運営局長だった。

 セキュリティーを通過して迷うことなく国防長官のオフィスへ向かう。CIA局員エージェントのジェーン・S・ウォルシュ とヒュー・L・クーパーを連れている。


「おはようございます、デイビス国防長官」

「おはようございます、ケンプ諜報運営局長。よく来てくれた」

「局員のジェーン・S・ウォルシュとヒュー・L・クーパーを紹介します」


 挨拶が交わされて、4人がソファーに座ったところでデスクの電話が鳴った。一般的な電話着信であれば、全て秘書が取り次ぐが、デスク上にあるのは直通電話だ。

 政府の固定電話なので回線の持ち主の名前がディスプレイに表示されている。


「宇宙軍のブラウン大佐だ。ちょっと失礼」


 ――国防長官、おはようございます。


「おはよう、ブラウン大佐。今、来客中で出来れば手短に願いたい」


 ――では手短に。南極大陸から飛び立った例の未確認異常現象UAP、黒い円盤14機がオーストラリアに向かって接近中です。軍事衛星により経過観察中です。では、失礼します。


 ブラウン大佐は自分が言いたいことを言うと通話を終了した。デイビス国防長官は驚きで目を見開いていたが我に返って受話器を置いた。

「黒い円盤が14機、オーストラリアに接近中だそうだ」

「なるほど。我々に黒い円盤の対処を依頼されたいのですか?」

 全く驚くこともなくケンプ諜報運営局長は尋ねた。


「いや、違う。ケンプ諜報運営局長、どうも腑に落ちない行動をする人物がいる。まさか、と思うかもしれないが、一応念のため私の杞憂だと証明してもらいたい」

「素行調査ですか。相手はどなたです?」

「大統領補佐官 ウォルター・H・シュミット」

 ケンプ諜報運営局長はその名に納得がいったように笑みを浮かべて頷いた。


「噂は入ってきていますよ、国防長官」


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