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「犬上さん、アメリカ軍は日本から撤退するってことでしょうか……?」

 不安そうに平岩ひらいわ陸士(注:陸士は階級名)が尋ねた。美月は首を横に振った。

「彼らも日本防衛のためだけにいるわけじゃないわ。太平洋地域におけるアメリカの国益の防護と国防を担っているもの、撤退はしたくないと思うわ」

「そう、ですよね……!」


 安心したように平岩たち陸士が笑顔を見せた。怯えているわけでは無い。世界第一位の軍事大国である同盟国が後ろにいるのといないのとでは心強さに差が出るというものだ。


「すぐまた安保条約を再開するんじゃないかしら。撤退するにしても10万人以上の人間をアメリカへ移送するのはだいぶ時間がかかるわよ」

「軍人ならまだしも、平時なのに家族を輸送機で運ぶってわけにもいかないものね」

 桜花が言うと美月もにこっと笑った。

「その通りよ」

「まあ、平岩もみんなもバラエティでも見て気分変えてみれば?」


 陽翔が妙に明るい声で言う。テレビでは最近頻繁に世界各地で目撃されているUFOの特集がされていた。様々な形の宇宙人予想図が紹介されている。


「そういえば、最近は陰の政府ディープステートの上層部はレプティリアンだっていう説があるんだけど」

 滝本陸士が銀縁眼鏡を少し持ち上げながら言った。

「レプティリアン……?」

「ヒト型爬虫類レプティリアンのことです、木村さん。人類誕生以前から地球に来ていたそうです。一部の権力者はレプティリアンだとかいう噂もあります」

「そんなの、学校とか会社の健康診断とかで一発じゃないの?」

「医者も政府もヒト型爬虫類レプティリアンに支配されているので結果が改竄かいざんされているのです」

「あっソレ自分も聞いたことあるッス」

 新里しんざと陸士だ。小柄ながら中学・高校と空手をしていたので筋肉質で動きが素早い。


「ちょっと信じられないんだけどー」

 桜花が言うと新里は「それが騙されてるんですよー」と言う。

「木村さん、ロシアの独裁者ブラドミルはヒト型爬虫類レプティリアンだっていう話ッスよ。だからロシアが『ヒト型爬虫類レプティリアンなんか存在しない』って情報操作してるらしいッス」

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