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「そうよ。ガンバって」
ウィキペディアによる簡潔な説明によると「部隊訓練評価隊」とは「模擬的実戦環境下での部隊練度の定量評価」を行う部隊、つまり模擬戦で敵役を担うなどして評価を受ける側の部隊の「強さ」を計測してくれる部隊である。模擬戦なので勝敗も判定する。当然のことながら評価する側が負けては評価ができない。結果、ほぼ負けなしの隊員達が集められてできた、いわば陸自の精鋭部隊である。
「辛すぎッス……」
5人が涙目になったところで臨時ニュースを伝える警報音に似た音と共にUFOのテレビ映像が切り替わった。
ニューススタジオらしきところで緊張した面持ちのキャスターが映っている。
「臨時ニュースをお伝えします。訪米中の篠山外務大臣と海江田防衛大臣は同行した記者団に対し、アメリカが日米安全保障条約の一時的効力停止を伝えたことを発表しました。繰り返します……」
レクリエーションルームにいた全員が停止した。全員がキャスターを凝視する。
「嘘でしょう……」
桜花が呟いた。
「だから幹部が集まっていたってわけね」
「今頃、海上自衛隊も航空自衛隊も大騒ぎッスよね、きっと」
専守防衛を旨とする自衛隊である。陸上自衛隊の「陸上」は日本国の領土上を基本的には意味している。本土決戦が無ければ戦闘はない。ただし、航空自衛隊や海上自衛隊は日々、ロシアや中国といった隣国と睨み合っている。海上保安庁などは領海侵犯をしてくる漁船を装った工作船と既に撃ち合っている。
自室に数人では不安になったのか、居室から続々と若い隊員たちが集まってきていた。皆、手にはスマホを持っている。
テレビではキャスターがコメンテーターとして呼んだ専門家として軍事評論家や防衛研究家、国際政治学者を紹介していた。
「日本の防衛における在日米軍基地の存在は大きいですから・・・」
「先に国防軍を明文化しなくちゃ駄目だろう」
「原子力空母はどうなるんだ。日本に来ないのか?」
「中国と安保条約を結ぶべき時が来たんですよ」
専門家たちはこの先の日本がどうなるのかについては明言しない。キャスターも収拾がつかなくなったのか、街の声として街頭インタビューに画面が切り替わった。
「えーと、何も変わんないんじゃないですか?」
「9条の勝利です! 平和憲法を守ろう!」
「今すぐアメリカに亡命したいです」
「誰も攻めてきてないし、いいんじゃないですか?」
「沖縄どうなるんでしょうか?」
様々な街ゆく人が写ったあと、レポーターが画面の中央に映る。
「以上、街のみなさんのご感想をいただきました」
おそらく渋谷駅前であろう場所からレポーターがそう言うと、カメラは巨大な看板の並ぶ夜空を映した。
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