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ソファーの後ろから声をかけてきたのは日焼けした顔に白い歯が眩しい後輩の
「なんか、この前の沖縄の件でアメリカ軍との関係がヤバいんじゃないかってハナシですよ」
「え、どういうこと?」
「1957年の砂川事件みたいにデモ隊が基地内に侵入した上に警察官が亡くなってるので、1977年の立川基地返還みたいに沖縄の基地が全部なくなるかもしれないって言ってました」
「1992年以降のフィリピンの二の舞になるじゃないの。ありえないわ」
美月が言うのは1992年にアメリカ軍がフィリピンから撤退し、南シナ海や台湾周辺での緊張が高まった件である。1999年に新たな地位協定が締結され、現状ではアメリカ軍はフィリピンに駐留している。
「でも、地位協定に期限は設けられていないから、そこまでのオオゴトになるかな?」
桜花が言うと「そうなんですよね」と陽翔も頷いた。
居室のある廊下から話し声と足音が近づいてくる。
先輩自衛官たちよりも少し長めの髪をフサフサと揺らしながら入って来たのは新入隊の5人の自衛官たちだった。
「こんばんは!」
「こんばんは」
口々に挨拶を交わし、「あの、テレビつけてもいいですか?」とそのうちの一人が遠慮がちに尋ねてくる。
「いいけど、どうしたの? 珍しい」
美月がテレビのリモコンをその隊員に手渡しながら言うと、リモコンを操作しながら隊員が答えた。
「なんか、UFOが目撃されたらしいッスよ。スマホじゃ小さいんで」
ちょうど、付けた番組が視聴者からの投稿映像として夕方の空に光る3つの点を紹介していた。路上を行き交う自動車は動いているが、光は上空に停止している。
「おおっ」
「本物かなぁ?」
「また中国の無人偵察用気球じゃね?」
「あれより大きくないか?」
「あー、俺も見てみてぇっ」
「じゃ、富士演習場狙いだね」
「え?」
あっさりと演習場の名を挙げた美月を5人の若者が見つめる。
「富士演習場なら見れるんですか?」
「あそこの人、よく見かけるって言ってたよ」
「マジっスか~?! 行きてえ~!」
「っていうか、もしかして北富士駐屯地の部隊訓練評価隊ですか?」
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