第5話 齢四十のおっさん、対人戦に行く!

 マイカの基本的なステップヴォルトキックコンボを確認した俺は、さっそく対人戦に潜ることにした。

 実のところコンボの練習をしている最中から対人戦をしたくてウズウズしていたのだ。


「よっしゃあ!ここから俺の伝説が始まるぜ!」


 意気揚々とマッチメイキングのボタンを押す。


「おっ、さっそくマッチしたな!相手はタケルか。」


 対戦相手が見つかるまで時間にしてほんの数秒程度だったが、早く対戦をしたい俺にはこの時間が少し長く感じられたのだ。


 逸る気持ちを抑えて深呼吸だ。



 ───Ready Fight────


 

 勢いのある実況と共に、開始のゴングが鳴り響き試合が始まる。


 NFCは全3ラウンドの2本先取で勝負が決まる。

 90秒の時間制限の中で相手の体力を削る切れば1ラウンド獲得だ。

 この直感的でシンプルなルールが、プレイヤーにはもちろん、観客にも知識がなくても楽しめると好評なのだ。

 2ラウンド先取で勝利というルールだが、もちろんプレイヤーとしては最初の1ラウンドを先取されるのはプレッシャーだ。

 だからこそ、試合開始数秒は非常に大事なのである。



 まずは開幕直後、何も考えずにステップヴォルトで相手との距離を一気に詰める。

 どうせこれ以外のコンボは練習していないのだ、当たる事を願って技を出すしかない。


 相手のタケルはまさか開幕直後に仕掛けてくるとは思っていなかったのだろう、ステップヴォルトが綺麗にキマり背後を取ることに簡単に成功した。


 そこからトレーニングルームで練習したキックコンボを3発叩き込んでコンボ完走。

 相手のタケルはマイカの直ぐ目の前でダウンした。

 たった3発の攻撃だが相手の動揺を誘えたのは大きい。


「腕の見せ所はここからだ。」


 今のステップヴォルトキックコンボはただ相手の意表を突いたに過ぎない。

 初心者同士の対戦だからこそ成功したマグレのような物だ。


(開幕のアドバンテージは取れた、次からの行動は相手を読むっ)



 相手も同じレベルの初心者だと仮定した場合、ここから考えられる相手の行動は2つ。

 パニックになって我武者羅に攻撃してくるか、距離を取ろうとバックステップ。

 2つの選択に有効なのは、、、



「ステップヴォルト!」


 相手に考えさせる時間を与えず、すぐに再度距離を詰める。


 攻撃に対してはタケルの背後にまわって今のコンボの焼き直し、距離を取ろうとした場合でも、ステップヴォルトで前へ詰めているので現在の距離感を維持したまま有利を取る事が出来るのである。


 相手のタケルは我武者羅にパインを打ちまくるが、俺のマイカはすでに背後にまわり再びキックコンボを叩き込む。



「面白いように攻撃が当たるな。」



 物事を円滑に進めるには、1つ行動が終わってから次の計画を練っても遅い。

 行動を始めたと同時に次のプランを複数用意しておく事が、何事においても重要なのである。

 こちとら、会社で複数のプロジェクトを嫌々押し付けられているのである。

 この程度のプラン建てなど朝飯前だ。



「これが中間管理職の必須技能だよっ!」



 俺は対戦が始まる前からここまで3手ほど複数の計画を準備しているのである。とにかくボタンを押すだなんて雑なプレイは通用しない。



 試合はそのまま俺の一方的な展開で圧勝した。


 相手が距離を取れば正面から、暴れれば背後に回る。

 気合を入れて下調べをしていた分肩透かしを食らったような気分である。



「この調子ならランク戦にいっても余裕じゃないか?」



 NFCの対人戦にはカジュアルマッチとランクマッチの2種類のモードがある。


 カジュアルマッチは背負うものが無く、誰でもお気軽に遊べるモードある。

 ちなみに先程の試合はカジュアルマッチだった。


 一方ランクマッチとは、ポイントを賭けて試合をするモードなのだ。

 全てのプレイヤー0ポイントから始まり、勝てば10ポイント、負ければ15ポイントを失う。

 お察しの通り試合に負け続けるとポイントがマイナスになっても下がり続ける鬼畜仕様だ。



「ただ、ポイントがマイナスになる仕様のおかげで意図的に負け続けたり、試合を放棄する害悪プレイヤーを除外出来るメリットがあるんだよなぁ。」



 一般にeスポーツと呼ばれるジャンルのゲームでは、ほぼ全てのプレイヤーがある程度ランクポイントを盛るために頑張っている。

 だがしかし、一部の心無いプレイヤーはわざと負け込んだり、試合を成り立たせないようにしてゲームの妨害を行うことに喜びを見出しているのだ。



「逆に考えるとプロ達のポイントスコアは化け物じみているな。」



 松田 尚志選手なんて20000ポイントをオーバーしている。

 勝率6割超えてると仮定して4000戦だ。

 1試合2分だと仮定しても約1000時間はやり込んでいるのだろう。



「ランクマッチだけで1000時間超えるってことは、トレーニング時間はその3倍以上って事か」



 正真正銘の化け物だ。



「ランクマッチは明日以降挑戦しよう!今日は気軽に対戦して手に馴染ませることだな。」



 上を見てもキリが無いので、その後も数戦カジュアルマッチを回して終わることにした。



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 本日も読んでいただきありがとうございます!!


 初めての応援獲得しました!!!


 応援ですよ?!応援!!

 続きを書こうと思ったら、見慣れないハートマークがついていたので声を上げてしまいました!!


 ちなみにPVは30を超えました!

 PV10更新する事に、ささやかながら晩酌を開催しております。

 本当にありがとうございます!


 稚拙な文章ですが、これからも頑張ります!


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 砂糖甘彦

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