第3話 齢四十のおっさん、モダンシステム?

 待ちに待ったレバーレスが届いた!


 せっかく新しいことに挑戦するのだ。機材は最高な物を揃えようと思い、ネットの記事を頼りに理論最強だと言われるレバーレスコントローラーを注文してからはや3日。


 間の良い事に、土曜日の今日、注文していたレバーレスが届いたのが先程の事。


「これで俺も一端の格ゲーマーや!!」


 逸る気持ちを抑えながら、密林通販から届いた段ボールを丁寧に開封していく。


「思っていたよりも小さいな。」


 こんな一娯楽用品に最新技術で驚かされるとは思わなかった。届いたコントローラーは、(幅)405mm x (奥行き)175mm x (高さ)60mm で重さは 約2キロ 程度だった。


 ゲーセンの筐体で格闘ゲームを遊んでいた身としては、こんなに小さく軽いコントローラーが存在するのは驚きを通り越して呆れに近いものさえ感じてしまう。

 

ここまで技術を詰め込めるということは、近年のeスポーツというジャンルが、相当な熱量と活気で溢れているに違いない。

 


「これは、かなり期待できそうだな。」



 思わず口をついて出た言葉に、学生時代の熱量を感じて独り嬉しくなってしうのである。



「とにかく、パソコンに繋いでゲーム開始だ!!」



 逸る気持ちを抑えながら、新たな一歩へようやく踏み出せる嬉しさを感じる。




「ここからオッサン格ゲーマーの伝説の幕開けじゃあ!!」



 威勢よくNFCを起動し、『齢40の格ゲーマー、プロになる!』という今では見慣れた名前のアカウントでゲームが始まる。



「まずはチュートリアルだな」



 そう言ってチュートリアルを開始するが、何も難しいことなどない。


 格闘ゲームとは、基本的にジャンケンを繰り返していくゲームである。


『打撃は投げに、投げは防御に、防御は打撃に勝つ』


 これを繰り返し読み合うのが格闘ゲームの基本中の基本だ。


 それ以外にも様々な派生が存在するが、最終的にはこの三竦みの関係に帰結する。プレイヤーは如何に相手の手を読み、誤認させ、読み切るかというのが醍醐味になってくる。


 ここら辺りのルールはTEPPANだろうが路上喧嘩だろうが、NFCだろうが何も変わらない。


 そう言った訳で、チュートリアルのCPUなど数分で倒し終わり、NFC独自のシステムに慣れるだけになった。



「ん?コンボ入力をしなくてもいい操作方法?」



 格ゲー初心者なら誰でも躓くコンボ入力。


 そもそも格闘ゲームで技を出すためには6ボタン8方向の入力を、コンマ数秒以下に実行しなければいけない。


 キックやパンチなどそれ単体では1ボタンを押せばいいのだが、そこから更に強力なコンボに繋げようと思うと↓↘→+Pなどという呪文のような複雑なボタン入力をしなければならないのだ。




「今まで苦戦していたコンボ入力が、全部ワンボタンで出来る、、?」




 これは革新的な事である。実際に操作をしていなければ分からない事だが、→↘→+Pという4ボタンをL2+Pというボタンだけで解決できるのだ。




「このシステムの恩恵はトッププロ達よりも俺のような初心者にこそ活用できる!これは、俺のための武器だ!」



 格闘ゲームの基礎とは正確なコンボと読み合い。


 読み合いの部分に関しては年齢関係なく、いや、むしろ年を食っていた方が、より老獪な戦術を展開する事が可能であるが、正確なコンボについては40歳という年齢がどうしてもネックになってくる。


 トッププロとして第一線で活躍を続ける松田選手とは違い、俺は今までまともにコンボを出す練習をしていない。彼らプロたちはもう何年にも渡って頭が理解するよりも早く、正確にボタン入力をする事が出来る様に、血の滲むような反復練習をしているのである。


 対して、俺のような20年ぶりの復帰プレイヤーなどは語る

までもないだろう。



その差を一気に埋める可能性があるのがこの新システム。



『モダンシステム』



 従来のコンボ入力方法は『クラシックシステム』と呼ばれ、新たに追加された『モダンシステム』は一足飛びに高度な読み合いの舞台へと昇華させてくれるのだ。


 基本的に対人ゲームというのは全て、ある程度の操作をできる前提で試合が成り立つのである。


 しかしこの『モダンシステム』を使えば、煩雑な操作を無視してトッププロ達が読み合う次元のジャンケンに挑戦する権利を得られるのだ。



「このシステムさえあれば、俺ですらトッププロと読み合い勝負まで引き摺り込める可能性があるっ!」




 この胸の高鳴りを笑う事が出来るやつなんていないであろう。


 町の中華屋で流れているプロ野球中継に文句を垂れているおっさんが、そのまんまプロと対決できる実力まで引き上げられているようなものだ。



「最高だ!!」



 だって、こんな夢のようなシステムがあるなら、誰だってプロになる可能性があるじゃないか!!!



「だからこそ重要になってくるのが読み合いという訳か。」




 松田選手が第一線で活躍していることや、加藤君が俺にこのゲームをお薦めしてくる理由が分かった気がする。


 一般的に基本的な操作というのは、若ければ若いほど良いとされている。


 改めて記述する必要もないと思うが、反射神経、学習速度、運動神経など若者が有利なのは当然である。


 いや、むしろその若者に食い込んでいけるシステムを導入したメーカーが狂ったと捉えられてもおかしくは無い。


 もちろん『モダンシステム』を使用することによって使えない技や、総合火力は低下するが関係はない。




「このモダンシステムを使って暴れてやる!!」



 課題は山積み、どころかゲームを理解するところから始まるが、俺はこのゲームに対して無限の可能性がを感じたのである。



 ───────────────────────────

 とりあえず初日の更新はここ迄っ!


 適当に書き殴ったものだから、2話後半から一発書きになっちゃったけど愛嬌だと思って許してね!


 肩の力を抜いて緩くやってこうと思うので、よろしくお願いします!


 こう言うときは何て言うんだっけ?


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  砂糖甘彦

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