第2話 齢四十のおっさん、名前を決める!

 ───格闘ゲーム───


 ジャンルの名前を読んで字のごとく、殴り合い、蹴り合い、挙句の果てにはプロレス技やサイコキネシスなどを使用する、個性豊かなキャラクター達を操作して、1対1で勝敗を決めるゲームである。


 その中でもステージが平面で前後にしか奥行きがない2D格ゲーもあれば、前後左右奥行きのある3D格ゲーなるものまで幅広い。


 俺が学生時代にプレイしていたTEPPANは3D格ゲーだったが今は置いておこうり


 なんせ、今から始めるのはNightFightClub、通称NFCという去年発売された2D格ゲーなのである。



「格ゲーやるのも20年ぶりか。それにしても自宅で格ゲーが出来るだなんてテクノロジー様々だな。」


 学生時代はゲームセンターで馬鹿デカい筐体の前にガニ股で座り込み、レバーを握ってプレイしたものだ。


「パソコンで格ゲー出来るのは凄いんだが、ゲーセンみたいなボタンもレバーも無いのに一体どうやって操作するんだ?」


 中年男性が私用でパソコンを触る用事だなんて、目的などたかが知れている。近年のネットゲームの様な高度な操作など必要なしに、テキトーにマウスのボタンをポチポチと押していれば良いのだ。


「ふむ、操作方法はキーボードのWASDを使うか、ゲームっぽいコントローラー、あるいは別売りのゲーセンみたいなコントローラーがあるのか」


 WASDでの操作方法は近年流行りのFPSゲームなど、PCゲーとしては最もポピュラーな操作方法らしい。


 対して、ゲームっぽいコントローラーと評した家庭用ゲーム機に付属するようなコントローラーでの操作も人気2番手に位置づけているというのがゲーム界隈での一般常識のようだ。



「だとすれば、慣れているゲーセン風のコントローラーだな」



 これは一般的にアーケードコントローラー、通称アケコンと呼ばれるものだ。


 左手部分は360度回転するレバーと上下2段、計8個のボタンが付いている格ゲー専用のコントローラーである。



「やっぱ、昔取った杵柄ということでアケコンを買うか」



 と、調べていると気になる記事を発見した






 ───理論最強、アケコンを凌駕するレバーレス───


 レバーレスとは、ここ数年、主に格闘ゲームで使われるようになったゲーム用のコントローラーの一種です。


 アーケードスティックの「スティック部分」を上下左右4つのボタンに置き換えた新しい、格ゲー特化のコントローラー形状をしています。


 メリットとして、全ての方向ボタンに指を配置できるため、素早く繊細な操作がし易く、コンボ入力の正確性はアケコンを上回ると宣伝するプロもいるほどです。

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 格ゲーにおいて使用機材というのは勝率に大きく関係しているのではないかというのが俺の考えである。


 例えば現実のスポーツでは、自身の肉体を強化しより高度な運動能力を手に入れ高度な反応、素早い切り返し、力強いアタック感などを手に入れる事が出来る。


 対して、運動能力を担う部分のほとんどをデバイスの反応速度、入力感の良し悪しでカバー出来るのがeスポーツである。


 従って使用機材の妥協は致命的だと言えるのではないだろ

うか。


 この時点で、俺が購入するデバイスは一択になったのである。


「どうせやるなら一番いい機材を使おう。格ゲーじゃ後発組でも、金なら独身貴族の特権だからな!」


 こうやって詐欺の被害者は増えていくのであろう。ぽっと出のネット記事1つで購買意欲を刺激されてしまっては老後、怪しい壺やご利益のあるお守りを買わないかが心配である。


 とにかく、密林通販で売れ筋1位のレバーレスをポチったはいいが気合を入れてゲームを始めるつもりだった俺は手持ち無沙汰で暇である。



「注文したレバーレスが届くまで3日もあるなら、ゲームのアカウントだけでも作っておくかな」



 と言う訳で、早速NFCを起動しプレイヤー名の入力画面まで進んだはいいが、ネットゲームなど人生初の事なので名前など新しく考えなければならない事に気が付いた。



「ネットゲームの名前だなんて考えたこともなかった。。。」



 俺の学生時代のゲーム名なんて『†漆黒の堕天使†』だとか『†聖天使猫姫†』だとか、、、

 思い出すと、今でも頭痛が痛くなる様な、おぞましい名前を付けたものである。


「こういうのはプロが使っているものをパクるのが一番だな!」



 そうとなればツイッチャーで検索だ。


『NFC プロゲーマー』


 単純だがこの文字列でヒットするだろう。


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 HisashiTheBeast

 OHKIDO

 TAKENOKO-竹槍王者-

 イテコマスゾデビル

 船橋ザンキチF

 :

 :

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 全員、参考にならない名前だった。



 個性が強いか、カッコよすぎるか。


 こちとら『オジサンTheビースト』なんて名前にした日には、加藤君に笑われて終わりである。


 だからといって良い名前が思いついたわけでもなく、数時間の格闘の末やっと名前を付けたのである。



『齢40の格ゲーマー、プロになる!』



「ネットの中で位は大口叩かないと漢じゃねぇもんな!?」


 思っても無い事を喧伝するのは気持ちよくはないが、所詮はネットの対戦ゲーである。少年と呼ばれる年齢でないことは重々承知の上、敢えて大志を抱いたって良いじゃないか!?




「中年男性こそ大志を抱け!!」



 この言葉を後世に残せた事に満足して余生を過ごそうと決めたのである。


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 書けるところまで書いてみようと、焼酎をお供に書き殴っております。


 とにかく初日は何話か連続で書き殴ろうと思っていますので、よろしくお願いします。


 作中におけるプロゲーマーは、某プロゲーマー達を参考にさせていただいていますが、皆さん素晴らしい方達です。

 興味が湧いたらぜひ元ネタの選手たちを調べてみてください。

 砂糖甘彦

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