第15話 追跡と反撃

涼介と香織は、廃屋の中で息を潜め、外から迫る追手の気配を感じ取っていた。薄明かりが廃屋の隙間から差し込み、緊迫した空気が張り詰めている。外では、数人の男たちが銃を構え、廃屋を取り囲むようにゆっくりと歩みを進めていた。


「彼らがここに来た以上、隠れているだけでは持ちこたえられない。」涼介は窓越しに外の様子を伺いながら、低い声で香織に告げた。


「そうね、でもここで無理に動けば、こちらが不利になる可能性も高いわ。」香織もまた、窓から視線を外さずに答えた。彼女の手は、腰にある拳銃のグリップをしっかりと握りしめていた。


「相手の動きを見極めるしかない。少しでも隙が見えたら、全力で反撃に出るんだ。」涼介は決意を固めたように、銃を構え直した。


その時、廃屋の入口から微かな物音が聞こえた。涼介はすぐに入口の方に目を向けた。ドアの向こうから、ゆっくりと何者かが近づいてくる気配が感じられた。


「来たか…。」涼介は息を潜めながら、その瞬間に備えた。


ドアが静かに開き、黒ずくめの男が一人、警戒しながら廃屋の中に足を踏み入れた。彼の手には銃が握られており、冷徹な目で周囲を見回している。涼介はその動きを見逃さず、静かに射線を定めた。


「今だ!」涼介は声を上げると同時に、男の肩を狙って発砲した。銃声が廃屋の中に響き渡り、男は肩を押さえてその場に崩れ落ちた。


しかし、その音に反応して、外にいた他の追手たちが一斉に廃屋に向かって攻撃を仕掛けてきた。銃弾が壁を貫き、廃屋の中に次々と飛び込んでくる。涼介と香織はすぐに遮蔽物の後ろに身を潜め、反撃の機会を伺った。


「奴ら、かなりの人数がいるわね。」香織は息を整えながら、近くにある窓から外の様子を確認した。


「油断はできない。相手の数も装備も、こちらより有利だ。だが、俺たちにはこの情報がある。何としても守り抜く。」涼介は冷静に状況を分析しながら、次の行動を考えた。


その時、外の男たちのリーダーと思われる人物が、廃屋の前に姿を現した。彼は自信満々の態度で、涼介たちに向かって声を上げた。


「無駄な抵抗はやめろ!お前たちはすでに包囲されている。今すぐ出てきて、その情報を渡せば、命だけは助けてやる。」リーダーの声には、冷酷さと不気味な余裕が漂っていた。


「どうする?」香織が不安げに涼介に尋ねた。


涼介は一瞬だけ考え込んだが、すぐに決断した。「奴らに情報を渡すわけにはいかない。俺たちで奴らを引き離し、この場を切り抜ける。」


香織もその決断に同意し、準備を整えた。「準備はいいわ。あとは、タイミングを見計らうだけ。」


涼介はリーダーの声がした方向に目を向け、隙を見つけて一気に動き出す決意を固めた。そして、数秒後、彼は銃を再び構え、遮蔽物から飛び出してリーダーに向かって発砲した。


リーダーは涼介の動きを予測していたかのように素早く避け、反撃に出た。激しい銃撃戦が再び繰り広げられ、涼介と香織は互いにカバーし合いながら廃屋の裏手に向かって退却を始めた。


「こっちだ、香織!裏から抜け出す!」涼介が叫び、香織もその声に従って動いた。二人は廃屋の裏手にある小さな窓から外に出て、追手たちの視線をかわしながら森の奥へと逃げ込んだ。


しかし、追手たちはすぐにその動きに気づき、再び追跡を始めた。涼介と香織は森の中を全力で駆け抜け、敵の視界から逃れるためにあらゆる手段を使った。


「涼介、このままではキリがないわ!」香織が息を切らしながら言った。


「分かっている。だが、あと少しだけ奴らを引き離せれば、こちらに有利になる場所がある。」涼介は息を整えながら、森の奥にある岩場を指差した。


「そこまで走り抜ければ、地形を利用して奴らを迎え撃てるはずだ。もう一踏ん張りだ!」涼介の言葉に、香織は力を振り絞って頷き、二人は全速力で岩場に向かって駆け抜けた。

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