第16話 岩場での対決

涼介と香織は、全力で駆け抜けた末に、森の奥にある岩場にたどり着いた。ここは岩が入り組み、自然の迷路のような地形が広がっている。二人はすぐに岩陰に身を隠し、息を整えながら追手たちの動きを警戒した。


「ここなら地形を利用して、うまく反撃できるはずだ。」涼介が息を整えながら言った。


「そうね…でも、奴らもすぐにここに来るわ。」香織も周囲を見渡しながら同意した。


「できるだけ目立たないように、岩陰を移動しながら戦う。香織、お前は右側の高台に移動してくれ。そこから奴らの動きを狙撃するんだ。」涼介は冷静に指示を出した。


「分かったわ。気をつけてね。」香織は短く答えると、すばやく右側の高台に向かって身を潜めながら移動した。


涼介もまた、反対側の岩陰に隠れ、敵が近づいてくる音に耳を澄ませた。数分後、追手たちが慎重に岩場に足を踏み入れ、周囲を警戒しながら進んでくるのが見えた。


「奴らが来た…。」涼介は静かに自分に言い聞かせ、敵がもう少し近づくのを待った。


追手たちは、岩場の地形を利用しながら、涼介たちを探し出そうとしていた。その動きは訓練された兵士のようで、一つ一つの動作に無駄がなかった。


「香織、準備はいいか?」涼介は無線で静かに尋ねた。


「いつでも行けるわ。」香織の声が返ってきた。


涼介は深く息を吸い、リーダーらしき男が視界に入った瞬間に、岩陰から飛び出して発砲した。弾丸はリーダーの腕をかすめ、彼が驚いて後退するのが見えた。


「今だ、香織!」涼介が叫ぶと同時に、香織も高台から狙撃を開始した。追手たちは突然の攻撃に混乱し、あわてて身を隠し始めたが、地形を熟知している涼介たちに次々と狙い撃たれていく。


「奴らの動きを封じろ!逃がすな!」リーダーが叫び、追手たちも応戦を始めたが、涼介と香織は岩場を巧みに移動し、絶え間なく攻撃を続けた。


岩場は銃声と叫び声に包まれ、まるで戦場のような様相を呈していた。涼介は冷静に敵の動きを読み、的確に狙いを定めて一人一人を倒していった。香織もまた、鋭い狙撃で追手たちの進行を阻み、彼らを次第に追い詰めていった。


しかし、追手たちも必死だった。彼らは涼介たちを追い詰めるため、さらなる攻撃を仕掛けてきた。涼介が身を潜めている岩に向かって一斉射撃が行われ、石片が飛び散った。


「涼介、気をつけて!」香織が叫ぶ。


涼介は身を低くして避けたが、弾丸が掠め、腕に傷を負った。痛みが走ったが、彼はその痛みを無視し、再び立ち上がって銃を構えた。


「大丈夫だ、ここで終わらせる!」涼介は自らを鼓舞するように叫び、最後の反撃に出た。


涼介はリーダーに狙いを定め、岩陰から飛び出して接近戦を挑んだ。リーダーは驚いた表情を見せたが、すぐに体勢を整え、反撃しようと拳銃を向けた。


その瞬間、香織の銃声が響き、リーダーの腕がはじかれた。リーダーは銃を落とし、怯んだ隙に涼介が飛びかかり、彼を押し倒した。


「これで終わりだ!」涼介はリーダーの胸に銃を突きつけ、冷たく言い放った。


リーダーは苦しげに息を吐き、ようやく自分の敗北を悟った。彼は涼介を睨みつけながら、悔しそうに呟いた。「たかが二人で…ここまでやるとはな。」


「俺たちは、守るべきもののために戦っている。それが奴らとの違いだ。」涼介は決然と答えた。


リーダーは苦笑いを浮かべ、目を閉じた。「…お前たちが勝った。それが全てだ。」


涼介はリーダーを取り押さえたまま、香織に目をやった。「香織、大丈夫か?」


香織は銃を下ろし、深く息を吐いた。「ええ、何とか。涼介、あなたは?」


「少し傷を負ったが、問題ない。だが、もう一刻も無駄にできない。ここを早く離れよう。」涼介はリーダーを縛り上げ、立ち上がった。


二人はリーダーを拘束し、敵の残党がいないことを確認しながら岩場を離れた。明るくなり始めた空の下、二人は緊張から解放されながらも、次の行動に思いを巡らせた。

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