第14話 予期せぬ展開
涼介と香織は、灯台からの爆発の余韻が消え去った後、荒れ果てた森の中を進んでいた。山田の自己犠牲によって辛くも脱出できたが、その余韻が二人の心に重くのしかかっていた。空にはまだ星が瞬いていたが、東の空は徐々に明るくなり始めていた。
「山田さんが命を懸けて守ったものを、無駄にしてはいけない。」涼介が小さな声で呟いた。
「そうね…でも、これで本当に終わりなのかしら?」香織は、どこか不安げに森の奥を見つめた。彼女の心には、何かまだ解決していないことがあるような直感があった。
二人がしばらく黙々と歩き続けていると、森の中から突然、微かな人の声が聞こえてきた。涼介と香織は顔を見合わせ、足を止めた。
「誰かいる…?」涼介は警戒しながら声のする方向に注意を向けた。
「まさか、生き残りが…?」香織も不安を抱きつつ、声の方へと足を進めた。
二人が慎重に森の奥へと進んでいくと、やがて小さな開けた場所に出た。そこには、倒れ込んでいる男が一人いた。男は傷を負っており、息も荒く、今にも意識を失いそうな状態だった。涼介がその男に近づき、顔を確認すると、驚きの表情が浮かんだ。
「お前は…」涼介が驚いて声を漏らした。
「助けてくれ…俺は、あの組織の内通者だ…」男は苦しげに息をつきながら、涼介に向かって手を伸ばした。
「内通者…?」香織が驚いて言葉を詰まらせた。
「そうだ…俺は、山田の指示で、組織の情報を外に流していた…でも、もう限界だ…」男はそう言いながら、ポケットから小さなUSBメモリを取り出し、涼介に手渡そうとした。
涼介はそのメモリを受け取り、男の目を見つめた。「これには何が入っている?」
「すべてだ…組織の全ての情報がここにある…山田が最後にお前たちに託したかったものだ…」男は痛みに耐えながら話し続けた。
「山田さんが…?」香織が戸惑いながら呟いた。
「山田は、俺にこれを託して、最後の指示を出した…彼はお前たちを信じていたんだ…」男は弱々しい声で続けた。
その時、男の目が急に大きく見開かれ、涼介の背後を見つめた。男は最後の力を振り絞って警告を発しようとしたが、その言葉が口に出る前に息絶えた。
「後ろだ!」香織が叫んだ。
涼介が素早く振り返ると、森の陰から数人の男たちが現れ、銃を構えていた。彼らは無言のまま、涼介と香織に向かって狙いを定めた。彼らは灯台での戦いから逃げ延びた組織の残党だった。
「逃げろ、香織!」涼介は香織を守るように立ちふさがり、すぐに隠れる場所を探した。
二人は再び森の中を駆け出し、背後から迫る敵の銃声をかわしながら逃げ続けた。木々の間をすり抜け、足音を消しながら慎重に進んでいくが、追手は執拗に追いかけてきた。
「彼らはまだ諦めていない…このままでは、奴らに追いつかれる…」涼介は状況を分析しながら、次の一手を考えていた。
香織は一瞬立ち止まり、ポケットにあるUSBメモリを確認した。「この情報を渡すわけにはいかない…」
涼介は彼女の意図を察し、力強く頷いた。「ここで奴らを引き離す。それができなければ、全てが無駄になる。」
二人は再び動き出し、追手を撒くための策を講じながら、森の中を進んでいった。彼らはすでに、最後の賭けに出る覚悟を決めていた。
やがて、森の中を抜けた二人は、ひっそりと佇む廃屋を発見した。そこに身を隠し、追手を迎え撃つ準備を整えることにした。涼介は香織と共に廃屋の中に潜り込み、窓から外の様子を伺った。
「奴らはここに来る…だが、今度は俺たちが仕掛ける番だ。」涼介の目には、再び戦う意志が宿っていた。
「ええ、ここで全てを終わらせるのよ。」香織もまた決意を固めた。
外から、追手の足音が徐々に近づいてきた。二人はその音に耳を澄まし、次の瞬間に備えた。涼介は銃を構え、香織も身を低くして迎撃の準備を整えた。
そして、ついに追手が廃屋の前に到達し、涼介と香織がいる場所を探し始めた。緊張がピークに達する中、涼介は深く息を吸い、最終的な戦いに挑む覚悟を決めた。
USBメモリに隠された真実を巡り、涼介と香織は組織の残党との最後の戦いに臨むことになる。物語は新たなクライマックスを迎え、二人の運命が再び試されることになる。彼らは真実を守り抜き、無事に生還できるのか?物語はさらに激しく進展していく。
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