第13話 灯台決戦

涼介、香織、そして山田は、灯台の扉の前で静かに呼吸を整えた。外から聞こえる重い足音が近づいてくるたびに、彼らの緊張感は一層高まっていった。涼介は拳を握りしめ、戦いに備えた。山田は静かに銃を構え、香織は敵の動きを警戒しながら戦闘態勢を整えていた。


「彼らは手加減をしないだろう。全力で迎え撃つしかない。」涼介が低い声で二人に言った。


「私たちは一緒にここまで来た。ここで全てを終わらせるわ。」香織の目には決意が宿っていた。


山田は深く頷き、目の前の扉に目を向けた。「これで最後だ。真実を守り抜こう。」


その瞬間、扉が激しい音を立てて破られた。黒ずくめの男たちが一斉に灯台の内部に突入し、銃を構えて三人に狙いを定めた。涼介はすぐに反応し、最初の敵を射撃で倒し、すぐに遮蔽物の後ろに隠れた。


「香織、後ろを見て!」涼介が叫び、香織は背後から迫ってきた敵に気づき、素早く身を翻して反撃した。彼女の動きは正確で、敵を一瞬で無力化した。


山田もまた、正確な射撃で敵を倒しながら前進した。彼の表情には冷静さと覚悟が感じられた。だが、彼の心の中には、これまでの裏切りと共に戦うことへの葛藤が渦巻いていた。


銃声が灯台内部に響き渡り、激しい戦闘が繰り広げられた。涼介たちは数的不利に立たされながらも、絶妙な連携で敵を次々と撃退していった。しかし、敵の数は多く、次々と増援が押し寄せてくる。


「涼介、このままでは押し切られる!」香織が焦りの声を上げた。


「大丈夫だ、必ず突破口を見つける!」涼介は強い声で答え、周囲を見回して戦況を分析した。


その時、涼介は灯台の上部にある古びた階段に目を留めた。上に登れば、敵を高所から狙い撃ちできる位置に立つことができると考えた。


「上に登るぞ!ここで戦っていても限界がある!」涼介は香織と山田に向かって叫び、階段へと走り出した。


香織と山田もすぐにそれに続いた。三人は階段を駆け上がり、敵が追ってくる中、必死に上へと進んでいった。途中で数人の敵が追いついてきたが、涼介たちは巧みに射撃をかわしながら反撃し、なんとか撃退していった。


やがて、三人は灯台の最上部にたどり着いた。そこは狭いスペースで、背後には海が広がっていた。灯台の灯りはかつての輝きを失い、錆びついた鉄の階段が風に揺れていた。


「ここからなら、敵の動きを全て見渡せるわ。」香織が息を整えながら言った。


「だが、ここでの戦いは最後だ。もう退路はない。」山田が静かに言い、銃を構え直した。


下からは、再び敵の足音が聞こえてきた。追手が再び迫ってきたのだ。涼介は銃を構え、狭い階段から上がってくる敵を一人ずつ正確に撃ち抜いていった。香織も涼介に続き、狙いを定めて敵を撃退する。


しかし、敵のリーダーが階段の途中で立ち止まり、冷たい目で涼介たちを見上げた。「ここで終わりだ、お前たちはもう逃げられない。」


リーダーは手を挙げ、指示を出すと、彼の部下たちが一斉に射撃を開始した。激しい銃撃が三人を襲い、灯台の壁が弾丸で削られていく。涼介たちは必死に反撃するが、リーダーの圧倒的な数に押され、徐々に追い詰められていった。


「涼介、どうする?」香織が不安げに問いかけた。


「まだだ…最後まで諦めるな!」涼介は力強く答え、反撃を続けた。


その時、山田が突然立ち上がり、リーダーに向かって叫んだ。「もう十分だ!これ以上は無意味だ!」


リーダーはその声に反応し、目を細めて山田を見つめた。「山田…貴様は何を言っている?」


「お前たちはもう終わりだ。情報はすでに外に流れた。俺たちを殺しても、真実はもう隠せない。」山田は決意を込めて言い放った。


リーダーは一瞬動きを止めたが、すぐに冷笑を浮かべた。「ならば、せめてお前たちを道連れにしてやる。」


その瞬間、リーダーが手にしていた小型の爆弾を見せつけた。涼介たちはその光景に驚愕し、状況が一気に絶望的なものへと変わった。


「全員ここで死ぬのか?」香織が絶望の声を漏らした。


山田は覚悟を決め、涼介たちに向かって叫んだ。「俺が奴を止める!お前たちはここから脱出しろ!」


「山田さん、何をするつもりだ!」涼介が驚いて叫んだ。


「これが俺の最後の償いだ!頼むから、無駄にしないでくれ!」山田はそう言い残し、リーダーに向かって突進した。


リーダーが爆弾を作動させようとした瞬間、山田が彼に飛びかかり、激しい格闘が始まった。涼介と香織はその光景に目を見張ったが、山田の必死の思いを感じ取り、灯台からの脱出を決意した。


「行こう、涼介!」香織が涼介の手を引き、灯台の外に繋がる非常階段へと走り出した。


涼介も山田の決意を胸に、彼女と共に階段を駆け下りた。後ろからは激しい銃声と山田の叫び声が聞こえたが、二人は一瞬も立ち止まることなく、灯台を脱出していった。


外に出ると、涼介たちはすぐに灯台から離れ、安全な場所へと移動した。背後で、灯台が爆発する音が響き、夜空を一瞬だけ赤く染めた。


涼介と香織は、山田の最後の瞬間を心に刻みながら、彼の犠牲が無駄にならないよう、再び前に進む決意を固めた。

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